「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第7部
白猫夢・麒麟抄 7
麒麟の話、第7話。
すべては既に、選ぶ前から。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
すべてがはっきりと、鮮やかに、クリアに映し出されている。
ボクの予知能力はここ数年で、今までにないほど研ぎ澄まされている。
原因ははっきりしている。アオイのおかげだ。
ボクと彼女の能力が干渉し合い、増幅されているんだ。
あ、そうだ。
ココで一度、説明しておこう。
ボクたちの持つ「予知能力」って、具体的にどんなモノなのかってコトを。
ボクたちの能力は、視覚的に言えば「目の前いっぱいに並んだ、いくつものスクリーン」なんだ。
普通の人には、そのスクリーンは1枚しか与えられていない。そのスクリーンには、単純に、次に起こるコトだけが映し出されている。
例えば目の前に2つドアがあったとする。スクリーン1枚の人の場合、右のドアを開ければ右の部屋の映像が移る。左のドアを開けたなら、左の部屋の映像が映る。一方を選択したら、もう片方は映せないワケだ。
だけどボクたちの場合、右のドアを開けたとしても、右の部屋と同時に、左の部屋の様子も、別のスクリーンに映し出されているんだ。逆も然りで、左を開けても右の様子が見えてる。
勿論、ドアが3つであっても4つであっても同じコト。ドレを選んでも、選ばなかったドアの先にあるモノが、別々のスクリーンに映っているんだ。
その選択肢をもっと広げた状態が、現実の状態だ。
ある選択をしようとしたその瞬間、ボクたちの持つ「スクリーン」には、選択した場合と選択しなかった場合の様子が映し出される。さらに、そのスクリーンの奥に見える選択肢についても、選んだ場合と選ばなかった場合が、また別のスクリーンに映っている。
ボク自身も、アオイも、はっきり自分の能力の最大値を把握してるワケじゃないけど、……そうだな、数で言うなら、アオイはスクリーンを一度に15、6枚くらい。ボクは一度に30枚くらい、かな。
単純な2択を選択していく場合なら、アオイは6手先まで、ボクは7か8手先まで、すべての組み合わせの結果が見える。
ま、今のは視覚的な部分だけをざっくり説明しただけだ。実際にボクたちが感じてるモノは、もっと複雑で精密で繊細だ。
ソコまでは、流石に口で説明するのはめんどくさい。勝手に妄想してくれ。
話を元に戻そう。
ボクの力とアオイの力による相乗効果で、ボクたちはあらゆる物事の未来を予測・予知するコトができた。
その力で何をしたと思う? 大抵の人が思い付くコトさ。
そう、金儲けだ。と言っても、宝くじや競馬で一山当てたとか、そんなチャチな次元じゃない。
もっともっとハイリスクでハイリターンなコトをノーリスクでやってのけて、莫大な金を稼ぎ出した。
ボクたちの力があれば、「リスク(不確実性)」なんて言葉は意味を成さない。
続いて人集め。ボクが何故、わざわざあんなところにアオイを行かせたと思う? その時に出会った子たちを後々アオイの配下に、自然に加えるためさ。
誰だっていきなり「おいお前、仲間になれ」なんて言ったって、ボクみたいなのでもない限り、説得力なんて無い。
だからボクやアオイ以外には、ひどく遠回りに思えるような方法を執ったのさ。
その2つは完全に成功した。
今やアオイは莫大な資産と、世界の陰の、そのさらに奥に潜んでいながら、世界中を操れるような人脈を獲得した。
最早誰が何をどうしようと、彼女を傷つけることはおろか、触れるコトさえできはしない。
彼女は既に、無敵だ。
誰にも邪魔はさせない。邪魔なんかさせやしない。できるはずも無い。
ボクたちが負ける未来なんか、ひと欠片だって見えやしない。
ボクたちがこのゲームの、最終勝者だ。
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7.
