「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第8部
白猫夢・金冠抄 4
麒麟を巡る話、第418話。
重武装人形の追撃。
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4.
慌てるモールに対し、職員はけげんな顔をしている。
「なんだ? 一体どうした?」
「後ろ見ろって! あいつだ! 爆発事件の犯人!」
「……あの青と白のドレス着た女の子が、か? あんた、一回病院にでも行ったらどうだ?」
「お決まりの返し文句なんか聞いてる場合かッ! 早く乗せろッ! そして出せってね!」
モールは魔術を使い、強引に車の鍵を開けて乗り込む。
「おい、あんた……」
なおも文句を言いかけたところで、カムリが後方50メートル辺りで立ち止まり、左手を挙げる。
「いいからアクセル目一杯踏めーッ!」
助手席に乗り込んだモールは、職員の足の上からアクセルを踏み抜いた。
「いでえー!?」
が、エンジンがうなるばかりで走り出す様子は無い。
「なんでサイドブレーキかけてんだッ!」
「車停めてるんだからかけるに決まってるだろ!? 足どけろ! 痛えだろ!?」
問答している間に、カムリの左肘がぱか、と外れる。
バックミラー越しにそれを確認した職員は、目を丸くした。
「な……!?」
「ああもう、間に合わないね! 『ウロボロスポール:リバース』!」
カムリがグレネードを発射したその瞬間、モールも術を発動させる。
「う……、うわーっ!?」
職員は顔を真っ青にして叫んだが――モールの術により、グレネードはパトカーに着弾する直前で引き返し、カムリに向かっていく。
「……!」
カムリは身を翻してグレネードをかわし、そのままこちらに向かって走り出す。
「メチャクチャなヤツだね、マジで! ほれ、さっさと車出せってね!」
「わ、分かった!」
グレネードが地面に落ち、爆発すると同時に、パトカーは後輪をギャンギャンときしらせながら走りだした。
「……流石に車にゃ追いつけないか」
モールは助手席から身を乗り出し、カムリとの距離が離れていくのを確認して、安堵のため息を漏らした。
「おい、あんた」
と、職員が前を向いたままモールに声をかける。
「運転中は普通に座ってくれ。ミラーが見えん」
「おう、悪いね」
モールが席に座ったところで、職員はこう続けた。
「フォコ屋敷だったな? 分かった、連れて行くよ」
「助かるね。……おっと、自己紹介がまだだったね。私はモール。さっきも言った通り、後ろにいるのがルーマ・ゴールドマン女史だね」
「よろしく。俺はラムダ・マセリーニだ」
「よろしゅう、……ひゃあ!?」
挨拶しかけたルーマが途中で悲鳴を上げ、頭を抱える。
彼女の背後にあったリアガラスが、突然砕け散ったからだ。
「ちっくしょー……、追ってきたか」
どこから調達してきたのか、カムリも車に乗って追いかけてきた。
既にフロントガラスは割られており、彼女は時折、左手首に仕込んだ自動小銃で、ラムダの運転するパトカーを銃撃してくる。
「くそ、ここじゃスピード出せない!」
パトカーが走っているのは近代改修が行われている最中の通りであり、道幅が狭い上に舗装も中途半端になっている。
速度を上げて振り切ろうにも、パトカーは今にも道端の木箱や人間にぶつかりそうになる。
「どけっ、どけって!」
「聞こえるわけ、……うわっ!」
この間にもカムリは銃撃し続けており、パトカー後方にボコボコと穴が空く。
何度かモールも防御を試みるが、それでも曲がり角などで術の展開方向がずれ、その度に弾丸が車内に飛んでくる。
その内の一発がフロントガラスに食い込み、目の前が物理的に真っ白になる。
「み、見えねえっ」
「割らしてもらうねっ」
モールが杖の先を叩きつけ、フロントガラスを強引に砕いてはがす。
と、カムリの攻撃がやむ。どうやら小銃の弾丸が切れたらしい。
「今のうちだね、大通りに出て飛ばせッ!」
「分かってら!」
ラムダはハンドルを切り、パトカーを半ばスピンさせながらも、大通りに流し込んだ。
「……はあ。死ぬかと思ったよ」
「ルーマ、生きてる?」
「は、はい……」
ルーマは狐耳をプルプルと震わせながら、後部座席に縮こまっていた。
「フォコ屋敷までドレくらいだね?」
「ここからなら、15分ってところだな。……あいつ、追って来ないな」
「流石に大通りじゃ、他の車が多過ぎるからね。別の手段を講じてくるつもりだろうね。その間に、何とかフォコ屋敷まで行こう」
「ああ、分かった」
穴だらけになったパトカーは、そのまま大通りを進んでいった。
