黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・金冠抄 10

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    麒麟を巡る話、第424話。
    本当の「金融」。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    10.
    「ふ……」
     エミリオが顔を真っ赤にして、叫んだ。
    「ふざけるなッ! そんなわけがあるかああああッ!」
    「黙れ、エミリオ。うるさいで」
     レオンが立ち上がり、エミリオを叱る。
    「たった今、私らがお前の目の前で投票し、そのままここで選管が開票した。
     これで何か、異議申し立てでもあるんか?」
    「い、いや、でも」
    「まさかお前、自分に1票でも入ると思とったんか?」
    「えっ……」
     レオンの言葉に、エミリオは硬直する。
    「それこそ『ふざけるな』や。お前は満場一致で、総帥にはふさわしくないと判断されとったんや。
     それがなんでか、お前は分かるか?」
    「……」
     エミリオは目をむくばかりで、一言も発しない。
    「分からんやろうな。まあ、通例やと、開票後に当代総帥から次代に向けて何かしら言葉を送ることになっとるから、その代わりに話しとこか。
     お前は金火狐がなんで世界から認められとるか、分かっとるんか?」
    「そ、そら勿論分かってます! カネを誰より稼ぐからですよ!」
    「足らんな」
     レオンはエミリオをにらみつけ、こう返した。
    「カネ稼ぐだけで世間から認められるっちゅうんやったら、とっとと高利貸ししたったらええねん。世間からカネをぎゅうぎゅう絞れるだけ絞りとったったら、それだけで一番のカネ持ちになれるわな。
     でも、私ら金火狐はそれをやらん。なんでか、分かるか?」
    「恨まれるからですか」
    「アホか。誰からも好かれる商売なんぞあらへん。何をどうしたって、何かしらの恨みは買うもんや。
     金火狐が高利貸しをやらんのは、自分らしか儲からへんからや」
    「え……?」
     レオンはルーマに目をやり、こう尋ねた。
    「ルーマ。お前はなんで、カネ貸しになった?」
     この問いに、ルーマは素直に、己が常々考えていたことを答えた。
    「市国には、おカネに困ってる人がいっぱいいます。折角ウチらはおカネ持ってるんやから、それで助けられたらと思ったからです」
    「そうや。正しい金融っちゅうのは、そこにある。本来の『金融』は『金』を余らせとる奴が足らん奴に『融』通し、助けたることや。
     それは決して自分だけが儲かるためにやることやない。皆の利益、公益のためにこそ行うべき商売なんや。
     ルーマ、お前の会社はちょくちょく確認しとる。本来ならカネ貸しは、財団典範と商会の規則でガチガチに制限かけとる商売やからな。しかしその上で、お前は真に金火狐の精神に則ったカネの貸し方をしとったことを、ちゃんと確認させてもろた。
     お前の生き方は、自分ただ一人が得をするような生き方やない。世間の、世界全体のためになる生き方や。それこそが金火狐の理念であり、私らが世界に認められる所以なんや。
     お前こそが総帥にふさわしい。お前やったら、金火狐財団を決してアカン方へ導くこと無く、世界と共に発展させてくれるはず。……それが、私らの総意や」
     レオンに賞賛され、ルーマは深々と頭を下げた。
    「ありがとうございます」
    「おう。おめでとさん、ルーマ。
     ……反面、エミリオ。お前は何なんや?」
     レオンはもう一度、エミリオをにらみつけた。
    「常日頃からお前が口にしとるのは、『如何にして自分が儲かるか』『如何にして自分が偉くなるか』ばっかりやないか!
     いっつもいつも自分のことしか考えへん、傲慢不遜のアホめ! そんなもん、金火狐の精神でも何でもあらへんわ! ただ自分が可愛いだけの、クソガキの駄発想や!
     ええ加減に目ぇ覚ませ! いつまでパチモンのままでいるつもりやッ!」
    「ぱっ、……パチ……モン……」
     エミリオの顔が一転、蒼白になる。レオンはなお表情を崩さず、厳しく言い放った。
    「お前は向こう10年、金火狐の重要な椅子には、どこにも付かせられへん。地道に汗かいて、自分の商売と生き方をじっくり見直すことやな」
    「……ぐっ……」
     エミリオは顔をくしゃくしゃに歪ませ、ボタボタと涙を流していた。



     こうして大波乱の末、ルーマ・ベント・ゴールドマンが第19代金火狐総帥に選出された。

    白猫夢・金冠抄 終
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