「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第8部
白猫夢・金冠抄 5
麒麟を巡る話、第419話。
対人形対策。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「……大丈夫か?」
ようやく落ち着いてきたらしく、ラムダがバックミラー越しに、ルーマに話しかけた。
「あ、はい」
「気分悪かったら、……悪いが我慢してくれ。車、止められないからな。一刻も早く屋敷に着いて、応援を要請しないとな」
「ええ」
ルーマの安全を確認し、続いてラムダはモールをチラ、と横目で見る。
「あんた、変わった格好してるな。まるで絵本に出てくる魔法使いみたいだ」
「そんな感じさね。大魔法使い様だ」
「名実共に、だな。さっきは本当、助かったよ」
「どういたしまして、ってね。……ん?」
と、モールは鼻をくんくんとひくつかせる。
「……臭くない?」
「え?」
「ガソリン臭いね。……ちょっと聞くけども」
「ああ」
「燃料タンクってドコらへん?」
「エンジン近くだ」
「エンジンって前にある?」
「なわけないだろ。どうやってタイヤ回すんだよ」
「ああ、今はまだRR(リアエンジン・リアドライブ:エンジンと駆動輪を直結させ、車体後方に設置する車輌駆動方式)が主流か。
じゃあ燃料タンクも後ろにあるんだね。……ってコトは」
モールは体を乗り出して振り向き、車体の後方を確認する。
「……まっずいね、多分」
「どうした?」
「燃料タンクに穴が開いてるみたいだね。さっきの銃撃で穴が開いたらしいね、どうも」
「くそ……、マジでか」
話している間に、燃料不足によりパトカーの出力が落ちていく。
ラムダは慌てて路肩にパトカーを停め、モールたちと共に車外に出る。
「うわぁ……、コレはダメだね」
モールは車体後方に回って状況を確認し、ため息をつく。
やはり銃弾をすべて防御するのは難しかったらしく、後方部分は蜂の巣になっており、そこからぽたぽたとガソリンが滴っていた。
「引火しないだけマシだったね。……しゃあない、ココからは歩きだね」
三人はパトカーをその場に置いて、徒歩でフォコ屋敷へと向かうことにした。
「どこかに電話が無いかな……。パトカー、引き取りに来てもらわないとまずいし」
「屋敷にならいくらでもあるさ。ま、穴だらけでガソリン臭い、今にも爆発しそうなパトカーを盗んで運転するアホはいないね」
「それもそうか。……しかし、今襲われたら本気でまずいな。拳銃しか無いし」
「正直、重機関銃か大型のグレネード砲でも無いとアイツにゃ歯が立たないだろうね。公安機動部の通常装備程度じゃ、返り討ちだね。
……ルーマ、大丈夫? さっきからしゃべってないけど」
「大丈夫です。……ちょっと、ガソリン酔いしてしもて」
「そっか、私らより近くにいたワケだしね。こっち来な、気分が良くなるように術かけてあげるから」
「ありがとうございます」
モールに治療術を施してもらい、ようやくルーマに元気が戻ってくる。
「はあ……。ところでモールさん」
「うん?」
「どうやってカムリちゃんを倒すんです?」
「敵にちゃん付けはいらないだろ……。
まあ、問題はソコだね。単なる魔術師や剣士が相手なら私の敵じゃないんだけど、あんな重武装されたんじゃ、呪文唱えてる間に蜂の巣にされちゃうね。
こっちにも相応の近接戦闘力が無きゃ、倒すのはまず無理だね」
「それなら、ゴールドマンさんに頼めばいいんじゃないか?」
ラムダの言葉に、ルーマはきょとんとする。
「あたし?」
「ああ。金火狐商会の兵器開発部にでも連絡して、強力な装備を持ってきてもらえば……」
「まあ、現時点で採れる最良の策ではあるね。金火狐の最新兵器なら、どうにかダメージは与えられそうだしね」
「一応、連絡はしてみます」
「ああ」
「あ、それとラムダさん、でしたっけ」
ルーマはにこ、とラムダに笑いかける。
「あたしのこと、ルーマでええですよ。『ゴールドマンさん』って言われると、なんかムズっとするんです、尻尾」
「ああ、分かった」
