黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・幹談抄 2

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    麒麟を巡る話、第411話。
    中間報告。

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    2.
     7月17日、昼。
    「今のところ、平和だね」
    「それは何よりです」
     2週間前と同様に、ルーマとモール、そしてフォルナの三人が、レストラン「ランクス&アレックス」に集まっていた。
    「アレから結局、もう1回人形が襲ってきたけど、私が撃退してやったね。多分今後は、ルーマへの襲撃は諦めるだろうね。
     エミリオの方だけど、あっちは相変わらずさ」
    「そうですか。本当にもう、あの子は……」
     フォルナは額に手をかざし、呆れたような素振りを見せる。

     前回このレストランに集まった直後、モールとフォルナとでエミリオのところへ向かい、治療を施そうとしたのだが、エミリオはモールの胡散臭い姿を見るなり、「なんです? お恵みでもやれっちゅうことですか?」とモールを貶したのだ。
     この応対に、自尊心の強いモールは当然怒り、そのままエミリオの元から去ってしまった(余談だが、エミリオはこの時、フォルナにきつくたしなめられたが、反省の色は全くなかった)。
     その後、モールから「あえてこの場は放っておこう」と提案され、そのまま監視のみの状態が続いている。

    「いいさ。30日にゃ、自分のその慢心のせいでバカを見るんだ。ソレを分からせなきゃ、どっちみち今後の人生でも、痛い目見るんだしね。
     ま、ソレにだ。ルーマの場合は私が付きっきりで見てやれるけど、別々のトコにいる二人を同時に守るのは割と難しいからね。人形どもが『一回襲ったからもう終わってる』と思って油断してくれてた方が、守る側としちゃ楽なんだよね。
     勿論、本気で病状がヤバくなってきたら治してやるけどね」
    「ええ、その時はお願いいたします」
     フォルナに頭を下げられ、モールは肩をすくめる。
    「まあ、任せとけってね。
     で、今後の予定はどんな感じかね? まさかこのまま、30日まで何もせずってこた無いだろ?」
     モールの問に、ルーマが答える。
    「ええ。今週末の土曜、候補者3名での面接と討論会があります」
    「20日だね」
    「そこであたしたち候補者が、最高幹部の皆さんとお話して、その後候補者同士で討論します。その後は30日まで特に動きはありませんけど、その分、この会はすごく重要になってきます。
     あたしも今、準備してますし、エミリオくんやマロくんも今、スピーチとか質疑応答の練習してはると思いますよ。
     ほんで、その後は公正を期すため、候補者は30日の選挙まで、最高幹部の皆さんと会うことは禁じられます」
    「ふむ。となると、もうそろそろエミリオに症状が出ててもおかしくないね」
    「なるほど……。確かに唯一と言っていい、事前アピールの場で粗相をするようであれば、選挙戦にとっては致命的ですものね。
     ではそろそろ、エミリオに治療を……」「いいや」
     が、モールは首を縦に振らない。
    「見てやろうじゃないね。病気でふらっふらになったエミリオが、一体どんな答弁をしてくれるのかを、ね」
    「まあ」
     モールの返答に、フォルナは眉をひそめる。
    「なんて陰険な方ですこと」
    「どっちもどっちさ。アイツだって、私を見るなり乞食呼ばわりしたんだ。そりゃ、コレくらいのペナルティも課したくなるってもんだね」
    「……コドモやん」
     ぼそ、と突っ込んだルーマに、モールはフンと鼻を鳴らす。
    「コドモで結構。ともかくさっき言った事情もあるし、病気を治すのは討論会後だね」



     同時刻、エミリオの会社。
    「社長、本日の昼食はどうなさいますか?」
     尋ねてきた秘書に、エミリオはぱた、と手を振る。
    「パスしとく」
    「え……?」
     その返事に、秘書は心配そうな顔をする。
    「昨日も一昨日も、昼食を抜かれていますよ? 大丈夫ですか……?」
    「ああ、最近ちょっと、食欲無いねん。夏バテかなんかやろうと思う」
    「本当ですか? 顔色もあまり良くないように見えますよ」
    「ああ、それも夏バテやろ」
    「……」
     秘書は唐突に、エミリオの額にぴた、と手を当てた。
    「なんやな」
     エミリオは嫌そうに顔をしかめたが、秘書はことさら心配そうな声を上げた。
    「熱、あるじゃないですか! 今日は早引けした方が……」
    「アホな。ちょっと熱出てるくらいで……」「ちょっとじゃありませんよ!」
     秘書はエミリオから手を離し、強い口調で諭す。
    「お願いですから、ご養生なさって下さい! 社長にもしものことがあったら、私たち全員が路頭に迷うんですよ!?」
    「……あーもう」
     エミリオはため息を付きながら、力なくうなずいた。
    「確かにそろそろ、討論会の準備せなアカンと思てたし、ちょうどええ機会や。今日の午後と明日いっぱい、休み取らせてもらうわ」
    「分かりました」
     と、立ち上がったエミリオがふらつく。
    「社長!」
    「心配せんでええ。……ほな、今日はこれで帰るわ」
     エミリオは秘書の手を振り払い、そのまま会社を後にした。
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