黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第8部

    白猫夢・排猫抄 2

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    麒麟を巡る話、第426話。
    国境接触。

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    2.
     ゴールドコースト市国には、いわゆる「軍隊」と言える組織が存在しない。「戦争に対してはあくまで抑止目的の介入に留めるべし。自らが戦争を起こしてはならない」とする、財団の理念ゆえである。
     とは言え、万が一市国に攻め入ろうとする武装勢力が現れた場合のために、入出国管理局には警備隊が設置されている。
     幸運なことに、隊の設置以来2世紀半もの間、彼らが活躍するような事態が発生することは無かった。

     だが、570年現在――防衛隊の間には、これまでにない緊張感が漂っていた。
    「白猫軍、本日も目立った動きは見られません」
    《了解》
     国境のまさに境目、連なる壁の上で監視を続けている警備隊は、しきりに固唾を飲んでいる。彼らの前方およそ1キロ先に、白猫党の前線が並んでいるからだ。
     だが、相手は国境を半ば囲むように前線を築くばかりで、攻め込もうとはして来ない。
    「……疲れる」
     警備隊員は双眼鏡を片手に、煙草を口にくわえた。



     一方、こちらは白猫党の央中本営。
    「日増しに警備隊の数は増えておりますが、それ以上の行動は見られないとのことです」
    《そう》
     この時期には既に、現場指揮を軍司令官ミゲル・ロンダに任せ、シエナたち最高幹部は央北の本拠へと戻っている。
    《こちらもまだ動かないように。いいわね?》
    「了解であります。しかし、本当にこのまま、年明けまで待機を?」
    《勿論よ。『預言』を覚えてるでしょ? ソレによれば来年に入ったところで、総帥が代わる。新しい総帥は我々に、無条件降伏の申し出を送ってくる。
     ソコから悠々、占領すればいいのよ。無駄撃ちする必要は無いわ》
    「むう……」
     不満そうなため息を聞きつけ、シエナの尖った声が返ってくる。
    《まさか『預言』に従えない、と?》
    「い、いえ、そんなことは。しかしですな、個人的にはいささか、慎重に過ぎるのではないかと考えているのです。
     確かに金火狐の本拠地であり、資金は豊富。金火狐商会の兵器開発部もあり、常に最新鋭の装備が警備隊や、公安機動部と言った武力組織に行き渡っています。
     それ故、生半可な攻めでは返り討ちに遭うことは明白。性急に行動するのは、それこそ愚の骨頂である。それは十二分に、承知しております。
     しかし一方で、彼奴らの防衛力は日を追うごとに増してきております。前線においても、警備隊の守りは堅固になる一方。さらに市国に潜伏している諜報員らの情報によれば、西大海洋同盟とのコネクションを使い、同盟国から軍艦を借り、港へ引っ張ってきているとか。
     このままただ看過するだけではいずれ、落とせるものも落とせなくなるのではと、私は危惧して……」《ロンダ司令官》
     シエナの冷たい声が返ってくる。
    《何度言わせるの? 『預言』を信じなさい》
     そう言い残し、電話は切れた。
    「……むうう」
     ロンダは重々しいため息をつき、受話器を置いた。

     と、そこへ兵士が現れる。
    「市国内の諜報員より緊急連絡が入りました」
    「緊急? 一体何があった?」
     尋ねたロンダに、兵士はこう告げた。
    「市国において、第18代総帥レオン・ゴールドマン氏が急病により倒れたとの情報が入りました」
    「ほう……?」
     うなずきかけ、ミゲルは首を傾げる。
    「だが、緊急連絡と言うほどではないな」
    「あ、いえ。その病状なのですが、非常に急速に進行しており、もって1週間ほどではないかとのことです」
    「ふむ? ……ふむ」
     これを聞いて、ロンダは今度こそうなずく。
    「なるほど。となれば近日中に代替わりが行われる可能性があるな。
     となれば、『預言』に沿うか。……いや、しかし時期が早すぎるようにも、……いや、……うーむ」
     ロンダは再度、受話器を取りつつ、兵士に命じる。
    「ご苦労。下がってよし」
    「失礼いたします」
     兵士が去ったところで、ロンダはもう一度、党本部に連絡した。

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    2015.12.23 修正
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