「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第7部
白猫夢・再悩抄 4
麒麟を巡る話、第356話。
チーム「フェニックス」。
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4.
ルナから自律人形パラについての話と、ついでにフィオの正体が未来人であることを聞かされたシャランは、若干戸惑った様子を見せながらも、素直に信じてくれた。
「ちょっとビックリしちゃう話ばかりでしたけど……、でも、はい。
確かにパラさんは見た感じ、人間じゃないみたいですし、フィオ先輩もゼミに居た頃、ずっと浮世離れしてるなーって思ってましたし、信じます」
「信じちゃうの!? そんなあっさり!?」
マークが目を丸くしていたが、ルナは構わず話を続ける。
「ありがとう、話が早いわ。
で、ここからが本題だけど、今ね、あたしたちの共同研究ははっきり言って、行き詰まってるのよ。残念ながら、再生医療術はマークが独自構築した地点から、ほとんど進んでいないわ。精々、皮膚と筋肉が形成できるようになっただけ。
神経が無いから動かすこともできないし、血管や骨もまともに造れないから、造っても元地が無ければ、そう長くないうちに腐る。
被験者第1号であるプレタ、……王妃への施術は、右頬と右耳部分の成功に留まってるのが現状よ」
「そうなんですか……」
しょんぼりとした顔になったシャランに、今度はマークが声をかけようとする。
「……で、でもですね、もしここでシャランさんが協力してくれたら……」「黙ってて、マーク。あたしが話をしてるの」「……す、すみません」
マークが顔を背けたところで、ルナが再度、話を続けた。
「ま、そう言う話よ。あなたも天狐ゼミ、卒業してきたんでしょ?」
「はい。テンコちゃんからは『優』評価をいただきました」
「すごいじゃない。それならなおさら、『フェニックス』に欲しくなったわ」
「ふぇ、……え?」
聞き返したマークに、ルナはフン、と鼻を鳴らす。
「あたしたちのチーム名よ。チーム『フェニックス』。再生医療魔術研究チームよ」
「チーム名なんて初めて聞いたぞ……?」
「左様でございますね」
フィオとパラも、寝耳に水、と言いたげな顔をしている。
それを受けて、ルナはこう言い放った。
「今決めたわ。文句ある?」
「いや、別に」
「異存ありません」
フィオたちは素直にうなずいて返すが、マークだけは反論しようとする。
「……ちょっとくらい……僕の名前が入ってもいいんじゃ、とは……」「何か言った?」「……いえ」
マークが再度黙り込んだところで、ルナはシャランに手を差し出した。
「そう言うわけで、シャラン・ネールちゃん。うちのチームに来ない?」
「はい!」
二つ返事で、シャランはこの申し出を受けた。
話がまとまった後も、マークはブツブツと文句を言っていた。
「なんでルナさん、僕を無視してあれこれ決めるのかなぁ……。僕、共同研究者なのに」
そこへ、フィオがやって来る。
「気持ちは分かるけど、リーダーはルナさんだ。諦めた方がいい」
「……納得行かないなぁ」
「いやいや、あの姉御肌っぷりと跳ね回るような話術、僕やパラを凌駕する腕っ節、謎に満ちた人生経験、……どれを取っても君が勝てる要素、あるか?」
「無いけどさぁ……」
「ま、もう気にしない方がいいよ。
例え君が『僕がボスだ! リーダーなんだ!』って怒鳴り散らしていばっても、ルナさんはきっと『はーいはい、分かったわよ、ボ・ス・ちゃん★』つって、ケラケラ笑いながら流してくるぜ、きっと」
「……ありありと想像できてしまった自分が情けないよ」
マークがしゅんとしたところで、フィオが耳打ちする。
(ま、落ち込むなって。明日から君、カノジョと一緒に研究するんだろ? オトコがそんな情けない格好、見せてどうするんだ)
「……あー……」
マークは振り返り、パラと話しているシャランを肩越しに覗き見た。
「頑張れって、マーク。確かにルナさんからの扱いはぞんざいかも知れないけど、すごいことをやってるってことに変わりは無いんだぜ? 僕はあんまり研究室に入らないけど、それでも他の研究者が、君を尊敬してるのは分かってる。
もっと君、自信持っていいって」
「……うん」
マークは多少顔をひきつらせつつも、ニッと笑って見せた。
「ま、……うん、頑張るよ。そのうちルナさんの鼻を明かしてやる」
「その意気だ。期待してるぜ」
こうしてマークたちのチーム――「フェニックス」に、心強い研究者が加わった。
白猫夢・再悩抄 終
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チーム「フェニックス」。
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ルナから自律人形パラについての話と、ついでにフィオの正体が未来人であることを聞かされたシャランは、若干戸惑った様子を見せながらも、素直に信じてくれた。
「ちょっとビックリしちゃう話ばかりでしたけど……、でも、はい。
確かにパラさんは見た感じ、人間じゃないみたいですし、フィオ先輩もゼミに居た頃、ずっと浮世離れしてるなーって思ってましたし、信じます」
「信じちゃうの!? そんなあっさり!?」
マークが目を丸くしていたが、ルナは構わず話を続ける。
「ありがとう、話が早いわ。
で、ここからが本題だけど、今ね、あたしたちの共同研究ははっきり言って、行き詰まってるのよ。残念ながら、再生医療術はマークが独自構築した地点から、ほとんど進んでいないわ。精々、皮膚と筋肉が形成できるようになっただけ。
