「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第6部
白猫夢・不遜抄 4
麒麟を巡る話、第301話。
高飛車お嬢様。
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4.
手渡された挑戦状を一瞥し、葵はこう答えた。
「いやだって言ったら?」
「拒否権は無いぜ」
天狐はフン、と鼻を鳴らす。
「もう一度言うが、お前は後始末がなってねー。
たった一言『解散しましょう』つって、みんな納得するワケねーだろ。ソレを言った上で、『もしも今後また、勝手に徒党を組むヤツが出て来たら、跡形も無く消してやる』って脅しを入れるくらいの、いわゆる『凄味』がその言葉の裏になきゃ、誰だって従うワケがねーだろうが。
だからこの挑戦は受けろ。そして受けた上で、このバカ――天原楓をブチのめして、ソレを誇示しろ。ソレが後始末だ」
「……うん。……まあ、分かった」
この時、いつも淡々としている葵には珍しく、不服そうな様子で返事を返した。
「天原さんが挑戦状を、……ですか」
寮に戻った後、食堂で葵から話を聞いた春は、顔を曇らせた。
「実は天原さんとわたし、央南の同じ学校にいたんです。向こうが、2年先輩で」
「どんな人?」
葵に尋ねられ、春はさらに表情を暗くする。
「何と言うか……、あまりこんなことを言うと、角が立ちますが……。
一言で言うなら、高慢な方です。元々、名家の出ですし、すごく美人なのと、文武両道なせいか、非常に自信家で。
魔術の方も非常に優秀と聞いています。……だからこそ地元の大学ではなく、こちらのゼミに進まれたのでしょうけど」
「こっちでは何を研究してるか、知ってる?」
「いえ……。正直、わたしにとっては苦手な方ですので、実は挨拶もしてないんです」
「そう」
葵はくる、と振り返り、丁度食堂に入って来たマロに声をかけた。
「マロくん、アマハラって知ってる?」
「ええ、何度かご飯食べに行きました」
葵の隣に着席したところで、マロは楓のことを話した。
「でも正直、ドぎついやっちゃなー、と思いましたわ。
何ちゅうか、例えば俺がお酒注文したら、『ああ、それ? 前に呑みましたけれど、高い割に薬みたいな味しかしませんでしたわね。あなた、そんなものが好きなの?』ちゅうんですよ。そのくせ、その酒が来たら来たで、一人でボトル半分以上開けよるし。
そんな文句言うんやったら呑むなー、って突っ込みかけましたわ、ホンマ」
「……ええ、そう言う方です。
これ以上は、……汚い言葉を遣ってしまいそうなので、控えさせてください」
「うん」
葵は小さくうなずき、改めてマロに尋ねた。
「それでマロくん、アマハラはどんな研究してるの?」
「攻撃魔術です。アオイさんと同じですわ」
「それは分かってる」
「へ?」
怪訝な顔をしたマロに、葵はこう返す。
「攻撃魔術を得意とする人じゃなきゃ、同じように攻撃魔術の研究をしてるあたしに挑戦状なんて送らないし、ましてやあたしを叩きのめそうなんて言わないよ。それは推理できた。
聞きたいのは、どんな攻撃魔術を研究してるかだよ」
「それは、……えーと、……分かりません」
「そう」
葵はそれだけ返し、席を立とうとした。
「ちょっと待って、アオイ」
と――シエナがパタパタと足音を立てて、駆け寄ってきた。
「仕入れてきたわよ、情報」
「え?」
これを聞いて、春がきょとんとする。
「仕入れてきた、って……? シエナさん、挑戦状の話、どこかで聞いたんですか?」
「聞いたって言うより、そのアマハラ本人がわめき散らしてたのよ。『あの迷惑千万で無責任の塊のような駄猫を、このあたくしが追い出してやる』つって。
で、ホントに対決だ何だってコトになったら相手の情報が必要だろうと思って、集めてきたってワケよ」
「ありがとう、シエナ」
葵は座り直し、続いてシエナも対面に座る。
「まず、アンタが今言ってた話――研究内容からね。
基本は火術だけど、ちょっと特殊なの。魔術剣って言えばいいのかしら」
「まじゅつけん?」
「剣で攻撃する際に、火術のアシストを付けるって感じね。
何でもアマハラのおじいさんが、央南じゃちょっとした剣術家らしいの。で、そのおじいさんが火の魔術剣の使い手で、彼女も小さい頃から剣術を学んでたって話よ」
シエナがここまで話したところで、葵はぽつりとつぶやいた。
