黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・狙狐抄 4

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    麒麟を巡る話、第294話。
    三方門前払い。

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    4.
    「知るか」
     天狐もまた、素っ気なくマロに言い捨てた。
     エルガ亭のおかみから25万エルと言う巨額の支払いを命じられたマロは、天狐からおかみに口添えしてもらえないか、彼女に頼み込んだのだが――。
    「親父さんに金払ってもらえばいいじゃねーか」
    「いや、だからそんなんしたら俺、勘当されてしまうって言うてますやん」
    「いい薬になるんじゃねーか?」
    「ちょ……」
    「金の使い方もロクに分からねーボンボンだ、ソレくらい突き放された方が後々の人生、いい勉強になるかも知れねーかもな」
    「ふざけんといてくださいよ」
     マロは怒りかけたが、天狐のそれが圧倒的に凌駕した。
    「ふざけてんのはどっちだ、ああッ!?
     勉強もろくにしてねー、酒や遊びに現を抜かす、その上払うべき金を踏み倒そうとしやがって!
     お前、ドコまで世間舐めまくってんだ!?」
     天狐は――14歳のマロより背が低いにもかかわらず――ぐい、と彼の襟元を引き上げ、頭上高く持ち上げた。
    「うげっ、ちょっ、てんっ、テンコ、ちゃ、げほっ」
    「そんなに金払いたくねーってんならなぁ……!」
     マロの体を掲げたまま、天狐は窓を蹴って開ける。
    「自分で何とかしやがれ! オレに泣きつくんじゃねえッ!」
     そしてそのまま、窓の外へと放り投げられた。

    「……と言うわけで、その、頼れるんが」
    「僕だけ、って?」
     外に投げ飛ばされ、泥だらけになったマロは、今度はブロッツォ派のリーダー、ルシオに泣きついた。
    「悪いけど、僕もあまり裕福な方じゃないから、お金を無心されても困る」
    「いえ、それは流石に頼めないです。それよりも俺の部屋焼いた奴探して、そいつに弁償してもらおかと思いまして」
    「ふむ……、犯人捜し、ってことか。そう言うことなら……」
     そう前置きしておいて――ルシオも断ってきた。
    「手伝えそうにはないな。他を当たってほしい」
    「え……」
    「君が襲われた話は僕も耳にしたけれど、銃撃されたこともあるって話だったね? となると、僕の手には負えないよ。僕の研究分野は『土術の農学への応用』だし。
     まさか大根や人参で銃弾を跳ね返せ、なんて言わないよね」
    「う……。えーと、じゃあ、ルシオさんの派閥ん中で、そう言うのんに打ってつけの人っていてませんか?」
     この頼みに対しても、ルシオは首を横に振る。
    「いたとしても、僕の一存で危険に晒すことはできない。指名された相手も断るだろう」
    「……お騒がせしました」

    「ふーん」
     天狐に追い返され、ルシオに断られたマロが次に頼るのは当然、葵だった。
     しかし彼女が口を開くより先に、彼女と共に勉強していたシエナが応じる。
    「つまりアンタを助けるために、アタシたちが危険な目に遭うワケよね?」
    「いえ、そんな、そうじゃ……」
    「違うって? アンタの部屋を焼き、撃ち殺そうとした奴を探すってコトは、そいつと会わなきゃいけないんでしょ? じゃあソイツと対峙した途端、撃たれる可能性はゼロじゃないってコトになるじゃない。違う?」
    「いや、それは、その……、ありえますけども」
     マロはしどろもどろになりながら、こう返した。
    「でも、あの、勿論報酬ははずみます」「は?」
     しかしこの一言が、シエナの逆鱗に触れたらしい。
     彼女は突如立ち上がり、マロの襟をつかむ。
    「報酬? 金を払うって意味? ふざけんな、クソガキ」
    「え、ちょ」
    「アタシはね、アンタみたいに何でもかんでも金で解決しようとする奴が大っ嫌いなのよッ!
     しかも払うのはアンタの金じゃないでしょ!? アンタの親の金ッ! 誰がそんな奴、助けてやるもんかッ!」
     つかんだ襟を乱暴に離し、シエナは座り込んだ。
    「話は終わり。出てって」
    「……っ」
     マロは顔を真っ蒼にし、ぼそ、と「……すんません」とつぶやき、踵を返しかける。
     が――それまで眠たそうな様子でノートに視線を落としていた葵が、ひょいと顔を挙げた。
    「いいよ」
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