「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第7部
白猫夢・堕天抄 4
麒麟を巡る話、第320話。
大勝利。
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4.
ヘブン王国の主権、即ちその国のトップは、「王国」の名の通り、国王である。
しかし王国が「天政会」に下って以降、国王および配下の人間には事実上、政治権力が与えられていなかった。「天政会」から人員が送られ、政権を掌握されていたのだ。
とは言え、ここでも「天政会」は自らの責任を問われないよう、逃げ道を用意していた。それが「議会」である。
「独立国家」である以上、国政はその国の人間、その国の組織・機関が執り行うべきものである。その観点に立てば「天政会」は国外の組織であり、その彼らが直接、王国の大臣たちを追い払ってその座に就くようなことをすれば、それはもはや「独立国家」の体を成さず、「天政会」の領地、所有物と同様の扱いとなる。
この状態では、先の賠償金などのように、王国に対して何らかの問題に対し責任を問われた場合、「天政会」も連帯で責任を負うことになる。
それを回避するため、「天政会」は「王国の凋落は国王による専制に原因がある。民主的な構造改革が必要だ」などともっともらしい理由を付けて議会を設置させ、その上で「国民から『公正な選挙によって』選出された」と言う大義名分を掲げて議会を掌握、政治上の要職を独占した。
これにより、もしも問題が発生した場合、即座に王国から議員たちを退かせ、王国に責任を丸投げすることができると言う、とんでもない逃げ道を用意したのである。
ちなみに選挙自体、名目上では国民全員に投票権があるとしているものの、ほとんどの国民に対してはまともに公示などされておらず、議会設置から約20年・6期の間、「天政会」が内々で密かに投票し、密かに議席を分配すると言う阿漕(あこぎ)な方法を執っていた。
この国家的矛盾を、白猫党は突いた。
まず、「外国人に参政させている」と言う事実を逆手に取り、自分たちが立候補したのである。この一件が、「天政会」の言いなりになっている現状を打破する材料と見られ、国民を刺激した。
さらに王国各地を回り、選挙と言うものがあるなどと思ってもおらず、これまで投票していなかった者たちに、この存在を知らせて回った。
それが功を奏し、今回の投票数大幅増につながったのだ。
また、従来の投票数の少なさから、密かに「天政会」が投票結果を自分たちに都合のいいように水増ししていることも突き止めており、白猫党は選挙管理委員会にも人員を送り込んでいる。
万が一この投票結果が「天政会」にとってマイナスとなる結果を示した場合、「天政会」がそれを誤魔化し、揉み消すのを阻止するためである。
そしてこの選挙は、白猫党にとっては予想通りであり、一方で王国、および「天政会」には青天の霹靂とも言うべき結果となった。
選挙前には150議席中、105議席が「天政会」、残る45議席は王国の権力者が握っていた。
ところがこの選挙により、「天政会」は大幅に議席を減らし、わずか8議席の獲得にしか至らなかった。
一方、王国側は73議席と大幅増。そして突如現れた白猫党が、残る69議席を獲得した。
「ばんざーい!」「ばんざーい!」
選挙後、ホテルでは祝勝会が催された。
「みんな、本当にお疲れ様! これで『第一段階』完了よ!」
「おつかれさまです!」「おつかれさまです!」
シエナが壇上に立ち、皆を労っている。
それを傍から眺める形で、マークは一人、ぼんやりと突っ立っていた。
(まさか……、としか思って無かったけど、まさか本当に、半数近くも議席を獲得してしまうだなんて。
でも、流石に過半数なんて無理だったみたいだな。多分今回初めて投票に来た人たちだって、そこまで白猫党を信じ切れなかったんだろう。
『天政会』も白猫党も外国人であることに変わりはないし、それよりも――ずっと日陰者だったにせよ――国内の人間に任せたいと思うだろうし、それが王国側の議席増にもつながったんだろうな。
とは言え、王国側と手を組めば、確実に『天政会』を王国から追い出すことができるはずだ。多分、明日にでもその話が出るだろう)
マークの予想通り、大量の議席を得た白猫党は、翌日から動き出した。
