「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
白猫夢番外編 その5
麒麟を巡る話、に関わってくるかもしれない話。
パラレルワールド考察。
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白猫夢番外編 その5
「思ったんだけどさー」
フィオの話を聞いた直後、シャランがこんなことを言い出した。
「フィオ先輩のお母さんが、レイリンさんだったんだよね?」
「ああ、うん。『向こう』の話だけど」
うなずいたフィオに対し、シャランは続けて問う。
「でさ、レイリンさんがフィオ先輩造ったきっかけって、テンコちゃんがアオイ先輩に殺されちゃったからだよね?」
「まあ、そうなるかな。仇を討たせようとしてたわけだし」
「でもさ、『こっちの世界』で先輩、カズセちゃんとレイリンさん助けたじゃん?」
「ああ」
「ってコトはさ、レイリンさんにとってフィオ先輩造る理由、無くなっちゃってるよね?」
「まあ、そうなる」
それを聞いて、シャランはうなった。
「うーん……?」
「どうかしたの?」
「いやさ、そしたらフィオ先輩、消えたりしないのかなって」
「へ?」
目を丸くしたフィオに対し、シャランは机にあったレポート用紙に、箇条書きで状況を描き並べる。
「まず、『向こう』でテンコちゃん死んだじゃん?」
「ああ」
「その本体のカズセちゃんも死んだじゃん?」
「うん」
「ソレきっかけで、レイリンさんはフィオ先輩を造ったってコトだよな。
で、先輩は『こっちの世界』でレイリンさん助けたじゃん?」
「ああ」
「コレだけどさ」
シャランはレポートに矢印を描く。
「レイリンさんがフィオ先輩造る理由、無くなっちゃったんだから、未来で先輩を造るコトは無くなったワケじゃん?
造ってないってコトはさ、存在しないワケじゃん?」
「ん……、うん?」
フィオは腕を組み、難しい顔をする。
「そう……、言えば、そう、だよな」
「じゃ、なんでフィオ先輩、まだいるの? いや、変な意味じゃないけどさ」
「いや……、僕にも……、何とも」
と、二人のやり取りを傍観していたマークが、こんな説を唱えた。
「結局、『別の世界』だからじゃない?」
「……って言うと?」
「まずさ、僕たちのいる方がA世界で、レイリンさんがフィオを造ったのがB世界とする。
A世界の派生がB世界になるわけだけど、あくまで完全に連結・連動したものじゃない。実際にフィオや、フィオに促された僕たちの行動で色々歴史が変わってるわけだし、現時点でAとBは、かなり違ったものになってるはずだ」
「ああ、確かに」
「と言うことは、A世界での行動が必ずしもB世界に影響を及ぼすとは限らないわけだ。
だから、A世界でいくらフィオが造られた理由が消滅したとしても、ほぼ別の世界となったBにおいて、その因果関係が連動して消滅するとは決して断言できない、……と言うことにならないかな?」
「うー……ん」
「分かったような……、分かんないような」

今ひとつ納得の行かなさそうな様子を見せる二人に、マークはこう付け加えた。
「それに、例え今、レイリンさんが『B世界におけるフィオ製作の理由』を失ったとしても、将来的に、別のきっかけでフィオ的な何かを造ろうと思うかも知れないわけだし」
「まあ、それは無いとは断言できない。あるかも知れないな」
「じゃあさ」
と、またもシャランが問題提起した。
「その『未来のA世界で造られたフィオ先輩』が、また過去に送られるってコトは無いのかな?
