「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第8部
白猫夢・排猫抄 3
麒麟を巡る話、第427話。
謀議と謀議。
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3.
ロンダからレオン急病の報告を受けたシエナは、密かに葵と相談していた。
「どう思う? アンタの『預言』より、ずいぶん早いけど……」
「ん」
葵はいつものように、ベッドに半身を潜らせた状態で、眠たげに答える。
「多分それ、市国側が流した嘘だよ」
「えっ?」
「市国はあたしたちが、『市国は白猫党に対して無条件降伏する』ことを前提に行動してることを知ってると思う。そして同時に、それは年末頃だと目論んでいることも知ってる。
だからそれを逆手に取って、撹乱させようとしてるんだよ。基本的には、乗らない方がいい」
「そうね。それじゃ……」「でも」
葵は目をこすりながら、こう続けた。
「ミゲルさんは結構焦ってきてるよ。乗るかも知れない。
確かに普段から気の長いタイプだし、自分を抑えるのが上手だから、シエナがあれこれ無茶言っても、素直に従ってくれてる。
でもミッドランド陥落から市国西周辺の制圧までずっと快進撃が続いてたから、ここで動きが止まってることに、内心ではイライラしてるよ。いつもより気が短くなってるはず。
今はまだ半々ってところだけど、ミゲルさんは独断専行で攻め込むかも。嘘だって伝えても多分、結果には影響しないよ」
「そう……。じゃあ、嘘情報については触れないようにしようかしら。何か余計なコト言って、下手にアタシの責任を追求されても嫌だし。
じゃ、もしロンダが攻め込んだら、その場合はどうなるかしら?」
「被害は少なくないけど、勝つはず。その未来は結構、クリアに『見えてる』から」
「分かった。それじゃ、ロンダのやりたいように任せるわね」
「ん」
シエナはレオン危篤が偽情報である可能性を伏せ、ロンダに「現状を維持せよ」と伝えた。
一方、ゴールドコースト市国。
「ははは……、今日も大騒ぎしとるな」
新聞を眺めていたレオンが、傍らのルーマに笑いかける。
「おかげで大変です」
「すまんなぁ。ちゅうても忙しなるんが三ヶ月、四ヶ月早まっただけやないか」
「まあ、そうですけど。でもそのせいであたしの会社、火の車です。まだ譲渡も整理もできてないですもん」
「せやったな……。まあ、そこら辺はどこかから代理を通して、私が処理してもええけど」
「いえ、どうにか暇作って、あたしが自分でやります。思い入れがありますから」
「そうか」
葵の読み通り、「レオンが急病で倒れた」と言う情報は、白猫党を欺くために財団側が流したデマである。
これにより白猫軍に勇み足をさせ、不用意に市国占領を試みたところを撃退し、追い払おうと言うのが、レオンの考えだった。
「管理局からは何か言うてきてるか?」
「今のところは特に」
「そうか。まあ、引っかからへんかったら、それはそれや。その間に十分な防衛ラインが完成するし、攻められへんようにはなる。
どっちに転んだとしても、うちらが勝つ作戦や」
「あたしとしては、このまま撤退してほしいですけどね」
「向こうもそれなりにメンツがあるからな。何や理由が無い限りは、退こうとはせえへんやろな。……お?」
と、レオンが別の新聞に手を伸ばしたところで、その新聞の間からパサ、と手紙が落ちる。
「何や?」
「あ、拾いますよ」
ひょい、とルーマがつかみ、裏面を見る。
「あら?」
「誰からや?」
「モールさんです」
「モールさん? 何やろ」
「読みましょうか?」
「おう、すまんな」
ルーマは手紙に目を通し、また「あら?」とつぶやく。
「何やあったんか?」
「ええ」
ルーマから手紙の内容を口頭で伝えられ、レオンもきょとんとする。
「姿が見えへんなったなーと思とったら、そんなとこに行っとったんか」
「みたいですね。……もしかしてモールさん、あたしたちの行動を読んどったんやないでしょうか」
「ふむ……。この状況であいつらが攻め込んできたとして、ちょうどその時に『アレ』が暴れたら、そら確かにおもろいことになるな。
よし、またフォルナに頼んで、返事を送ってもらおか」
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謀議と謀議。
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3.
