「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
白猫夢番外編 その4
麒麟を巡る話、の補完。
パワースケール。
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白猫夢番外編 その4
「ところでパラ」
「なんでしょう」
フィオはパラに、こんな質問をした。
「MPPって何? モールさんを見た時、そんなこと言ってたような気がするけど」
「Magic Power Pressureの略称です」
「何それ?」
「魔力の単位だよ」
と、話の輪にマークが加わる。
「魔術研究でよく使う単位だ。実戦用の魔術を教えてるようなところでは、あんまり使わないかも知れない。
でも君、テンコちゃんのところで神器の研究してたんじゃなかったっけ?」
「ああ、そう言われてみれば一応、聞いたかも知れない。
……実は卒論、ギリギリ『可』だったんだ。テンコちゃんには『ゼミの方は本来の目的じゃないだろーし、コレで許してやるけどさ、お情けで出してやったってのを忘れんなよ』って怒られた」
「そうだったんだ。道理でこっちの研究に口出ししないと思ったよ」
マークに驚かれ、フィオは顔を赤くしてうつむく。
「……ごめん」
「いや、いいんだ。別方面で助かってるし。
それで、何でそんな話に?」
「ああ、そうそう。実は今日の夕方、パラがモールさんを見た時、彼女が11000MPPを計測したって……」
「え……、いっ、11000!?」
その値を聞くなり、マークは声を上げて驚いた。
「何それ、人ひとりから出てたの!? そんなめちゃくちゃな数値、聞いたこと無いよ!?」
「わたくしも人間に対して1万以上を計測したのは、今回を含めて3回しかありません」
「3回? モールさんと、後は?」
「克大火様にお目見えした時です。他一名につきましては説明を省かせていただきます」
「タイカ・カツミ氏か……。それくらいはあってもおかしくないだろうね」
目を丸くしているマークに、フィオが尋ねる。
「そんなにすごいのか?」
「すごいって言うか、まずあり得ないって言うか。
普通の、魔術の素質がないとされる人間が、1~2、3くらい。ちょっと素質があって、簡単な魔術が使えるような人だと、20~30くらいなんだ。僕でも80後半か、90ちょっと。
魔術師がよく使う魔杖は、安物でも大抵、100くらいの魔力がある。最大出量の公式記録は央中のルピア・ネール記念高炉に使われてる巨大魔法陣が一基あたり、平均で3000くらい、全部合わせて4~5万くらいだったはずだ。あと、央南の英雄が使ってた何とかって刀は、1~2000くらいの出力を記録したって話もある。
1万とか、そんな高出力の魔力が発揮できるような武器や装置は存在しないはずだよ。ましてや人間一人が、そんな無茶苦茶な数値を叩き出すなんて……」
「だからパラが騒いでたのか。高炉に匹敵する魔力が集まってたら、そりゃ騒ぐな」
「ご心配をおかけしました」
ぺこっと頭を下げたパラに、フィオは笑いかける。
「いいよ、僕のためにやってくれたんだろうし。
……じゃあさ、例えば僕はいくつくらいなの?」
「計測します」
パラはじっとフィオを見つめ、間を置いて答えた。
「180~200です」
「へぇ、マークより多いんだ。パラ自身はどうなの?」
「定格出力、500とされています」
「ぶっ……、倍以上じゃないか。互角くらいかなと思ったのにな」
「総合力を鑑みれば、互角と思われます」
「まあ、いいか。……じゃあ、ルナさんは? ものすごく高そうだけど」
尋ねたフィオに対し、パラはとんでもない値を返した。
「これまで計測した中で最大の出力は、3228.55です」
「えっ」
「3228.55です。
わたくしの6.46倍、フィオの16.99倍です。ちなみに総合力から比較した場合、主様の実力はフィオの49.16倍であろうと予想されます」
「……そっか」
フィオは愕然とした顔で黙り込み、がっくりと肩を落とす。
「道は遠いね……」
ぼそ、とつぶやいたマークに、フィオはうつむいたまま、「ああ……」と返した。
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白猫夢番外編 その4
「ところでパラ」
「なんでしょう」
フィオはパラに、こんな質問をした。
「MPPって何? モールさんを見た時、そんなこと言ってたような気がするけど」
「Magic Power Pressureの略称です」
「何それ?」
「魔力の単位だよ」
と、話の輪にマークが加わる。
「魔術研究でよく使う単位だ。実戦用の魔術を教えてるようなところでは、あんまり使わないかも知れない。