いや、AとBが連動してないとしてもさ、『向こう』で送って『こっち』で送らなきゃ、なんか『こっち』があふれるって言うか、帳尻が合わなさそうって言うか」
「……うーん。そう言われるとそんな気もするような」
「もしまた、『この世界』でも、その『僕』が過去に送られる理由があるとすれば……、僕たちがアオイを止められなかった場合くらいしか無いな。あんまり考えたくないけど」
「ああ。『こっち』を良くするために、フィオが来てくれたんだ。それを無駄にはしたくないな。
もし止められなかったら、それこそ君が生まれた意味が無くなってしまうし、五次元規模での無限ループになっちゃうよ」
「はは……、頑張るさ。絶対止めてやる、そんなワケの分からないループなんて」
フィオは肩をすくめつつ、笑って返した。
だが――マークたちが思っているより、因果律は絶対的かつ強固なものだったらしい。
ここにいる誰もの想像を超える形で、そのループは「この世界」にも適用されることとなる。
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白猫夢番外編 その5
「思ったんだけどさー」
フィオの話を聞いた直後、シャランがこんなことを言い出した。
「フィオ先輩のお母さんが、レイリンさんだったんだよね?」
「ああ、うん。『向こう』の話だけど」
うなずいたフィオに対し、シャランは続けて問う。
「でさ、レイリンさんがフィオ先輩造ったきっかけって、テンコちゃんがアオイ先輩に殺されちゃったからだよね?」
「まあ、そうなるかな。仇を討たせようとしてたわけだし」
「でもさ、『こっちの世界』で先輩、カズセちゃんとレイリンさん助けたじゃん?」
「ああ」
「ってコトはさ、レイリンさんにとってフィオ先輩造る理由、無くなっちゃってるよね?」
「まあ、そうなる」
それを聞いて、シャランはうなった。
「うーん……?」
「どうかしたの?」
「いやさ、そしたらフィオ先輩、消えたりしないのかなって」
「へ?」
目を丸くしたフィオに対し、シャランは机にあったレポート用紙に、箇条書きで状況を描き並べる。
「まず、『向こう』でテンコちゃん死んだじゃん?」
「ああ」
「その本体のカズセちゃんも死んだじゃん?」
「うん」
「ソレきっかけで、レイリンさんはフィオ先輩を造ったってコトだよな。
で、先輩は『こっちの世界』でレイリンさん助けたじゃん?」
「ああ」
「コレだけどさ」
シャランはレポートに矢印を描く。
「レイリンさんがフィオ先輩造る理由、無くなっちゃったんだから、未来で先輩を造るコトは無くなったワケじゃん?
造ってないってコトはさ、存在しないワケじゃん?」
「ん……、うん?」
フィオは腕を組み、難しい顔をする。
「そう……、言えば、そう、だよな」
「じゃ、なんでフィオ先輩、まだいるの? いや、変な意味じゃないけどさ」
「いや……、僕にも……、何とも」
と、二人のやり取りを傍観していたマークが、こんな説を唱えた。
「結局、『別の世界』だからじゃない?」
「……って言うと?」
「まずさ、僕たちのいる方がA世界で、レイリンさんがフィオを造ったのがB世界とする。
A世界の派生がB世界になるわけだけど、あくまで完全に連結・連動したものじゃない。実際にフィオや、フィオに促された僕たちの行動で色々歴史が変わってるわけだし、現時点でAとBは、かなり違ったものになってるはずだ」
「ああ、確かに」
「と言うことは、A世界での行動が必ずしもB世界に影響を及ぼすとは限らないわけだ。
だから、A世界でいくらフィオが造られた理由が消滅したとしても、ほぼ別の世界となったBにおいて、その因果関係が連動して消滅するとは決して断言できない、……と言うことにならないかな?」
「うー……ん」
「分かったような……、分かんないような」

今ひとつ納得の行かなさそうな様子を見せる二人に、マークはこう付け加えた。
「それに、例え今、レイリンさんが『B世界におけるフィオ製作の理由』を失ったとしても、将来的に、別のきっかけでフィオ的な何かを造ろうと思うかも知れないわけだし」
「まあ、それは無いとは断言できない。あるかも知れないな」
「じゃあさ」
と、またもシャランが問題提起した。
「その『未来のA世界で造られたフィオ先輩』が、また過去に送られるってコトは無いのかな?
いや、AとBが連動してないとしてもさ、『向こう』で送って『こっち』で送らなきゃ、なんか『こっち』があふれるって言うか、帳尻が合わなさそうって言うか」
「……うーん。そう言われるとそんな気もするような」
「もしまた、『この世界』でも、その『僕』が過去に送られる理由があるとすれば……、僕たちがアオイを止められなかった場合くらいしか無いな。あんまり考えたくないけど」
「ああ。『こっち』を良くするために、フィオが来てくれたんだ。それを無駄にはしたくないな。
もし止められなかったら、それこそ君が生まれた意味が無くなってしまうし、五次元規模での無限ループになっちゃうよ」
「はは……、頑張るさ。絶対止めてやる、そんなワケの分からないループなんて」
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