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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・新月抄 4

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    麒麟を巡る話、第377話。
    一人相撲。

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    4.
    「……パラ」
    「何でしょう」
    「今の進捗状況をパーセントで表すとしたら、いくつくらいになる?」
    「16.22%です」
     パラの回答に、フィオはげんなりした声を漏らした。
    「まだ、それだけ?」
    「状況は依然、初期段階にあると言えるでしょう」
    「そっか……」
    「事前に、わたくしの清潔度の基準は一般平均よりも著しく高く設定している、とお伝えしたはずです」
    「う、うん。……そうだったね」
     フィオは内心、軽く呆れつつも、文句を言うことはせず、たんすの上の木箱をどかし、埃(ほこり)を拭おうとする。
    「フィオ」
     と、パラが呼び止める。
    「う、……まだまずかったかな、ここも」
    「はい。
     何度も申し上げました通り、まずは天井に近い箇所から順次、埃と脂(やに)を除去し……」
    「ちょ、ちょっと待ってくれよ? 天井に近いと思うんだけど、ここ」
    「まだたんす背面の壁の埃を払っておりません。そちらからお願いいたします」
    「え? 壁?」
    「微量ながら汚れが付着しております」
    「……あー、うん。……あー、だからまだ16%なのか。部屋の中の壁を全面、やるつもりなんだな?」
    「その通りです。主様は煙草を嗜まれることもあり、当室内の壁は屋内の他の箇所に比べ、平均46.81%程度、特に汚れが強く付着しております。
     わたくしの基準に適う程度まで汚れを除去するには、現状の進捗を鑑みるに、26時間41分を要するでしょう」
    「え……」
     作業時間を聞かされたフィオは内心、苛立ちを覚える。
    「……参考までに聞くけどさ」
    「何でしょう」
    「それ、僕がいなかったらどれくらいの時間になる? もしかしてさ、もっと早かったりするのか?」
     嫌味を込めてぶつけたその質問に、パラは淡々とした口調で答えた。
    「現状を鑑みれば、78.67%程度に短縮が可能です」
    「……あーそうかい、分かったよ」
     フィオははたきを投げ出し、パラに背を向けた。
    「じゃあ一人でやってろよ。付き合いきれない」
    「承知いたしました」
     淡々と返され、フィオはそれ以上怒りをぶつけることもできず、無言で部屋を出た。
    「……」
     残されたパラは、床に捨てられたはたきを手にし、そのまま黙々と作業を再開した。

    (二度とあいつの掃除手伝う、なんて言うもんか。やってられないっての!)
     フィオは怒りに任せ、市街地へ足を向ける。
    (あーあ……、あいつの神経質っぷりを甘く見てたよ、マジで!
     細かすぎるだろ、いくらなんでも!? 人形だのなんだのって言ったって、限度があるっての!
     いや、人形とかそう言うの、関係ないよな!? あれは絶対、あいつ個人の性格だっての! だって僕が……)
     と、大通りに入ったところで、とある店のショーウインドウがフィオの目に留まる。
    「あ」
     そこに展示されているワンピースを見て、フィオの感情は180度引っくり返った。
    (……しまったな。そうだよ、これがあったからパラを誘ったのに。
     いっつもケバケバしいドレス姿だし――微妙に似合ってないし。何考えてんだか、ルナさん――こう言うシンプルなワンピースの方が似合いそうだなって思ってたし、だからここに誘おうと思ってたのに。
     よくよく考えれば悪いことしちゃったよな……。僕がやるって言ったのに、それをほっぽり出して出て行っちゃったし。……バカ過ぎる)
     フィオは踵を返し、研究所へと戻っていった。

     研究所に戻り、フィオは急いでルナの部屋の扉を開く。
    「ごめん、パラ! 僕が悪かっ……」
     謝りかけたところで――フィオの目に、パラと、研究員4名の姿が映った。
    「……え?」
    「ども、ギアト君」
    「パラちゃんが大変そうだったんで、俺たち手伝ってました」
    「ギアト君も手伝いに?」
    「……」
     一片の曇りも見られない研究員たちの笑顔と、そして無表情のパラの目を見て、フィオは形容しがたい苛立ちを覚える。
    「……いいや、別に。なんでも。それじゃ」
     フィオはまた、怒りに任せて出て行った。



     その一時間後――市街地の公園に、頭を抱えたフィオの姿があった。
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