黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・狙狐抄 7

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    麒麟を巡る話、第297話。
    密かな解決。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     マークから恨みをぶつけられたものの、マロは「ちゃうて」と、弱々しい声で返す。
    「お前が言うてんのは俺ん家ちゃうて。それは……」
    「何が違う! お前はゴールドマン家だろう!」
    「そっちが言うてんのはトーナ家や!」
     泣きながら叫んだマロの言葉に、マークの動きが止まる。
    「……なに?」
    「俺の名前はマラネロ・アキュラ・ゴールドマン! ゴールドマン家はゴールドマン家でも、はっきり言うて外様、分家の分家みたいなもんや!
     そっちがさっきから言うてる金火狐財団の総帥はレオン・モント・トーナ・ゴールドマン言うて、本家格のトーナ家の奴や!
     小物の俺狙って、そんな恨み晴らせるか! そんな大事なこと間違えんな、アホぉ!」
    「……」
     泣きわめくマロに対し、マークはいぶかしげな表情を崩さない。
    「ええ加減に拳銃向けんのやめろやぁ……」
     泣きながら懇願されるが、マークは依然、拳銃を構えたままでいる。
    「……逃げ口上だ」
    「え?」
    「お前の家の事情がどうだろうと、お前がゴールドマン家の人間であることに変わりはない」
    「ちょっ……」
     マークは顔をこわばらせ、拳銃の引き金を絞った。

     パン、と音が響く。
     だが、マロは倒れていない。マークとマロ、その中間に、魔術で盾を作った葵が立ちはだかったからだ。
    「アオイさん……!?」
     マークとマロが、同時に叫ぶ。
    「もうやめなよ、マークくん。気は済んだでしょ?」
    「……っ」
     葵は術を解き、マークに近寄る。
    「どいてください」
    「どいてもきみ、撃てないよ」
    「撃ちます」
    「ううん」
     マークのすぐ目の前まで迫った葵は、彼の手を拳銃ごと握る。
    「震えてるもの。もう一発撃つ気力は無いよ」
    「……ぐっ」
     葵がマークの手から、拳銃を奪う。
    「この後、どうするつもりだったの?」
    「え?」
    「空気銃でも当たりどころが悪かったら、マロくんは死ぬよ。そうでなくても、こうして面と向かって危害を加えたんだから、きみはこのゼミを追い出されるのは確実だよ。
     マロくんだけに嫌な思いをさせて、きみはこのままゼミにいるつもりだった?」
    「……責任は取ります」
    「それはきみの本意じゃないでしょ」
    「……」
     葵は拳銃を分解し、バラバラにして投げ捨てた。
    「きみは何のためにゼミに入ったの? 偶然出会ったマロくんを殺すため? ……違うよね。
     お母さんを治してあげたいんじゃないの? そうだよね、マーク・トラスくん」
    「……! 何故僕の本名を?」
     驚くマークに、葵は淡々と説明する。
    「今、君が説明した話から、ピンと来たんだ。『我が新央北』って言ってたし、お父さんはその『新央北』圏内の宗主だって言ってたもの。
     きみのお父さんはトラス王国の国王、ショウ・トラスだよね?」
    「……はい」
     正体を知られ、真っ青な顔をしたマークに、葵はなお淡々と説得を続ける。
    「話を戻すけど、ここでこのまま帰ったら、何にもならないよ。何の結果も出せない。
     それは王子としてのきみと、王族としてのきみたち一家の誇りを著しく傷つけるものだし、何よりきみの望みじゃないはずだよ。
     今謝ったら、お父さんたちの顔に泥を塗ることも、きみの夢を捨てることもなく、事が済ませられるよ」
    「……でも、もう」
    「マロくんはきっと許してくれるよ。あの子も言った通り、君があの子を襲ったのは、きみの勘違いだもん。
     そうだよね、マロくん」
     そう問いかけた葵に、マロは渋々と言った態度で応じる。
    「……まあ、はい。そいつが二度と俺を襲わへんと約束してくれて、あと、部屋の修理代払ってくれたら、まあ、許してやってもええですけど」
    「だってさ。どうする?」
    「……おいくらでしょうか」
    「25万エルや」
    「にじゅ、……え」
     額を聞いた途端、マークが硬直した。
    「25万ですか?」
    「そうや」
    「25万、……ちょっと、……その、……父に相談します」

     その後――マークはどうにか言い訳をつけて故郷から送金してもらい、これをマロに渡して、寮の補修代を弁償した。



    「で? マロが狙われてたって件、結局どうなったって?」
     事件が密かに解決してから数日後、シエナが葵に事の顛末を尋ねてきた。
    「あの後何も起きてないから、みんな適当にうわさしてる。そのうちみんな飽きて話さなくなるよ」
    「テンコちゃんは何か言ってた?」
    「あの人は騒ぎにならなきゃ構わないってタイプ。このまま騒ぎが収まれば、きっとそのまま放っておくよ」
    「なら、とりあえずもう終わったってことなのね」
    「うん」
     シエナは振り返り――並んで勉強しているマークとマロに声をかけた。
    「で? 仲直りにパーティとかやんないの?」
    「あはは……、やりたいんは山々なんですけども、あんまりお金使えへんもんで」
    「バーカ」
     シエナは鼻で笑い、こう提案した。
    「5万や10万かけなくたって、パーティの一つくらいできるわよ。みんなでお金持ち寄って騒ぎましょ」
    「楽しそうですね」
     マークはにこっと笑い、その提案に乗る。
    「よし、じゃ勉強がひと段落したら、みんなで買い物に行こっか」
    「ん」

     これを境に、マロは学生らしくない豪遊をすることは無くなり、葵に対し常に敬意を表した態度を執るようになった。
     そのことが一層、葵への信頼を集める結果となり、これ以降さらに、葵を慕い、相談を持ちかける者が多くなった。

    白猫夢・狙狐抄 終
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