「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第8部
白猫夢・訪賢抄 3
麒麟を巡る話、第364話。
魔女の不穏な動き。
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3.
「その賢者様が、この研究所に何の用なの?」
研究所に通されたモールは、ルナにこう切り出した。
「なに、要件は2つさ。大したコトじゃないね」
「2つ?」
「1つは、君たちが研究してる、再生医療術についての助言を申し出たいんだけどね」
「……!」
ルナの横で話を伺っていたマークは、目を丸くした。
「あなたが?」「マーク、黙ってて」
一方、ルナは険しい表情を崩さない。
「話をする前に、確認したいことがあるわ」
「分かってるってね。私が本当の本当に、賢者モールかどうかってことだろ?」
「分かってるなら証拠を見せ」
と、途中でルナの言葉が切れる。
次の瞬間、モールの魔杖とルナの刀とが、応接机の上で交錯していた。
「……やるね。このスピードに付いてくるか。目一杯加速したつもりなんだけどね」
「うわさに聞いてた通りの剣呑ぶりね」
何が起こったのか分からず、マークは一瞬、呆気に取られる。
が、机の上に置いてあったコーヒーが、いつの間にかモールの三角帽子と共に、壁に張り付いているのに気付き、ぶるっと身震いした。
「とりあえず、コーヒーは元に戻しとくね」
モールはルナから離れ、杖をかざす。
「『ウロボロスポール:リバース』」
瞬時に、壁に撒かれたコーヒーと三角帽子が、それぞれ元の位置に戻る。
「これが証拠と言うわけね?」
「ちょいと乱暴だけどもね。結果的にゃ被害なしだしね」
「いいわ。とりあえず信用するわ。
で、何であなたがあたしたちの手伝いを?」
「要件の2つ目の報酬ってとこだね」
「そう。それで、2つ目は?」
「ちょっとした調査依頼だね」
「うちは探偵事務所じゃないわよ」
「知ってるってね。最初は友達に協力してもらおうと思ったんだけどね、その友達がケチ臭くってね。君も知ってるよね、そいつのどケチっぷりはね?」
「……ああ。何となく分かったわ。で、その『友達』に断られたところで、その友達の弟子であるあたしの師匠から、ここを紹介されたってところでしょ」
「大正解だね」
モールはニヤッと笑い、こう続けた。
「実はここ1年ほど、央中で気になるヤツらを目にしてるんだよね。
ひらっひらのドレスを着た、一見ふつーの人間っぽい、だけど明らかに人間とは違うヤツをね」
「……!」
モールのこの言葉に、ルナとマークは顔を見合わせた。
「実は君に依頼する理由は、ソレもあるんだよね。ま、先に出会っちゃったけども」
「パラのこと?」
「そう。君にとっちゃ可愛いお人形ちゃんだね。
で、あの子にそっくりな人形が、央中各地をうろついてるんだよね。今まで確認したところでは、2体。黒と赤のドレスと、もう一方は黒と青だね。
そのうち1体と接触したけども、こっちの質問に一言も答えず、いきなり襲いかかって来た上に、どさくさに紛れてソイツは消えちゃったんだよね。
分かってると思うけども、あの人形はただの人形じゃないね。人と見紛う高性能ゴーレム、克難訓の忠実なる下僕であり、敵を見逃さぬ猟犬であり、そして千人力の騎士だ。
重ねて分かってるだろうけども、難訓は……」
「人に知られることを嫌う、でしょ? その『隠れたがり』が人形を動かしまくってるってことは……」
「ああ。何かを企んでるっぽいんだよね。
だけども克のヤツ、『すまんが別の件で忙しい。不確実な情報ではそちらに手は回せん、な』つって、調査協力を断りやがったんだよね。ついでにアンタの師匠もね」
「ふうん……? あの『悪魔』や師匠が忙殺されるような件ってのが、気になるところだけど……」
「私の知ったこっちゃないね。後で自分で聞いてみた方が早いと思うね」
「そうさせてもらうわ。
で、アンタの依頼だけど、受けるわ。そのパラそっくりの人形も気になるし、こっちの研究に、伝説の『賢者』が協力してくれるって言うなら、願ってもない話だもの」
「どーも。んじゃ、前払いってコトで、ちょこっと研究室を見させてもらおうかね」
モールは「よっこいしょー」とうめきながら、ソファから立ち上がった。
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魔女の不穏な動き。
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3.
