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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第7部

    白猫夢・再悩抄 2

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    麒麟を巡る話、第354話。
    人形との稽古。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「よし、今度はラッシュだ!」「分かりました」
     フィオの命令に従い、パラは木刀を構え、間合いを詰める。
    「やあッ! それッ! りゃあッ!」
     パラが打ち込んでくる打撃、斬撃をかわしつつ、フィオが切り返す。
    「パラ! もっと踏み込んできてくれ!」「はい」
     フィオの命令通りに、パラは一際速く打ち込む。
    「ふん……ッ!」
     普通の人間であれば反応しきれないようなその一撃を、フィオはなんと白刃取りし、左に受け流す。
     同時に、体全体で円を描くように右脚を上げ、足先をパラの眼前に突きつけた。
    「素晴らしい腕前です」
    「……ありがとう」
     パラの木刀から手を離し、フィオは剣を収める。
    「今日はこのくらいにしよう。もう大分、暗くなってきたし」
    「はい」
     それを受けて、パラも納刀する。
    「……あ、あのさ」
    「なんでしょう」
     フィオが口を開きかけたが、途中で止まる。
    「……あー、……いや、なんでもない。帰ろうか」
    「はい」

     帰路についたところで、フィオが再度、口を開く。
    「その……、どう、かな」
    「どう、と申しますと」
    「僕の腕は、上がっただろうか」
    「本日のわたくしの出力は全速の85%、時速約180キロでございます。それに対応していることから、少なくともこの国の特殊部隊レベルの実力を備えていると比較できます。
     わたくしと訓練を始めた頃と比較すれば、飛躍的な上達と言えるでしょう」
    「上達したって言ってもらえるのはうれしいけど、……基準がよく分からないな」
    「ちなみに主様は、わたくしの出力130%、時速約270キロでの稼働にも対応していらっしゃいます。
     もっともオーバードライブ(想定された限界・基準点を超えての、過度の運用)であったため、わたくしの方が15秒程度しか稼働できず、主様がその速度に長時間対応できるかどうかは、判断いたしかねますが」
    「うへぇ……。改めて思うよ、ルナさんは人間離れしてるなって」
    「同感です。あまつさえ、主様はわたくしがその水準に達することを望んでいらっしゃいます。婉曲的に、わたくしに人間になってほしいと願っていらっしゃるようです」
    「ん? 人間離れしてるって……、なのに、人間に?」
    「主様の持論によれば、人間を超えられるのは元々人間であった者だけだ、とのことです」
    「屈折してるなぁ」
    「同感です。困った主様です」
     いつも無表情のパラが、珍しく呆れたような顔を見せる。
    「……はぁ」
     それを見たフィオが、小さくため息をついた。
    「どうされました」
    「あ、いや。……いいなって」
    「いいな、と申しますと」
    「僕が何を言ってもパラは表情を変えないのに、ルナさんのことになると、コロコロ変わるなって。ちょっと、うらやましいよ」
    「左様ですか」
     フィオの言葉に対し、パラはいつものように、無表情だった。
    「……はぁ。どうしたら僕は、君の表情を変えられるんだろうか」
    「分かりかねます」
    「だろうね……」
     フィオが黙りこみ、無言になったところで、今度はパラがしゃべり出す。
    「フィオ。何か好物はありますか」
    「へ?」
    「お疲れのご様子なので、気晴らしになればと思いまして。本日の夕食に参加していただければ、用意します」
    「作ってくれるの? うーん、……でもなぁ」
    「どうされました」
    「好きな物はあるんだけど、晩ご飯向けじゃないんだよな」
    「何でしょうか」
    「……チョコバナナクレープ。生クリームがたっぷり入ってるやつ」
     顔を赤くし、ぼそっと答えたフィオに、パラは小さくうなずいて見せた。
    「分かりました。夕食とは別に、デザートとして用意します」
    「いいの?」
    「フィオに喜んでもらえるのであれば」
    「ありがとう、パラ」
     フィオは嬉しそうに、パラに笑いかけた。

     と――パラに振り向いたところで、その向こう側を、銀髪の狼獣人が泣きながら走っているのが視界に入った。
    「……ん? なんだあれ?」
    「分かりかねます」
     そしてその後ろを、マークが血相を変えて追っているのに気付く。
    「マークだ」
    「そうですね」
    「何してるんだろう?」
    「分かりかねます」
    「……追いかけてみようか」
    「ええ」
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