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重武装人形の追撃。
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慌てるモールに対し、職員はけげんな顔をしている。
「なんだ? 一体どうした?」
「後ろ見ろって! あいつだ! 爆発事件の犯人!」
「……あの青と白のドレス着た女の子が、か? あんた、一回病院にでも行ったらどうだ?」
「お決まりの返し文句なんか聞いてる場合かッ! 早く乗せろッ! そして出せってね!」
モールは魔術を使い、強引に車の鍵を開けて乗り込む。
「おい、あんた……」
なおも文句を言いかけたところで、カムリが後方50メートル辺りで立ち止まり、左手を挙げる。
「いいからアクセル目一杯踏めーッ!」
助手席に乗り込んだモールは、職員の足の上からアクセルを踏み抜いた。
「いでえー!?」
が、エンジンがうなるばかりで走り出す様子は無い。
「なんでサイドブレーキかけてんだッ!」
「車停めてるんだからかけるに決まってるだろ!? 足どけろ! 痛えだろ!?」
問答している間に、カムリの左肘がぱか、と外れる。
バックミラー越しにそれを確認した職員は、目を丸くした。
「な……!?」
「ああもう、間に合わないね! 『ウロボロスポール:リバース』!」
カムリがグレネードを発射したその瞬間、モールも術を発動させる。
「う……、うわーっ!?」
職員は顔を真っ青にして叫んだが――モールの術により、グレネードはパトカーに着弾する直前で引き返し、カムリに向かっていく。
「……!」
カムリは身を翻してグレネードをかわし、そのままこちらに向かって走り出す。
「メチャクチャなヤツだね、マジで! ほれ、さっさと車出せってね!」
「わ、分かった!」
グレネードが地面に落ち、爆発すると同時に、パトカーは後輪をギャンギャンときしらせながら走りだした。
「……流石に車にゃ追いつけないか」
モールは助手席から身を乗り出し、カムリとの距離が離れていくのを確認して、安堵のため息を漏らした。
「おい、あんた」
と、職員が前を向いたままモールに声をかける。
「運転中は普通に座ってくれ。ミラーが見えん」
「おう、悪いね」
モールが席に座ったところで、職員はこう続けた。
「フォコ屋敷だったな? 分かった、連れて行くよ」
「助かるね。……おっと、自己紹介がまだだったね。私はモール。さっきも言った通り、後ろにいるのがルーマ・ゴールドマン女史だね」
「よろしく。俺はラムダ・マセリーニだ」
「よろしゅう、……ひゃあ!?」
挨拶しかけたルーマが途中で悲鳴を上げ、頭を抱える。
彼女の背後にあったリアガラスが、突然砕け散ったからだ。
「ちっくしょー……、追ってきたか」
どこから調達してきたのか、カムリも車に乗って追いかけてきた。
既にフロントガラスは割られており、彼女は時折、左手首に仕込んだ自動小銃で、ラムダの運転するパトカーを銃撃してくる。
「くそ、ここじゃスピード出せない!」
パトカーが走っているのは近代改修が行われている最中の通りであり、道幅が狭い上に舗装も中途半端になっている。
速度を上げて振り切ろうにも、パトカーは今にも道端の木箱や人間にぶつかりそうになる。
「どけっ、どけって!」
「聞こえるわけ、……うわっ!」
この間にもカムリは銃撃し続けており、パトカー後方にボコボコと穴が空く。
何度かモールも防御を試みるが、それでも曲がり角などで術の展開方向がずれ、その度に弾丸が車内に飛んでくる。
その内の一発がフロントガラスに食い込み、目の前が物理的に真っ白になる。
「み、見えねえっ」
「割らしてもらうねっ」
モールが杖の先を叩きつけ、フロントガラスを強引に砕いてはがす。
と、カムリの攻撃がやむ。どうやら小銃の弾丸が切れたらしい。
「今のうちだね、大通りに出て飛ばせッ!」
「分かってら!」
ラムダはハンドルを切り、パトカーを半ばスピンさせながらも、大通りに流し込んだ。
「……はあ。死ぬかと思ったよ」
「ルーマ、生きてる?」
「は、はい……」
ルーマは狐耳をプルプルと震わせながら、後部座席に縮こまっていた。
「フォコ屋敷までドレくらいだね?」
「ここからなら、15分ってところだな。……あいつ、追って来ないな」
「流石に大通りじゃ、他の車が多過ぎるからね。別の手段を講じてくるつもりだろうね。その間に、何とかフォコ屋敷まで行こう」
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