「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第7部
白猫夢・逃狼抄 6
麒麟を巡る話、第328話。
党防衛隊の追撃。
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6.
「まさかマークだけやなくて、フィオにまで会うとは思てへんかったわ」
マロはニヤニヤと暗い笑みを浮かべたまま、党員たちに無言で腕を振り、指示を送る。
「マーク、お前を逃がすなっちゅう総裁閣下サマのご命令や。ホンマはこんなもん、党防衛隊の仕事やけど、お前と俺には色々しがらみがあるからな。
俺は忘れてへんで。4年前、お前が俺を殺そうとしとったこと」
「う……」
一瞬、マークは後ずさろうとしたが、背後からも銃を突き付けられていることを思い出し、その場に留まる。
「ホンマやったら拘束して、ホテルに連れ戻すところやねんけども、ちょっと『手違い』があってしもた、……っちゅうことにするわ。
別に構へんからな、お前が生きてようと生きてまいと。お前がこっち来て、国に帰らへんっちゅう事実さえあればええねんし」
そう前置きし、マロはす、と手を挙げる。
それを受け、党員たちが銃を構えた。
「させるものかッ!」
次の瞬間、フィオは魔法陣の描かれた剣を取り出し、呪文を唱える。
「凍れ、『バーストチリング』ッ!」
呪文が発動すると同時に、マークの狼耳に、ひや……、とした風が当たった。
「うっ……」「マーク、僕のそばに! そこにいると巻き添えを食う!」
フィオが左手でぐい、とマークを抱き込みつつ、剣を持ったもう一方の手を掲げる。
「なんや……?」
マロはきょとんとしていたが、すぐに異変が起こっていることに気付く。
「お、おい! 銃、なんや白くなっとるぞ!?」
「え? ……うわっ!?」
党員たちが手にしていた銃が、銃口から銃身にかけて凍りつき、びっしりと霜が付いていた。
「う、撃て、撃てっ!」
慌ててマロが命じるが、既に内部も凍りついているらしく、引き金を引いてもビクともしない。
「う、撃てません!」
「攻撃不能です!」
「う、さ、寒、っ……」
さらには党員数名が真っ蒼な顔でばたばたと倒れ、銃同様に凍りついていく。
「くそ、……ふざけんなッ!」
マロは倒れた党員から銃を奪い、火術を唱えて銃を温めようとした。
「さっさと融けろや!」
「あ」
その様子を見ていたマークが、思わず声を漏らす。
「マロ、ダメだ!」
「知るかッ! そこでじっとしてろ、さっさと殺して……」
マロが怒鳴り返していたその途中、ばごん、と鈍い音が轟いた。
「うおわあッ!?」
どうやら弾薬に熱が移り、腔発したらしい。
マロは顔面から血を流し、その場に倒れた。
「今だ! 逃げよう!」
フィオはマークを抱えたまま、マロの横を抜け、その場から走り去った。
それと同時にフィオの術が解け、周囲は元の気温に戻る。
「にっ……、逃すな、逃すな……っ」
マロは血まみれになった顔を覆ったまま、党員たちに命じる。
復活した党員たちは銃を取り、フィオたちを追った。
マークとフィオは、全速力で森の中を駆ける。
「はぁっ、はぁっ、……」
「止まったらダメだ、マーク! 止まったら撃ち殺されるぞ!」
「わっ、分かってる、分かってるよっ!」
既に党員たちから300メートル程度は離れたものの、背後からはぱぱぱ……、と軽機関銃の掃射音が響いてくる。
その内の一発が、ちゅん、と音を立てて、マークのすぐ横にある木をえぐった。
「うわっ……」
それに気を取られ、マークの姿勢が崩れる。
「マーク!」
連鎖的に、フィオも気を取られる。
次の瞬間――フィオの右肩から、血しぶきが上がった。
「うっ、ぐ……」
フィオが膝を付く。
「ふぃ、フィオくん!」
「ぼっ、僕に構うな! 行くんだ!」
フィオは肩を押さえたまま、その場にうずくまった。
「い、行けるもんか! 君を置いては……」
「さっきも言ったはずだ! ここで君が死んだら、何にもならない! 行け! 行くんだ、マーク!」
「……~ッ」
マークはフィオの腕をつかみ、引き寄せた。
「できない! 君を犠牲になんて!」
「馬鹿っ……!」
フィオは手を振りほどこうとしたが、マークはがっちりと掴んで離さない。
そのうちに党員たちが追いつき、銃を構えて駆け込んできた。
「撃てッ! 撃ち殺せッ!」
マロの声が、その背後から聞こえてくる。
「絶対許さへんぞ、コラ……! ぐっちゃぐちゃのミンチにしたるッ!」
「……!」
殺意をぶつけられ、マークはその場に立ち竦むしかなかった。