「……焔流剣術だね」
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高飛車お嬢様。
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手渡された挑戦状を一瞥し、葵はこう答えた。
「いやだって言ったら?」
「拒否権は無いぜ」
天狐はフン、と鼻を鳴らす。
「もう一度言うが、お前は後始末がなってねー。
たった一言『解散しましょう』つって、みんな納得するワケねーだろ。ソレを言った上で、『もしも今後また、勝手に徒党を組むヤツが出て来たら、跡形も無く消してやる』って脅しを入れるくらいの、いわゆる『凄味』がその言葉の裏になきゃ、誰だって従うワケがねーだろうが。
だからこの挑戦は受けろ。そして受けた上で、このバカ――天原楓をブチのめして、ソレを誇示しろ。ソレが後始末だ」
「……うん。……まあ、分かった」
この時、いつも淡々としている葵には珍しく、不服そうな様子で返事を返した。
「天原さんが挑戦状を、……ですか」
寮に戻った後、食堂で葵から話を聞いた春は、顔を曇らせた。
「実は天原さんとわたし、央南の同じ学校にいたんです。向こうが、2年先輩で」
「どんな人?」
葵に尋ねられ、春はさらに表情を暗くする。
「何と言うか……、あまりこんなことを言うと、角が立ちますが……。
一言で言うなら、高慢な方です。元々、名家の出ですし、すごく美人なのと、文武両道なせいか、非常に自信家で。
魔術の方も非常に優秀と聞いています。……だからこそ地元の大学ではなく、こちらのゼミに進まれたのでしょうけど」
「こっちでは何を研究してるか、知ってる?」
「いえ……。正直、わたしにとっては苦手な方ですので、実は挨拶もしてないんです」
「そう」
葵はくる、と振り返り、丁度食堂に入って来たマロに声をかけた。
「マロくん、アマハラって知ってる?」
「ええ、何度かご飯食べに行きました」
葵の隣に着席したところで、マロは楓のことを話した。
「でも正直、ドぎついやっちゃなー、と思いましたわ。
何ちゅうか、例えば俺がお酒注文したら、『ああ、それ? 前に呑みましたけれど、高い割に薬みたいな味しかしませんでしたわね。あなた、そんなものが好きなの?』ちゅうんですよ。そのくせ、その酒が来たら来たで、一人でボトル半分以上開けよるし。
そんな文句言うんやったら呑むなー、って突っ込みかけましたわ、ホンマ」
「……ええ、そう言う方です。
これ以上は、……汚い言葉を遣ってしまいそうなので、控えさせてください」
「うん」
葵は小さくうなずき、改めてマロに尋ねた。
「それでマロくん、アマハラはどんな研究してるの?」
「攻撃魔術です。アオイさんと同じですわ」
「それは分かってる」
「へ?」
怪訝な顔をしたマロに、葵はこう返す。
「攻撃魔術を得意とする人じゃなきゃ、同じように攻撃魔術の研究をしてるあたしに挑戦状なんて送らないし、ましてやあたしを叩きのめそうなんて言わないよ。それは推理できた。
聞きたいのは、どんな攻撃魔術を研究してるかだよ」
「それは、……えーと、……分かりません」
「そう」
葵はそれだけ返し、席を立とうとした。
「ちょっと待って、アオイ」
と――シエナがパタパタと足音を立てて、駆け寄ってきた。
「仕入れてきたわよ、情報」
「え?」
これを聞いて、春がきょとんとする。
「仕入れてきた、って……? シエナさん、挑戦状の話、どこかで聞いたんですか?」
「聞いたって言うより、そのアマハラ本人がわめき散らしてたのよ。『あの迷惑千万で無責任の塊のような駄猫を、このあたくしが追い出してやる』つって。
で、ホントに対決だ何だってコトになったら相手の情報が必要だろうと思って、集めてきたってワケよ」
「ありがとう、シエナ」
葵は座り直し、続いてシエナも対面に座る。
「まず、アンタが今言ってた話――研究内容からね。
基本は火術だけど、ちょっと特殊なの。魔術剣って言えばいいのかしら」
「まじゅつけん?」
「剣で攻撃する際に、火術のアシストを付けるって感じね。
何でもアマハラのおじいさんが、央南じゃちょっとした剣術家らしいの。で、そのおじいさんが火の魔術剣の使い手で、彼女も小さい頃から剣術を学んでたって話よ」
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