黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第6部

    白猫夢・不遜抄 3

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    麒麟を巡る話、第300話。
    突然の発表。

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    3.
     葵が天狐に叱責を受けた、その翌日。
    「あれ……?」
    「ハーミット?」
    「何してんの?」
     教室に集まり、講義の開始を待っていたゼミ生たちの前に、葵が現れた。
     しかし他のゼミ生たちと同じように着席はせず、葵はそのまま教壇に立つ。
    「どう……したんだ?」
     ざわめくゼミ生たちに、葵は静かに尋ねた。
    「あたしの派閥にいるって思ってる人、手を挙げて」
    「は……?」
     戸惑いつつも、何人かは手を挙げる。それを受けて、葵はこう続けた。
    「分かった。でもそのせいで、みんなギスギスしてるよね」
    「……まあ」「……うん」
    「だからこの派閥、やめるよ」
     葵のこの発言に、教室中がどよめいた。
    「えっ……」「ちょ、ちょっと!?」
    「考えてみて。前期まで、派閥なんてなかったでしょ。前期までは、すごく平和にやってたはずだよ。
     みんな、全部本末転倒になってる。勉強のためにここに来て、勉強のためにみんなで集まって、勉強会作ったんでしょ? なのに今、勉強会のためにみんな行動してる。勉強会の派閥のために、勉強と関係ないことばっかりしてる。
     それじゃ何のためにこのゼミに入ったのか、分かんなくなるよ。ここで3年、4年過ごして家に戻った時、どう説明するの? 『ゼミにいた間ずっと、勉強せずにいがみ合いばっかりしてた』って言う気? 怒られるし、悲しませるよ、そんなの。
     だから派閥がどうこうって話は、今日でやめ。今日からはあたしを『派閥のリーダー』なんて思わずに、普通に話しかけてきて。『派閥のために行動』なんて、絶対にしないで」
     唖然とする皆を前に、葵はそのまま教室を出て行った。

    「アンタ……、アレで話がまとまると思ってんの?」
     その日の夕方、シエナは葵を訪ね、今日の暴挙をたしなめようとしていた。
    「まとめるよ」
     だが、心配そうにするシエナに対し、葵はいつも通りに眠たげな応対をするばかりである。
    「まとまるワケないでしょ……。
     みんな混乱してるわよ。『今更ブロッツォ派に入れない』って嘆いてたわ」
    「派閥がどうしても必要な人がいるなら、その人たちだけでまとまればいいし。
     少なくともあたしとシエナは、そう言うのいらないでしょ?」
    「……はー」
     シエナは額を押さえ、うめくようにつぶやいた。
    「何言っても駄目か、こりゃ」



     シエナは心配していたが、実際のところ、ゼミ生たちの多くにそれほど混乱する様子は見られなかった。
     葵の言う通り、本来は己の知識を磨くため、このゼミに集まってきた者たちである。派閥が解消された当初は戸惑っていたものの、やがて本来の目的に沿うべく、少数ごとに集まって意見交換しあう、「小」勉強会とでも言うべき集団――言い換えれば、ごく親しい者同士で歓談するような集まりが多数、形成されていった。
     一方のブロッツォ派も、ライバル関係を築いていた相手がいなくなったため、自然に態勢は軟化。前期までのような、穏やかな雰囲気へと戻っていった。

     しかし――それでも再度、葵は呼び出された。
    「今度はなに?」
    「……まあ、まずは、だ。お前がやったことは、一応評価してやる」
     呼び出した天狐は、前回とは打って変わって、半分困ったような、そして残り半分は呆れたような、複雑な表情を浮かべていた。
    「ゼミ生が本来やるべきことを示し、勝手にできた派閥を解散させたのは、悪くない。下手に親分風吹かせて威張り散らすより、よっぽどマシだ。その点はいい。文句は言わねー。
     だが、後始末がキチンとできてないぜ。放り出されたヤツらがまたぞろ、妙な集まり方してやがんだ」
    「って言うと?」
    「『徒党を組む』ってのがクセになっちまったか、ボンクラ同士で集まらなきゃやってられなくなったか……。いずれにせよ、元々お前の派閥だって言ってたヤツらが、別のヤツを頭に据えて、新たに派閥を作りつつある。
     性質が悪いコトに、その頭になったヤツもいい気になっちまってるらしい。完璧に勘違いしちまってるみてーでな」
     天狐は袖口から、一通の手紙を取り出した。
    「その勘違い女、お前に挑戦状を送り付けてきやがった。『腑抜けの前リーダーに制裁を加えてやる』ってな」

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    300話到達。
    50回毎の恒例、所感表明のコーナーです。

    自分はあまり無条件・野放図に、「無敵のキャラクタ」を作らないよう心がけています。
    勿論、大火やモールなどの桁違いに強いジョーカーキャラを、
    物語の展開上・都合上の理由で登場させることはありますが、
    それでも極端に能力の高いキャラクタがポコポコ無制限に出現した挙句、
    某ジャンプマンガの如きハイパーインフレを起こし、
    物語全体を破綻させてしまうことが無いよう、極力気をつけて執筆しています。

    それを踏まえた上であえて言うと、葵はこれまでの作品中、最強クラスのキャラです。
    全能力が恐ろしく高く、並の人間では太刀打ちすることはおろか、同じ卓に着くことすら叶わない存在。
    これまでに出たキャラのほとんど誰もが、彼女には敵いません。それほどの強キャラです。

    なぜあえて、「自分が嫌いなタイプ」だと言う、そんなチートじみたキャラを作ったのか。
    それはこの第6部の終わりに、明らかにします。



    ちなみに第6部には、表現上のある縛りを入れています。
    よく読んでみると、一見あの子が主人公のはずなのに、
    これまでの物語とは違う扱いをされていることに気付くと思います。
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    NoTitle 

    はじめまして。
    こちらこそご訪問いただき、ありがとうございます。

    自分も途中からよりは、はじめから通して読んでいただける方がありがたいです。
    大分長いですが、よろしくお付き合いください。

     

    初めまして。
    いつもご訪問いただいて有難うございます(^o^)/
    途中から読むのは嫌なので、最初から読み始めています。
    元々読むのが遅いので、追いつくのは無理かな^^;とは思いますが、気持ちを込めて読みたいのでお許し下さいね(^_^)
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