パトカーを乗り捨ててから30分後、懸念していたカムリの襲撃も無く、三人はフォコ屋敷に到着した。
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「……大丈夫か?」
ようやく落ち着いてきたらしく、ラムダがバックミラー越しに、ルーマに話しかけた。
「あ、はい」
「気分悪かったら、……悪いが我慢してくれ。車、止められないからな。一刻も早く屋敷に着いて、応援を要請しないとな」
「ええ」
ルーマの安全を確認し、続いてラムダはモールをチラ、と横目で見る。
「あんた、変わった格好してるな。まるで絵本に出てくる魔法使いみたいだ」
「そんな感じさね。大魔法使い様だ」
「名実共に、だな。さっきは本当、助かったよ」
「どういたしまして、ってね。……ん?」
と、モールは鼻をくんくんとひくつかせる。
「……臭くない?」
「え?」
「ガソリン臭いね。……ちょっと聞くけども」
「ああ」
「燃料タンクってドコらへん?」
「エンジン近くだ」
「エンジンって前にある?」
「なわけないだろ。どうやってタイヤ回すんだよ」
「ああ、今はまだRR(リアエンジン・リアドライブ:エンジンと駆動輪を直結させ、車体後方に設置する車輌駆動方式)が主流か。
じゃあ燃料タンクも後ろにあるんだね。……ってコトは」
モールは体を乗り出して振り向き、車体の後方を確認する。
「……まっずいね、多分」
「どうした?」
「燃料タンクに穴が開いてるみたいだね。さっきの銃撃で穴が開いたらしいね、どうも」
「くそ……、マジでか」
話している間に、燃料不足によりパトカーの出力が落ちていく。
ラムダは慌てて路肩にパトカーを停め、モールたちと共に車外に出る。
「うわぁ……、コレはダメだね」
モールは車体後方に回って状況を確認し、ため息をつく。
やはり銃弾をすべて防御するのは難しかったらしく、後方部分は蜂の巣になっており、そこからぽたぽたとガソリンが滴っていた。
「引火しないだけマシだったね。……しゃあない、ココからは歩きだね」
三人はパトカーをその場に置いて、徒歩でフォコ屋敷へと向かうことにした。
「どこかに電話が無いかな……。パトカー、引き取りに来てもらわないとまずいし」
「屋敷にならいくらでもあるさ。ま、穴だらけでガソリン臭い、今にも爆発しそうなパトカーを盗んで運転するアホはいないね」
「それもそうか。……しかし、今襲われたら本気でまずいな。拳銃しか無いし」
「正直、重機関銃か大型のグレネード砲でも無いとアイツにゃ歯が立たないだろうね。公安機動部の通常装備程度じゃ、返り討ちだね。
……ルーマ、大丈夫? さっきからしゃべってないけど」
「大丈夫です。……ちょっと、ガソリン酔いしてしもて」
「そっか、私らより近くにいたワケだしね。こっち来な、気分が良くなるように術かけてあげるから」
「ありがとうございます」
モールに治療術を施してもらい、ようやくルーマに元気が戻ってくる。
「はあ……。ところでモールさん」
「うん?」
「どうやってカムリちゃんを倒すんです?」
「敵にちゃん付けはいらないだろ……。
まあ、問題はソコだね。単なる魔術師や剣士が相手なら私の敵じゃないんだけど、あんな重武装されたんじゃ、呪文唱えてる間に蜂の巣にされちゃうね。
こっちにも相応の近接戦闘力が無きゃ、倒すのはまず無理だね」
「それなら、ゴールドマンさんに頼めばいいんじゃないか?」
ラムダの言葉に、ルーマはきょとんとする。
「あたし?」
「ああ。金火狐商会の兵器開発部にでも連絡して、強力な装備を持ってきてもらえば……」
「まあ、現時点で採れる最良の策ではあるね。金火狐の最新兵器なら、どうにかダメージは与えられそうだしね」
「一応、連絡はしてみます」
「ああ」
「あ、それとラムダさん、でしたっけ」
ルーマはにこ、とラムダに笑いかける。
「あたしのこと、ルーマでええですよ。『ゴールドマンさん』って言われると、なんかムズっとするんです、尻尾」
「ああ、分かった」
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