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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・金冠抄 6

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    麒麟を巡る話、第420話。
    マロの終焉。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
    「なるほど、事情はよお分かった。すぐブレシアとガルディに連絡しとく。
     まあ、本来なら選挙候補者が前日に私らと会うのんはあんまりよろしくないねんけど、事情が事情やからな。2階の202号室が空いとるから、今日はそこでゆっくり休み」
    「ありがとうございます、総帥」
     快く迎えてくれたレオンに、ルーマは深々と頭を下げた。
    「しかし、今期は大波乱やな。まさか直に命狙ってくるヤツまで現れるとは思わんかったわ」
    「ええ。エミリオくんの身も心配です」
    「せやな。ついでに連絡しとくわ。必要であれば、こっちに来てもらおか。
     ……ルーマ。お前も、この件の黒幕はマロと思とるんか?」
    「え……」
     口をつぐんだルーマに、レオンは悲しそうな顔を見せた。
    「今、お前はエミリオの心配はしたけども、マロのことは話題に出さへんかった。同じ候補者やのに、や。
     いや、否定はせんでええねん。私の方でも、薄々そうやないかと思っとったんや」
    「そりゃ、どうしてさ?」
     モールの問いに、レオンは首を小さく横に振る。
    「ルーマもエミリオも、こんなアホなことせんでも票を取れるくらいの実力はある。こうでもせんと票を取れんのは、マロだけやからな」
    「なるほどね。……まあ、私らの方で知ってる真相は、こうだね」
     モールはレオンに、マロが白猫党とつながっていること、そして白猫党の躍進で並々ならぬ利益を獲得できる者がいることを明かした。
    「そうか……。ちゅうても、そんな暴挙を許すような幹部陣やない。
     もしマロが総帥になって白猫党に日和りよるようなことをしたら、幹部陣の満場一致であいつは罷免や。その上で、即座に降伏を撤回するやろな。
     仮に幹部陣を皆殺しにして独裁状態にしようとも、各局に次官がいとるし、結局マロの罷免と降伏撤回は行われる。
     そんなアホな計画が成就する可能性は、とっくの昔にニコル3世が潰しとるねんや。どうしても言うこと聞かそうと思たら、そらもう、市国ごと財団を潰すくらいの覚悟が無いと無理やろな」
    「ソレはソレで、エル安クラム高にはなるけどね。ま、コストが高すぎるし、まともな勘定計算ができる相手ならやりゃしないね」
    「せやろな。……ほな、連絡してくるわ」
     レオンはその場を後にしようとして、ルーマに振り返る。
    「ルーマ。何があろうと、お前とエミリオは、公正な条件の下で選挙に出れるよう手配する。……マロは、もうアカンけどな」
    「……はい」



     レオンは金火狐商会長ブレシア・トーナ・ゴールドマンと、公安局長ガルディ・トロンの両名に連絡し、フォコ屋敷に大量の兵器と公安機動部員を集めさせた。
     次いで、エミリオに今朝起こった襲撃事件を伝え、緊急措置として屋敷に来るよう指示した。
     そしてマロには――。

    「お、おい、マロ……」
     モデノは、顔を真っ青にしてマロに詰め寄る。
    「お前、金火公安から来るよう言われとるぞ! 一体何したんや!?」
    「え……」
     これを聞き、マロも青ざめる。
     同時に、屋敷内に武装した公安職員がぞろぞろと入ってくる。
    「マラネロ・アキュラ・ゴールドマンは?」
    「……こいつや」
     力なく指差したモデノに、マロは絶句する。
    「ちょ、親父……っ」
    「あなたに逮捕状が出ている」
     四方八方からマラネロに拳銃を向けつつ、職員は書類を見せる。
    「容疑はエミリオ・トーナ・ゴールドマン氏への傷害とルーマ・ベント・ゴールドマン氏への殺人未遂、この2件への関与と、財団運営に対する一級業務妨害についてだ」
    「……」
     何も言わないマロに、職員は同行を求めた。
    「我々と一緒に来てもらおう」
    「……わかりま」
     マロの声が、途中で途切れる。
    「マロ? ……おい、マロ!?」
     マロがばたりと倒れ、動かなくなる。
    「だっ……、誰だ!? 一体どこから……!?」
     その背中には、ナイフが突き刺さっていた。



    「……マロが刺されたそうや」
     連絡を受けたレオンが、ふたたびルーマたちと話していた。
    「刺された……!?」
    「選挙に参加できなくなった以上、マロはこの事件の黒幕にとって、自分の正体を明かしかねない危険しか持たない厄病神だからね。セリカかカムリに口封じされたのさ」
    「となると、もう大丈夫じゃないのか?」
     帰るに帰れず、そのままルーマの警護に当たることになったラムダが口を挟む。
    「マロ氏を選挙に勝たせるために、残りの候補者を消そうとしたんだろ? マロ氏がいなくなったんなら……」
    「その場合は多分、残った2人のどっちかに言うコト聞かせようとするだろうね。結局襲ってくるのは変わらないね」
    「マジか……」
    「もっとも、ココで追い返しゃ、流石に無理だって悟るはずさ。二度と介入しようとはしないだろうね」
    「一応、大型拳銃を人数分、重機関銃4基と軽機関銃、ショットガンを各12挺、自動小銃を24挺、グレネード砲も6挺用意した。公安職員も機動部の腕自慢を揃えてある。
     後はマセリーニ巡査部長、君にも大型拳銃とグレネード砲、ショットガンを装備してもらうとのことや」
    「了解です」
     敬礼したラムダを見て、レオンは渋い顔をする。
    「……できるなら、屋敷ん中はあんまり壊さんようにな。一応、歴史ある建物やし」
    「気を付けます」
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    どこの平家ですかw

    マロは散々な目に遭ってますね。
    麒麟の目論み通り、というところでしょうか。
    ただ、完全に計画通りかと言うと、そうでもないようで。

     

    マロくんはここで死亡ですか。

    なんか気の毒なキャラクターだったなあ。


    悪役するんだったら首が取れても動いてみんかい(笑)
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