ロンダからレオン急病の報告を受けたシエナは、密かに葵と相談していた。
「どう思う? アンタの『預言』より、ずいぶん早いけど……」
「ん」
葵はいつものように、ベッドに半身を潜らせた状態で、眠たげに答える。
「多分それ、市国側が流した嘘だよ」
「えっ?」
「市国はあたしたちが、『市国は白猫党に対して無条件降伏する』ことを前提に行動してることを知ってると思う。そして同時に、それは年末頃だと目論んでいることも知ってる。
だからそれを逆手に取って、撹乱させようとしてるんだよ。基本的には、乗らない方がいい」
「そうね。それじゃ……」「でも」
葵は目をこすりながら、こう続けた。
「ミゲルさんは結構焦ってきてるよ。乗るかも知れない。
確かに普段から気の長いタイプだし、自分を抑えるのが上手だから、シエナがあれこれ無茶言っても、素直に従ってくれてる。
でもミッドランド陥落から市国西周辺の制圧までずっと快進撃が続いてたから、ここで動きが止まってることに、内心ではイライラしてるよ。いつもより気が短くなってるはず。
今はまだ半々ってところだけど、ミゲルさんは独断専行で攻め込むかも。嘘だって伝えても多分、結果には影響しないよ」
「そう……。じゃあ、嘘情報については触れないようにしようかしら。何か余計なコト言って、下手にアタシの責任を追求されても嫌だし。
じゃ、もしロンダが攻め込んだら、その場合はどうなるかしら?」
「被害は少なくないけど、勝つはず。その未来は結構、クリアに『見えてる』から」
「分かった。それじゃ、ロンダのやりたいように任せるわね」
「ん」
シエナはレオン危篤が偽情報である可能性を伏せ、ロンダに「現状を維持せよ」と伝えた。
一方、ゴールドコースト市国。
「ははは……、今日も大騒ぎしとるな」
新聞を眺めていたレオンが、傍らのルーマに笑いかける。
「おかげで大変です」
「すまんなぁ。ちゅうても忙しなるんが三ヶ月、四ヶ月早まっただけやないか」
「まあ、そうですけど。でもそのせいであたしの会社、火の車です。まだ譲渡も整理もできてないですもん」
「せやったな……。まあ、そこら辺はどこかから代理を通して、私が処理してもええけど」
「いえ、どうにか暇作って、あたしが自分でやります。思い入れがありますから」
「そうか」
葵の読み通り、「レオンが急病で倒れた」と言う情報は、白猫党を欺くために財団側が流したデマである。
これにより白猫軍に勇み足をさせ、不用意に市国占領を試みたところを撃退し、追い払おうと言うのが、レオンの考えだった。
「管理局からは何か言うてきてるか?」
「今のところは特に」
「そうか。まあ、引っかからへんかったら、それはそれや。その間に十分な防衛ラインが完成するし、攻められへんようにはなる。
どっちに転んだとしても、うちらが勝つ作戦や」
「あたしとしては、このまま撤退してほしいですけどね」
「向こうもそれなりにメンツがあるからな。何や理由が無い限りは、退こうとはせえへんやろな。……お?」
と、レオンが別の新聞に手を伸ばしたところで、その新聞の間からパサ、と手紙が落ちる。
「何や?」
「あ、拾いますよ」
ひょい、とルーマがつかみ、裏面を見る。
「あら?」
「誰からや?」
「モールさんです」
「モールさん? 何やろ」
「読みましょうか?」
「おう、すまんな」
ルーマは手紙に目を通し、また「あら?」とつぶやく。
「何やあったんか?」
「ええ」
ルーマから手紙の内容を口頭で伝えられ、レオンもきょとんとする。
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よし、またフォルナに頼んで、返事を送ってもらおか」
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2015.12.23 修正
2015.12.23 修正



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