神経が無いから動かすこともできないし、血管や骨もまともに造れないから、造っても元地が無ければ、そう長くないうちに腐る。
被験者第1号であるプレタ、……王妃への施術は、右頬と右耳部分の成功に留まってるのが現状よ」
「そうなんですか……」
しょんぼりとした顔になったシャランに、今度はマークが声をかけようとする。
「……で、でもですね、もしここでシャランさんが協力してくれたら……」「黙ってて、マーク。あたしが話をしてるの」「……す、すみません」
マークが顔を背けたところで、ルナが再度、話を続けた。
「ま、そう言う話よ。あなたも天狐ゼミ、卒業してきたんでしょ?」
「はい。テンコちゃんからは『優』評価をいただきました」
「すごいじゃない。それならなおさら、『フェニックス』に欲しくなったわ」
「ふぇ、……え?」
聞き返したマークに、ルナはフン、と鼻を鳴らす。
「あたしたちのチーム名よ。チーム『フェニックス』。再生医療魔術研究チームよ」
「チーム名なんて初めて聞いたぞ……?」
「左様でございますね」
フィオとパラも、寝耳に水、と言いたげな顔をしている。
それを受けて、ルナはこう言い放った。
「今決めたわ。文句ある?」
「いや、別に」
「異存ありません」
フィオたちは素直にうなずいて返すが、マークだけは反論しようとする。
「……ちょっとくらい……僕の名前が入ってもいいんじゃ、とは……」「何か言った?」「……いえ」
マークが再度黙り込んだところで、ルナはシャランに手を差し出した。
「そう言うわけで、シャラン・ネールちゃん。うちのチームに来ない?」
「はい!」
二つ返事で、シャランはこの申し出を受けた。
話がまとまった後も、マークはブツブツと文句を言っていた。
「なんでルナさん、僕を無視してあれこれ決めるのかなぁ……。僕、共同研究者なのに」
そこへ、フィオがやって来る。
「気持ちは分かるけど、リーダーはルナさんだ。諦めた方がいい」
「……納得行かないなぁ」
「いやいや、あの姉御肌っぷりと跳ね回るような話術、僕やパラを凌駕する腕っ節、謎に満ちた人生経験、……どれを取っても君が勝てる要素、あるか?」
「無いけどさぁ……」
「ま、もう気にしない方がいいよ。
例え君が『僕がボスだ! リーダーなんだ!』って怒鳴り散らしていばっても、ルナさんはきっと『はーいはい、分かったわよ、ボ・ス・ちゃん★』つって、ケラケラ笑いながら流してくるぜ、きっと」
「……ありありと想像できてしまった自分が情けないよ」
マークがしゅんとしたところで、フィオが耳打ちする。
(ま、落ち込むなって。明日から君、カノジョと一緒に研究するんだろ? オトコがそんな情けない格好、見せてどうするんだ)
「……あー……」
マークは振り返り、パラと話しているシャランを肩越しに覗き見た。
「頑張れって、マーク。確かにルナさんからの扱いはぞんざいかも知れないけど、すごいことをやってるってことに変わりは無いんだぜ? 僕はあんまり研究室に入らないけど、それでも他の研究者が、君を尊敬してるのは分かってる。
もっと君、自信持っていいって」
「……うん」
マークは多少顔をひきつらせつつも、ニッと笑って見せた。
「ま、……うん、頑張るよ。そのうちルナさんの鼻を明かしてやる」
「その意気だ。期待してるぜ」
こうしてマークたちのチーム――「フェニックス」に、心強い研究者が加わった。
白猫夢・再悩抄 終
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第7部、終了です。
前半部(双月暦541~548年)から時代も、主要登場人物も入れ替わり、いよいよ後半戦が本格的に始まりました。
最近、前半部を読み返してみたんですが、後半部の展開のハードさに比べて、
秋也の冒険の、なんとのんきなことか。
確かに波瀾万丈、獅子奮迅のスペクタクルではありますが、
後半部のシリアス展開に比べ、どこか楽しげな部分もありました。
改めて思うに、第7部は「遊び」が少ない。
もうちょっとキャラを楽しませても良かったんじゃないかと言う気がします。
人によってはそれを冗長的と言うかも知れませんが。
第8部は恐らく、4月半ばから末くらいに開始できると思います。
次回はようやく、あの人の登場です。ちょっとだけですが。
第7部、終了です。
前半部(双月暦541~548年)から時代も、主要登場人物も入れ替わり、いよいよ後半戦が本格的に始まりました。
最近、前半部を読み返してみたんですが、後半部の展開のハードさに比べて、
秋也の冒険の、なんとのんきなことか。
確かに波瀾万丈、獅子奮迅のスペクタクルではありますが、
後半部のシリアス展開に比べ、どこか楽しげな部分もありました。
改めて思うに、第7部は「遊び」が少ない。
もうちょっとキャラを楽しませても良かったんじゃないかと言う気がします。
人によってはそれを冗長的と言うかも知れませんが。
第8部は恐らく、4月半ばから末くらいに開始できると思います。
次回はようやく、あの人の登場です。ちょっとだけですが。



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双月千年世界 1;蒼天剣

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~ Comment ~
NoTitle
あの人が出るんですか!
あの人……。
登場人物が多すぎて絞り込めないщ(゜゜щ☆\(^^;
あの人……。
登場人物が多すぎて絞り込めないщ(゜゜щ☆\(^^;
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NoTitle
今回はなかなか出番が回ってきませんでした。