「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第7部
白猫夢・悖乱抄 3
麒麟を巡る話、第343話。
会の破綻。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
会の代表者がいなくなったとは言え、依然として各国要人たちはマーソルに陣取っている。何らかの回答をせねばならず、「天政会」は急遽、次の議長を決めなければならなかった。
しかし――。
「……君?」
カメオが会員全員を会議室へ招集したが、誰一人、その場に現れない。
横にいた秘書に尋ねたが、彼も首を降るばかりである。
「分かりかねます」
「分かりませんでは、困るよ」
「そう仰られましても……。会の方全員に、漏れ無く、すぐ来るように伝えております」
「直接伝えているか?」
「ええ、勿論」
「では、何故誰も現れない?」
「私には分かりかねます」
「……ぐっ」
10分、20分と待つが、誰一人現れない。
「……もういい!」
「えっ」
ついにしびれを切らし、カメオは席を立った。
「君が代わりにやりなさい!」
「え? いや、む、無理です!」
「無理でも何でも、やるんだ! 君が議長だ!」
「そんな! 私にはとても……」
困り果てる秘書に背を向け、カメオは会議室を出て行った。
あらゆる手を失い、カメオは追い詰められていた。
「もういい加減にしてくれ……! 私が何をしたと!?」
彼自身も精神的に行き詰まりつつあり、私室へ戻る途中ずっと、ブツブツとつぶやき続けていた。
「忌々しい……! 何もかも忌々しい!
もうこれ以上、私に責任を負わせないでくれ!」
どうにか私室の前に到着し、カメオはドアノブに手をかけた。
だが、やけに手応えが軽い。回してみても、カラカラと音がするばかりである。
「何だ……? 壊れているのか? ……くそっ」
何度か回してみるが、ドアが開くような気配は無い。
「おい、誰か……」
誰かに開けさせようと、カメオはドアに背を向け、声を上げかけた。
その瞬間――ドアの向こうから、ぱす、と音を立てて、何かが突き抜けてきた。
「……が、は?」
大きく広げた口から、赤い塊が飛び散る。自分の足元に目を向けると、自分の腹部から、まるで滝のように血が流れ出ていた。
「……な……んだ……これ……っ」
ぐら、とカメオの体が揺れ、その場に崩れ落ちる。
「……」
音もなく、ドアが開く。
「……ごぼっ……、こ……こ……これは……いったい……」
ドアの向こうに立っていた者は、静かにカメオを見下ろしている。
「……」
と、右手に持っていた拳銃を、カメオの頭に向ける。
「……っ……ぁ……ぇ……」
それを目にし、カメオがもがく。どうやら逃げようとしているらしかったが、既にその四肢に力は無く、かくかくと揺れているだけだ。
「……」
消音装置が装着された拳銃から、ぱす、ぱすと乾いた音を立てて弾丸が発射される。
「がっ……」
その直後、カメオはピクリとも動かなくなった。
その体を二、三度蹴り、何の反応も示さないのを見て、男はぽつりとつぶやく。
「死亡、確認した」
ドアの向こうにいた男は、そのままドアの向こうに消えた。
30分後、カメオ・タイムズ第20代天帝教教皇が暗殺されたことがマーソル全体に伝わり、僧侶たちにも、そして各国要人たちにも衝撃が走った。
「何だと……!? 教皇が!?」
「い、一体どうして!?」
騒ぐ一方で、誰からとも無く、こんなつぶやきが漏れた。
「……まさか、誰かが」
「だ、誰かだと? なっ、何のことだ?」
「あまりにも、タイミングが異様ではないか……。まるでここにいる誰かが」
「誰かが、密かに暗殺者を差し向けた、……と言うのか」
「……」
つい先程まで騒々しかった彼らは、一瞬のうちに静まり返った。
「……だ、だが」
そしてまた、一人がぽつりとこぼす。
「何のために?」
「……分からん……」
「そもそも、我々がやったとは……」
「……うむ」
結局、これ以上滞在すれば、逆に自分たちが疑われかねない状況になったために、要人たちは詰問を切り上げ、そそくさと帰国していった。
議長を含めた全会員の所在が不明となったこと、そして、これまで強固に存続を支持し続けていたカメオが死亡したことにより、「天政会」は事実上の解散となった。
