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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・騙党抄 5

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    麒麟を巡る話、第372話。
    党首シエナの激昂。

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    5.
     ロンダは葵に言われた通り、医務室で臥せっていたシエナと、付き添っていたイビーザたちに、死体に巻かれていた麻帯を見せた。
    「緑髪の『猫』から見せろと託りまして」
    「……そう」
    「面妖なことに、その『猫』、言うだけ言うとかき消えるように、その場から姿を……」
    「あの子はそう言う子よ」
     適当に応じながら、シエナは麻帯に書かれていた文章を読んだ。



    「白猫党幹部ご一同様へ
     来る5月4日(風曜)、我が白猫党の講演会を、央中における党首閣下および預言者様の思い出の地にて行います。
     皆様お誘い合わせの上、是非、ご参加下さいませ」



    「……これは、どう解釈すればよいのでしょうか」
     尋ねたロンダに、シエナは苛立った目を向ける。
    「ケンカ売ってんのよ。アタシたちの誰からも許可を取らずに、勝手きままに話を進めてる。コレがもし本当に党員なら、厳罰ものよ。いいえ、同志に対してあんな仕打ちをするような輩が、我が白猫党の党員であるわけが無いわ!
     まったく、ふざけてるわ!」
    「ふざけているのはそれだけに留まらんでしょう」
     イビーザもシエナに続き、苦々しげな表情を浮かべて憤る。
    「我が党党員が3名も、あのような形で惨殺され、あまつさえあれほどご大層な方法で送り付けてきたのです。これは宣戦布告ととっても、なんら差支えのないものでしょう」
    「宣戦布告ですと?」
     ロンダは目を丸くし、詳しく尋ねた。
    「一体どこの国が、我々に宣戦布告したと言うのですか?」
    「ソレは分からないわ。でも手紙には、アタシと預言者の思い出の地で講演会を開く、とある。ソコに行けば、確実にいるはずよ」
    「思い出の地、と言うと?」
    「央中で、アタシとあの子との共通の思い出がある場所なんて一箇所しかないわ。
     アタシとあの子が出会った、天狐ゼミのある街――ミッドランドよ」
     シエナはまだ蒼い顔をしつつも立ち上がり、医務室を出て行こうとする。
    「閣下、ご無理は……」「しない方が無理よッ!」
     心配するロンダに、シエナは怒鳴り返した。
    「アタシたち、本物の白猫党を差し置いて勝手きままに遊説するばかりか、こうして党員を殺されたのよ!?
     こんな屈辱を味わわされて、黙って寝てろって言うの!?」
    「そ、それはそうですが」
    「ミゲル・ロンダ司令!」
     シエナはロンダをにらみ、こう命じた。
    「早急に突撃部隊を編成してミッドランドへ向かい、このクソくだらない真似をしてくれた超大馬鹿野郎に鉄槌を下しなさいッ!」
    「か、閣下!」
     それを聞いて、トレッドが慌てて立ち上がる。
    「まさか、央中に兵を送るおつもりですか!?」
    「そうよ!? ソレがどうしたって言うの!?」
    「いくらなんでも、そこまでしてしまっては央中との関係が悪化します! 偽者騒ぎ程度ならともかく、直接的な武力を投入しては……!」
    「アンタは悔しくないの!?」
     シエナは突然、ボタボタと涙を流し始めた。
    「虚仮にされた挙句、同志をこんな無残な目に遭わされて、それでもヘラヘラ笑って構えてろって言うの!? アタシにはそんな選択はできない! そんな行動は執れないわ!」
    「し、しかし」
    「……私は」
     と、ロンダが顔をこわばらせながら、口を開いた。
    「私は、党首閣下のご意見に賛成いたします」
    「き、君まで! 落ち着きたまえ、ね?」
    「いいえ、落ち着いてなど……!」
     ロンダの目からも、つつ……、と涙が流れる。
    「党首閣下の心意気、我が心を強かに打ちました! 必ずやその無念、晴らしてご覧に入れましょうぞ!」
     びしっと敬礼し、涙を流すロンダに、トレッドは絶句するしかなかった。
    「……ありがとう、司令」
     シエナは涙を拭きながら、依然強い口調で、今度はトレッドに命じた。
    「フリオン・トレッド政務部長。これより白猫党の最優先課題は、央中の敵対勢力討伐とします。
     それに併せて、当該業務が円滑に遂行できるよう、白猫党の央中進出も優先して推めなさい」
    「……閣下、ですが、央北内の権力基盤はまだ、完全に安定したわけでは……」「あなたは『預言と党首命令には従う』と言ったはずよね?」「……っ」
     トレッドは終始、苦い顔を見せていたが――やがて、「……承知いたしました」と、諦め気味に答えた。
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