すべてがはっきりと、鮮やかに、クリアに映し出されている。
ボクの予知能力はここ数年で、今までにないほど研ぎ澄まされている。
原因ははっきりしている。アオイのおかげだ。
ボクと彼女の能力が干渉し合い、増幅されているんだ。
あ、そうだ。
ココで一度、説明しておこう。
ボクたちの持つ「予知能力」って、具体的にどんなモノなのかってコトを。
ボクたちの能力は、視覚的に言えば「目の前いっぱいに並んだ、いくつものスクリーン」なんだ。
普通の人には、そのスクリーンは1枚しか与えられていない。そのスクリーンには、単純に、次に起こるコトだけが映し出されている。
例えば目の前に2つドアがあったとする。スクリーン1枚の人の場合、右のドアを開ければ右の部屋の映像が移る。左のドアを開けたなら、左の部屋の映像が映る。一方を選択したら、もう片方は映せないワケだ。
だけどボクたちの場合、右のドアを開けたとしても、右の部屋と同時に、左の部屋の様子も、別のスクリーンに映し出されているんだ。逆も然りで、左を開けても右の様子が見えてる。
勿論、ドアが3つであっても4つであっても同じコト。ドレを選んでも、選ばなかったドアの先にあるモノが、別々のスクリーンに映っているんだ。
その選択肢をもっと広げた状態が、現実の状態だ。
ある選択をしようとしたその瞬間、ボクたちの持つ「スクリーン」には、選択した場合と選択しなかった場合の様子が映し出される。さらに、そのスクリーンの奥に見える選択肢についても、選んだ場合と選ばなかった場合が、また別のスクリーンに映っている。
ボク自身も、アオイも、はっきり自分の能力の最大値を把握してるワケじゃないけど、……そうだな、数で言うなら、アオイはスクリーンを一度に15、6枚くらい。ボクは一度に30枚くらい、かな。
単純な2択を選択していく場合なら、アオイは6手先まで、ボクは7か8手先まで、すべての組み合わせの結果が見える。
ま、今のは視覚的な部分だけをざっくり説明しただけだ。実際にボクたちが感じてるモノは、もっと複雑で精密で繊細だ。
ソコまでは、流石に口で説明するのはめんどくさい。勝手に妄想してくれ。
話を元に戻そう。
ボクの力とアオイの力による相乗効果で、ボクたちはあらゆる物事の未来を予測・予知するコトができた。
その力で何をしたと思う? 大抵の人が思い付くコトさ。
そう、金儲けだ。と言っても、宝くじや競馬で一山当てたとか、そんなチャチな次元じゃない。
もっともっとハイリスクでハイリターンなコトをノーリスクでやってのけて、莫大な金を稼ぎ出した。
ボクたちの力があれば、「リスク(不確実性)」なんて言葉は意味を成さない。
続いて人集め。ボクが何故、わざわざあんなところにアオイを行かせたと思う? その時に出会った子たちを後々アオイの配下に、自然に加えるためさ。
誰だっていきなり「おいお前、仲間になれ」なんて言ったって、ボクみたいなのでもない限り、説得力なんて無い。
だからボクやアオイ以外には、ひどく遠回りに思えるような方法を執ったのさ。
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今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
なにもしない、というのもひとつの行動です。もしなにもしない未来まで見えたとしても、その選択肢を「選んだ/選ばない」は当事者のこれまで受けてきた外部刺激の積み重ねがもたらしたもので、因果の鎖の輪の中にあることに変わりはありません。
と、頑迷な(以下略)
と、頑迷な(以下略)
NoTitle
例えば「自分が何ら選択決定しない、あるいはしなかった世界」をも、
その並行スクリーンの中に収めることができるとすれば、
因果律を部分的に無視することは可能です。
(麒麟抄・5でも似たようなことを、麒麟が言っています)
観察者効果やら縁起、因縁やらを完全無視した上で、
真の最適解を導き出せてしまう、恐るべき能力です。
その次元を超越した観察眼こそが、神の視野である。……と、麒麟は思っているかも知れません。
その並行スクリーンの中に収めることができるとすれば、
因果律を部分的に無視することは可能です。
(麒麟抄・5でも似たようなことを、麒麟が言っています)
観察者効果やら縁起、因縁やらを完全無視した上で、
真の最適解を導き出せてしまう、恐るべき能力です。
その次元を超越した観察眼こそが、神の視野である。……と、麒麟は思っているかも知れません。
NoTitle
それも因果の網の中にあってですね白猫さん。あなたや葵さんになにが見えたのか、というのも因果的に決定されていて、そこからどの未来を選択するのかも因果的に決定されていてですね、その結果世界がどうなるかも決定されているんです。あなたもこの網からは逃れられず、神になることはできません。
頑迷な決定論哲学の徒はそう主張するのであった(笑)
頑迷な決定論哲学の徒はそう主張するのであった(笑)
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NoTitle
子供同士の「ぜったいバリア→バリアはかいこうせん→スーパーぜったいバリア」合戦みたいになってくるので、
あまり突っ込んで言及していけそうにないですが、
この能力は「麒麟のいない世界」すら並行世界の一つとして視認できます。
まあ、これも「神が全知全能ではないことの証明」みたいな話になってきますが……。
ともかく「神気取りの悪魔」克麒麟による、
今後の活躍にご期待ください。
「神」になる方法は、決して超能力や桁外れの力によるものでは無い、
とだけ、今は言及しておきます。