その時だった。
「やらせないわよ、そんなこと」
マークの前に、とん、とんと軽い音を立てて、何者かが2人、降り立った。
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「まさかマークだけやなくて、フィオにまで会うとは思てへんかったわ」
マロはニヤニヤと暗い笑みを浮かべたまま、党員たちに無言で腕を振り、指示を送る。
「マーク、お前を逃がすなっちゅう総裁閣下サマのご命令や。ホンマはこんなもん、党防衛隊の仕事やけど、お前と俺には色々しがらみがあるからな。
俺は忘れてへんで。4年前、お前が俺を殺そうとしとったこと」
「う……」
一瞬、マークは後ずさろうとしたが、背後からも銃を突き付けられていることを思い出し、その場に留まる。
「ホンマやったら拘束して、ホテルに連れ戻すところやねんけども、ちょっと『手違い』があってしもた、……っちゅうことにするわ。
別に構へんからな、お前が生きてようと生きてまいと。お前がこっち来て、国に帰らへんっちゅう事実さえあればええねんし」
そう前置きし、マロはす、と手を挙げる。
それを受け、党員たちが銃を構えた。
「させるものかッ!」
次の瞬間、フィオは魔法陣の描かれた剣を取り出し、呪文を唱える。
「凍れ、『バーストチリング』ッ!」
呪文が発動すると同時に、マークの狼耳に、ひや……、とした風が当たった。
「うっ……」「マーク、僕のそばに! そこにいると巻き添えを食う!」
フィオが左手でぐい、とマークを抱き込みつつ、剣を持ったもう一方の手を掲げる。
「なんや……?」
マロはきょとんとしていたが、すぐに異変が起こっていることに気付く。
「お、おい! 銃、なんや白くなっとるぞ!?」
「え? ……うわっ!?」
党員たちが手にしていた銃が、銃口から銃身にかけて凍りつき、びっしりと霜が付いていた。
「う、撃て、撃てっ!」
慌ててマロが命じるが、既に内部も凍りついているらしく、引き金を引いてもビクともしない。
「う、撃てません!」
「攻撃不能です!」
「う、さ、寒、っ……」
さらには党員数名が真っ蒼な顔でばたばたと倒れ、銃同様に凍りついていく。
「くそ、……ふざけんなッ!」
マロは倒れた党員から銃を奪い、火術を唱えて銃を温めようとした。
「さっさと融けろや!」
「あ」
その様子を見ていたマークが、思わず声を漏らす。
「マロ、ダメだ!」
「知るかッ! そこでじっとしてろ、さっさと殺して……」
マロが怒鳴り返していたその途中、ばごん、と鈍い音が轟いた。
「うおわあッ!?」
どうやら弾薬に熱が移り、腔発したらしい。
マロは顔面から血を流し、その場に倒れた。
「今だ! 逃げよう!」
フィオはマークを抱えたまま、マロの横を抜け、その場から走り去った。
それと同時にフィオの術が解け、周囲は元の気温に戻る。
「にっ……、逃すな、逃すな……っ」
マロは血まみれになった顔を覆ったまま、党員たちに命じる。
復活した党員たちは銃を取り、フィオたちを追った。
マークとフィオは、全速力で森の中を駆ける。
「はぁっ、はぁっ、……」
「止まったらダメだ、マーク! 止まったら撃ち殺されるぞ!」
「わっ、分かってる、分かってるよっ!」
既に党員たちから300メートル程度は離れたものの、背後からはぱぱぱ……、と軽機関銃の掃射音が響いてくる。
その内の一発が、ちゅん、と音を立てて、マークのすぐ横にある木をえぐった。
「うわっ……」
それに気を取られ、マークの姿勢が崩れる。
「マーク!」
連鎖的に、フィオも気を取られる。
次の瞬間――フィオの右肩から、血しぶきが上がった。
「うっ、ぐ……」
フィオが膝を付く。
「ふぃ、フィオくん!」
「ぼっ、僕に構うな! 行くんだ!」
フィオは肩を押さえたまま、その場にうずくまった。
「い、行けるもんか! 君を置いては……」
「さっきも言ったはずだ! ここで君が死んだら、何にもならない! 行け! 行くんだ、マーク!」
「……~ッ」
マークはフィオの腕をつかみ、引き寄せた。
「できない! 君を犠牲になんて!」
「馬鹿っ……!」
フィオは手を振りほどこうとしたが、マークはがっちりと掴んで離さない。
そのうちに党員たちが追いつき、銃を構えて駆け込んできた。
「撃てッ! 撃ち殺せッ!」
マロの声が、その背後から聞こえてくる。
「絶対許さへんぞ、コラ……! ぐっちゃぐちゃのミンチにしたるッ!」
「……!」
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