でも君、テンコちゃんのところで神器の研究してたんじゃなかったっけ?」
「ああ、そう言われてみれば一応、聞いたかも知れない。
……実は卒論、ギリギリ『可』だったんだ。テンコちゃんには『ゼミの方は本来の目的じゃないだろーし、コレで許してやるけどさ、お情けで出してやったってのを忘れんなよ』って怒られた」
「そうだったんだ。道理でこっちの研究に口出ししないと思ったよ」
マークに驚かれ、フィオは顔を赤くしてうつむく。
「……ごめん」
「いや、いいんだ。別方面で助かってるし。
それで、何でそんな話に?」
「ああ、そうそう。実は今日の夕方、パラがモールさんを見た時、彼女が11000MPPを計測したって……」
「え……、いっ、11000!?」
その値を聞くなり、マークは声を上げて驚いた。
「何それ、人ひとりから出てたの!? そんなめちゃくちゃな数値、聞いたこと無いよ!?」
「わたくしも人間に対して1万以上を計測したのは、今回を含めて3回しかありません」
「3回? モールさんと、後は?」
「克大火様にお目見えした時です。他一名につきましては説明を省かせていただきます」
「タイカ・カツミ氏か……。それくらいはあってもおかしくないだろうね」
目を丸くしているマークに、フィオが尋ねる。
「そんなにすごいのか?」
「すごいって言うか、まずあり得ないって言うか。
普通の、魔術の素質がないとされる人間が、1~2、3くらい。ちょっと素質があって、簡単な魔術が使えるような人だと、20~30くらいなんだ。僕でも80後半か、90ちょっと。
魔術師がよく使う魔杖は、安物でも大抵、100くらいの魔力がある。最大出量の公式記録は央中のルピア・ネール記念高炉に使われてる巨大魔法陣が一基あたり、平均で3000くらい、全部合わせて4~5万くらいだったはずだ。あと、央南の英雄が使ってた何とかって刀は、1~2000くらいの出力を記録したって話もある。
1万とか、そんな高出力の魔力が発揮できるような武器や装置は存在しないはずだよ。ましてや人間一人が、そんな無茶苦茶な数値を叩き出すなんて……」
「だからパラが騒いでたのか。高炉に匹敵する魔力が集まってたら、そりゃ騒ぐな」
「ご心配をおかけしました」
ぺこっと頭を下げたパラに、フィオは笑いかける。
「いいよ、僕のためにやってくれたんだろうし。
……じゃあさ、例えば僕はいくつくらいなの?」
「計測します」
パラはじっとフィオを見つめ、間を置いて答えた。
「180~200です」
「へぇ、マークより多いんだ。パラ自身はどうなの?」
「定格出力、500とされています」
「ぶっ……、倍以上じゃないか。互角くらいかなと思ったのにな」
「総合力を鑑みれば、互角と思われます」
「まあ、いいか。……じゃあ、ルナさんは? ものすごく高そうだけど」
尋ねたフィオに対し、パラはとんでもない値を返した。
「これまで計測した中で最大の出力は、3228.55です」
「えっ」
「3228.55です。
わたくしの6.46倍、フィオの16.99倍です。ちなみに総合力から比較した場合、主様の実力はフィオの49.16倍であろうと予想されます」
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~ Comment ~
そんな高出力の武器や装置は存在しないはず、というと、人体の耐久力では抑え込むのにも難儀しそうやから、魔力を服のように身にまとっているようなもんなのでしょうか?
最大出力、てなことをいうてるということは、常に最大値を示すわけでもなさそうですけど
ビビらせたろ、と、みせつけるように1万オーバーの値を出してみせたのでしょうか?
最大出力、てなことをいうてるということは、常に最大値を示すわけでもなさそうですけど
ビビらせたろ、と、みせつけるように1万オーバーの値を出してみせたのでしょうか?
- #1902 カテンベ
- URL
- 2014.05/14 08:25
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NoTitle
グリコーゲンとか体脂肪、バッテリーみたいに。
適切な量であれば生命活動や機械の運用に必要不可欠ですが、
過剰に蓄積されれば害になるのは、脂肪と一緒。
モールが計測された時は、平均が11,000を超えていました。
恐らく通常の状態で、この値。
ビビらせようとしたつもりはないはず。……と言いたいところですが、
モールはわりと自己主張が激しい性格なので、
ちょっとくらい威圧してたかも知れません。
なお、モールの魔力最大値がどれくらいを記録するかは、
今のところパラが確認してないので不明です。