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会の破綻。
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会の代表者がいなくなったとは言え、依然として各国要人たちはマーソルに陣取っている。何らかの回答をせねばならず、「天政会」は急遽、次の議長を決めなければならなかった。
しかし――。
「……君?」
カメオが会員全員を会議室へ招集したが、誰一人、その場に現れない。
横にいた秘書に尋ねたが、彼も首を降るばかりである。
「分かりかねます」
「分かりませんでは、困るよ」
「そう仰られましても……。会の方全員に、漏れ無く、すぐ来るように伝えております」
「直接伝えているか?」
「ええ、勿論」
「では、何故誰も現れない?」
「私には分かりかねます」
「……ぐっ」
10分、20分と待つが、誰一人現れない。
「……もういい!」
「えっ」
ついにしびれを切らし、カメオは席を立った。
「君が代わりにやりなさい!」
「え? いや、む、無理です!」
「無理でも何でも、やるんだ! 君が議長だ!」
「そんな! 私にはとても……」
困り果てる秘書に背を向け、カメオは会議室を出て行った。
あらゆる手を失い、カメオは追い詰められていた。
「もういい加減にしてくれ……! 私が何をしたと!?」
彼自身も精神的に行き詰まりつつあり、私室へ戻る途中ずっと、ブツブツとつぶやき続けていた。
「忌々しい……! 何もかも忌々しい!
もうこれ以上、私に責任を負わせないでくれ!」
どうにか私室の前に到着し、カメオはドアノブに手をかけた。
だが、やけに手応えが軽い。回してみても、カラカラと音がするばかりである。
「何だ……? 壊れているのか? ……くそっ」
何度か回してみるが、ドアが開くような気配は無い。
「おい、誰か……」
誰かに開けさせようと、カメオはドアに背を向け、声を上げかけた。
その瞬間――ドアの向こうから、ぱす、と音を立てて、何かが突き抜けてきた。
「……が、は?」
大きく広げた口から、赤い塊が飛び散る。自分の足元に目を向けると、自分の腹部から、まるで滝のように血が流れ出ていた。
「……な……んだ……これ……っ」
ぐら、とカメオの体が揺れ、その場に崩れ落ちる。
「……」
音もなく、ドアが開く。
「……ごぼっ……、こ……こ……これは……いったい……」
ドアの向こうに立っていた者は、静かにカメオを見下ろしている。
「……」
と、右手に持っていた拳銃を、カメオの頭に向ける。
「……っ……ぁ……ぇ……」
それを目にし、カメオがもがく。どうやら逃げようとしているらしかったが、既にその四肢に力は無く、かくかくと揺れているだけだ。
「……」
消音装置が装着された拳銃から、ぱす、ぱすと乾いた音を立てて弾丸が発射される。
「がっ……」
その直後、カメオはピクリとも動かなくなった。
その体を二、三度蹴り、何の反応も示さないのを見て、男はぽつりとつぶやく。
「死亡、確認した」
ドアの向こうにいた男は、そのままドアの向こうに消えた。
30分後、カメオ・タイムズ第20代天帝教教皇が暗殺されたことがマーソル全体に伝わり、僧侶たちにも、そして各国要人たちにも衝撃が走った。
「何だと……!? 教皇が!?」
「い、一体どうして!?」
騒ぐ一方で、誰からとも無く、こんなつぶやきが漏れた。
「……まさか、誰かが」
「だ、誰かだと? なっ、何のことだ?」
「あまりにも、タイミングが異様ではないか……。まるでここにいる誰かが」
「誰かが、密かに暗殺者を差し向けた、……と言うのか」
「……」
つい先程まで騒々しかった彼らは、一瞬のうちに静まり返った。
「……だ、だが」
そしてまた、一人がぽつりとこぼす。
「何のために?」
「……分からん……」
「そもそも、我々がやったとは……」
「……うむ」
結局、これ以上滞在すれば、逆に自分たちが疑われかねない状況になったために、要人たちは詰問を切り上げ、そそくさと帰国していった。
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