黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第7部

    白猫夢・密襲抄 2

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    麒麟を巡る話、第336話。
    暴虐の隊長。

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    2.
     会議を終えた後、シエナは密かに、トレッドと会話を交わした。
    「どう思う?」
    「何をでしょう」
    「マラガのコトよ。アイツは独断専行をしないと思う?」
    「いや……」
     トレッドは苦い顔を返す。
    「私の口からは、断言できかねますな。
     元々が、ノリエ王国の陸軍大佐です。自尊心や戦闘に対する衝動の強さは、決して小さいものではないでしょう。自制してくれるかどうか……」
    「そうね。党役第三位、幹部の中でも下位と言うコトもあるし、勲功を焦って勝手に動くおそれも十分あるでしょうね」
    「監視しておかねばなりませんな」
    「……んー」
     と、シエナは首を横に振る。
    「いいわ。実を言うと、『預言者』は……」
    「……フフ。ちょっと、シエナ」
     シエナの言葉に、トレッドが笑う。
    「私とあなたの仲です。わざわざ彼女のことを、『預言者』と言い直す必要は無いでしょう」
    「ふふ、そうね。つい、クセで。
     ええ、アオイはこうも言ってたのよ。『一応シエナからみんなに伝えてもらうけど、無駄になるよ』ってね」
    「ほう? ……ふむ」
     トレッドは一瞬思案する様子を見せ、すぐにこう返した。
    「従わぬ者は去るよう仕向けよ、と言うご意向でしょうか」
    「多分ね。アタシが今日、あえて釘を差しておいたコトで、後でアイツが勝手な行動を起こしたその時、『命令に背いた』と糾弾できるもの。
     アイツにとっては結局、自分の地位を揺らす結果にしかならないでしょうね」
    「恐ろしいお方だ。アオイさんと、そしてあなたは」
    「……ふふ」

     シエナたちの懸念、そして預言の通り――マラガは密かに、「新央北」との境に駐留していた私兵と連絡を取っていた。
    「いいか、マーク・トラス王子がやって来次第、速やかに殺害しろ! 決して王子を、『新央北』内に入れてはならん!」
    《了解しました。……しかしですね》
     が、相手の反応が悪い。
    「なんだ!? 何か問題でもあるのか!?」
    《我々の情報網によれば、既に王子はトラス王国内に戻っている可能性が》
    「……何だと!?」
    《まだ確定的な情報ではありませんが、つい先程、トラス王自身から王子が戻ってきたとの声明がありました。
     後、新たなお世継ぎができたと……》「そんなことはどうでもいい!」
     マラガは憤り、怒鳴りつけた。
    「王子が戻ってきたと言う、その情報が確かかどうか確認しろ! そして本当に王子が国内に戻っていると言うのならば、何としてでも殺せ!」
    《む、無茶な! 国境を越えて『新央北』中枢に押し入り、第一王子を暗殺しろと仰るのですか!?》
    「無茶だろうが無謀だろうが、やれッ! やらなければ俺がお前を撃ち殺すぞッ!」
    《りょ、了解で……》
     相手の返事を待たず、マラガは電話を乱暴に切り、机から払いのけた。
    「ふんッ! ……しかし本当に、既にトラス王国に戻っていると言うのか? ここから王国まで、いくら何でも3週間近くかかるはずだが……」
     と、マラガの背後から、声がかけられる。
    「可能な手段はある。ある以上、それを使って帰国したのだろう。そうとしか考えられまい?」
    「手段? どんな手段だ? まさか空でも飛んだか?」
    「それも可能性の一つだ。実際に飛行術『エアリアル』は存在する。もっとも、黒炎教団の人間くらいしか、使う者はいないらしいがね。
     他の手段としても、黒炎教団がらみになるな。最も考えられるのは、瞬間移動術『テレポート』だ。あれなら一瞬で帰国可能だろう」
    「はっ、逃げた先に偶然、教団員が居合わせたと言うのか?」
    「可能性はある」
    「あってたまるか! そんなに都合よく、あんな引き籠もり共がポコポコ湧くわけが無いだろうが!」
     声を荒げるマラガに、その長耳は肩をすくめて見せる。
    「実行可能な手段がある以上、可能性は否定できまい。本当に不可能なことを除外していけば、それが如何に信じられずとも、真実であると……」「うるさい!」
     苛立ったマラガは、その長耳に向かって怒鳴りつける。
    「お前は研究だけしていればいいんだ! 俺に説教なんかするな!」
    「……いいとも」
     長耳は憮然とした顔をしつつも、それ以上何も言うこと無く、机に視線を戻した。
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