「その賢者様が、この研究所に何の用なの?」
研究所に通されたモールは、ルナにこう切り出した。
「なに、要件は2つさ。大したコトじゃないね」
「2つ?」
「1つは、君たちが研究してる、再生医療術についての助言を申し出たいんだけどね」
「……!」
ルナの横で話を伺っていたマークは、目を丸くした。
「あなたが?」「マーク、黙ってて」
一方、ルナは険しい表情を崩さない。
「話をする前に、確認したいことがあるわ」
「分かってるってね。私が本当の本当に、賢者モールかどうかってことだろ?」
「分かってるなら証拠を見せ」
と、途中でルナの言葉が切れる。
次の瞬間、モールの魔杖とルナの刀とが、応接机の上で交錯していた。
「……やるね。このスピードに付いてくるか。目一杯加速したつもりなんだけどね」
「うわさに聞いてた通りの剣呑ぶりね」
何が起こったのか分からず、マークは一瞬、呆気に取られる。
が、机の上に置いてあったコーヒーが、いつの間にかモールの三角帽子と共に、壁に張り付いているのに気付き、ぶるっと身震いした。
「とりあえず、コーヒーは元に戻しとくね」
モールはルナから離れ、杖をかざす。
「『ウロボロスポール:リバース』」
瞬時に、壁に撒かれたコーヒーと三角帽子が、それぞれ元の位置に戻る。
「これが証拠と言うわけね?」
「ちょいと乱暴だけどもね。結果的にゃ被害なしだしね」
「いいわ。とりあえず信用するわ。
で、何であなたがあたしたちの手伝いを?」
「要件の2つ目の報酬ってとこだね」
「そう。それで、2つ目は?」
「ちょっとした調査依頼だね」
「うちは探偵事務所じゃないわよ」
「知ってるってね。最初は友達に協力してもらおうと思ったんだけどね、その友達がケチ臭くってね。君も知ってるよね、そいつのどケチっぷりはね?」
「……ああ。何となく分かったわ。で、その『友達』に断られたところで、その友達の弟子であるあたしの師匠から、ここを紹介されたってところでしょ」
「大正解だね」
モールはニヤッと笑い、こう続けた。
「実はここ1年ほど、央中で気になるヤツらを目にしてるんだよね。
ひらっひらのドレスを着た、一見ふつーの人間っぽい、だけど明らかに人間とは違うヤツをね」
「……!」
モールのこの言葉に、ルナとマークは顔を見合わせた。
「実は君に依頼する理由は、ソレもあるんだよね。ま、先に出会っちゃったけども」
「パラのこと?」
「そう。君にとっちゃ可愛いお人形ちゃんだね。
で、あの子にそっくりな人形が、央中各地をうろついてるんだよね。今まで確認したところでは、2体。黒と赤のドレスと、もう一方は黒と青だね。
そのうち1体と接触したけども、こっちの質問に一言も答えず、いきなり襲いかかって来た上に、どさくさに紛れてソイツは消えちゃったんだよね。
分かってると思うけども、あの人形はただの人形じゃないね。人と見紛う高性能ゴーレム、克難訓の忠実なる下僕であり、敵を見逃さぬ猟犬であり、そして千人力の騎士だ。
重ねて分かってるだろうけども、難訓は……」
「人に知られることを嫌う、でしょ? その『隠れたがり』が人形を動かしまくってるってことは……」
「ああ。何かを企んでるっぽいんだよね。
だけども克のヤツ、『すまんが別の件で忙しい。不確実な情報ではそちらに手は回せん、な』つって、調査協力を断りやがったんだよね。ついでにアンタの師匠もね」
「ふうん……? あの『悪魔』や師匠が忙殺されるような件ってのが、気になるところだけど……」
「私の知ったこっちゃないね。後で自分で聞いてみた方が早いと思うね」
「そうさせてもらうわ。
で、アンタの依頼だけど、受けるわ。そのパラそっくりの人形も気になるし、こっちの研究に、伝説の『賢者』が協力してくれるって言うなら、願ってもない話だもの」
「どーも。んじゃ、前払いってコトで、ちょこっと研究室を見させてもらおうかね」
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