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大勝利。
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ヘブン王国の主権、即ちその国のトップは、「王国」の名の通り、国王である。
しかし王国が「天政会」に下って以降、国王および配下の人間には事実上、政治権力が与えられていなかった。「天政会」から人員が送られ、政権を掌握されていたのだ。
とは言え、ここでも「天政会」は自らの責任を問われないよう、逃げ道を用意していた。それが「議会」である。
「独立国家」である以上、国政はその国の人間、その国の組織・機関が執り行うべきものである。その観点に立てば「天政会」は国外の組織であり、その彼らが直接、王国の大臣たちを追い払ってその座に就くようなことをすれば、それはもはや「独立国家」の体を成さず、「天政会」の領地、所有物と同様の扱いとなる。
この状態では、先の賠償金などのように、王国に対して何らかの問題に対し責任を問われた場合、「天政会」も連帯で責任を負うことになる。
それを回避するため、「天政会」は「王国の凋落は国王による専制に原因がある。民主的な構造改革が必要だ」などともっともらしい理由を付けて議会を設置させ、その上で「国民から『公正な選挙によって』選出された」と言う大義名分を掲げて議会を掌握、政治上の要職を独占した。
これにより、もしも問題が発生した場合、即座に王国から議員たちを退かせ、王国に責任を丸投げすることができると言う、とんでもない逃げ道を用意したのである。
ちなみに選挙自体、名目上では国民全員に投票権があるとしているものの、ほとんどの国民に対してはまともに公示などされておらず、議会設置から約20年・6期の間、「天政会」が内々で密かに投票し、密かに議席を分配すると言う阿漕(あこぎ)な方法を執っていた。
この国家的矛盾を、白猫党は突いた。
まず、「外国人に参政させている」と言う事実を逆手に取り、自分たちが立候補したのである。この一件が、「天政会」の言いなりになっている現状を打破する材料と見られ、国民を刺激した。
さらに王国各地を回り、選挙と言うものがあるなどと思ってもおらず、これまで投票していなかった者たちに、この存在を知らせて回った。
それが功を奏し、今回の投票数大幅増につながったのだ。
また、従来の投票数の少なさから、密かに「天政会」が投票結果を自分たちに都合のいいように水増ししていることも突き止めており、白猫党は選挙管理委員会にも人員を送り込んでいる。
万が一この投票結果が「天政会」にとってマイナスとなる結果を示した場合、「天政会」がそれを誤魔化し、揉み消すのを阻止するためである。
そしてこの選挙は、白猫党にとっては予想通りであり、一方で王国、および「天政会」には青天の霹靂とも言うべき結果となった。
選挙前には150議席中、105議席が「天政会」、残る45議席は王国の権力者が握っていた。
ところがこの選挙により、「天政会」は大幅に議席を減らし、わずか8議席の獲得にしか至らなかった。
一方、王国側は73議席と大幅増。そして突如現れた白猫党が、残る69議席を獲得した。
「ばんざーい!」「ばんざーい!」
選挙後、ホテルでは祝勝会が催された。
「みんな、本当にお疲れ様! これで『第一段階』完了よ!」
「おつかれさまです!」「おつかれさまです!」
シエナが壇上に立ち、皆を労っている。
それを傍から眺める形で、マークは一人、ぼんやりと突っ立っていた。
(まさか……、としか思って無かったけど、まさか本当に、半数近くも議席を獲得してしまうだなんて。
でも、流石に過半数なんて無理だったみたいだな。多分今回初めて投票に来た人たちだって、そこまで白猫党を信じ切れなかったんだろう。
『天政会』も白猫党も外国人であることに変わりはないし、それよりも――ずっと日陰者だったにせよ――国内の人間に任せたいと思うだろうし、それが王国側の議席増にもつながったんだろうな。
とは言え、王国側と手を組めば、確実に『天政会』を王国から追い出すことができるはずだ。多分、明日にでもその話が出るだろう)
マークの予想通り、大量の議席を得た白猫党は、翌日から動き出した。
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