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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・散狐抄 3

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    麒麟を巡る話、第386話。
    千年級の会話;3^2。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「あね……さん……」
     未だ鈴林は剣に貫かれたまま、天狐たちに背を向ける形で壁につながれている。だがそれを助ける余裕は、今の天狐にはなかった。
    「……無傷かよ、クソ」
    「お前の児戯がわたくしに通用すると思ったか」
     天狐の放った電撃は、難訓にほんの少しの傷も付けることはできなかった。
    「力の差を思い知るがいい」
     再び、難訓が魔杖をかざし、魔術を放つ。
    「『ネメシスバルド』」
     大量の魔術の槍が、天狐を目がけて飛んで行く。
    「チッ……!」
     天狐も魔術で盾を作り、それを防ごうと構える。
    「ぐ……ぬ……がっ」
     世界の、どんな魔術師にも到底真似できないほどの硬さ、厚み、そして広さを併せ持ったその魔術の盾は、難訓の放つ槍によって、みるみるうちに削られていく。
    「……ッ!」
     そして盾は粉々になり、残った槍が天狐の体を幾度と無く串刺しにした。
    「ぐふ……っ」
     再度、天狐は体を修復する。
    「おや、もう音を上げるか。やはり話にならぬ、駄作めが」
    「駄作駄作、うっせえんだよ! 何べん言や気が済むんだッ! バカの一つ覚えか、あぁ!?」
     天狐は難訓から離れ、呪文を唱え始めた。
    「こんどはどんな手品を見せるつもりだ」
    「……そうやって高みの見物気取ってやがれ……!」
     呪文を唱え終わり、天狐は鉄扇を掲げ、魔術を放った。
    「オレのとっておきだ……! 『ナインヘッダーサーペント』」
     それに対し、難訓はクスクスと嘲笑う。
    「何がとっておきだと言うのだ。さっき放ったばかりではないか」
     9方向から出現した電撃を、難訓も魔術の盾で受ける。
     だが、その9発が防がれたところで、天狐はニヤリと笑い、こう付け足した。
    「……『:ノナプル』!」
    「なに?」
     これまでずっと見下し、罵倒し続けていた難訓の声に、わずかながらもブレが生じる。
     次の瞬間――またも9発、電撃が難訓めがけて飛んできた。
    「小癪な!」
     難訓は再び、防御術で電撃を防ぐ。
     しかし防いだ途端にまたも、電撃が襲ってくる。
    「ぬう……ッ」
     3度、4度と立て続けに9発ずつ、電撃が襲う。
     始めのうちは余裕綽々(しゃくしゃく)で防いでいた難訓だったが、何度も受けるうち、その魔術の盾は先程の天狐と同様、ボロボロになっていく。
     そして7度めの波状攻撃が、その盾を微塵に砕く。
    「なに……!?」
    「高慢ちきめ」
     天狐はニヤっと笑い、相手にこう言い捨てた。
    「人のコトを小馬鹿にしてっからそう言う目に遭うんだよ、バーカ」
     8度目、9度目の電撃波は何の妨害も受けること無く、難訓に直撃した。

     ブスブスと煙を上げ、その場に倒れた難訓に、天狐は――こちらも相当に疲労しているらしく、尻尾は既に残り1本となっている――フラフラとした足取りで近付く。
    「どうだ、ババア」
    「……クス……」
     引きつり気味ながらも、まだ嘲笑おうとする相手に、天狐は「フン」と鼻を鳴らす。
    「まだなめた態度執ってやがるか。食えねえババアだな」
    「……『9』……か……」
    「あん?」
     白ローブはクスクスと笑い、こう続けた。
    「『3』の自乗……まだお前は……あの人のことを……忘れられぬか……」
    「……そりゃそうだろ」
     天狐は鉄扇の先を、難訓に向けた。
    「アイツを忘れるような恩知らずなヤツは、克一門にゃ一人もいやしねーよ。
     ドレだけあの人は、オレたちを助けてくれたか。ドレだけあの人に、オレたちは救われたか。忘れるコトなんて、絶対あるワケねーよ。
     ……ああ、テメエは違うか。テメエだけが、アイツを裏切ったんだよな。そして巧みに人を動かして、アイツを親父に殺させようとした。
     反吐を吐きたくなるような外道だよな、マジで、テメエは」
    「……クスクス……」
     なおも嘲った笑いを浮かべる難訓に、天狐は再度舌打ちする。
    「ケッ、とことん気にいらねえな。
     今どんな顔してやがるんだ? ボコった今ならどんな術も、テメエ自身にゃかけられねーはずだからな……」
     そうつぶやきながら、天狐は鉄扇の先を、難訓のローブの縁に引っかけた。
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