短編・掌編
NEVER END QUEST
NEVER END QUEST
◆ゆうしゃ は ドラゴン に 295 の ダメージを あたえた!
◆ドラゴン を たおした!
「はぁ……はぁ……」
どうにかこのダンジョンのボスを仕留め、勇者の緊張が解ける。
「おつかれさま、勇者!」
仲間の僧侶が、回復呪文をかけてくれる。
「ありがとう、……?」
この時――勇者は、ほんのわずかながら、違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「いや、……?」
勇者は辺りをきょろきょろと見回し、首を傾げる。
「なあ、俺たちって2人パーティだったっけ?」
「何言ってるのよ、もう」
僧侶はクスクス笑い、こう返す。
「旅立ってからずっと、あたしたち2人で旅してきたじゃない!」
「……そう、だよ、な? はは、どうかしてるよな、俺」
この日以降、勇者はこのわずかな違和感を、何度も感じるようになった。
冒険の要所要所で、勇者は誰かがいないような、そんな感覚に幾度と無く苛まれ――。
「なあ、僧侶」
ついにある日、勇者はこんな提案をした。
「これからの旅はどんどん大変なものになっていくと思うんだ。
だから、ここらへんで仲間を増やそうと思うんだ」
「……」
僧侶の表情が、一瞬だが曇る。
「だ、ダメかな?」
「いいわよ」
一転、僧侶はにっこりと笑った。
「そ、そっか。じゃあ……」
反対されるかと思っていたのだが、僧侶はすんなりと了承する。
勇者はその日のうちに、魔法使いをパーティに招き入れた。
勇者が危惧していた通り、旅は苛酷さを増していく。
2人で進んでいたらあわや、と言う局面を何度も迎え、その度に魔法使いに助けられた。
「いやぁ、助かったよ」
「か、勘違いしないでよね! アンタがトロいから、手を出したくなっただけだし!」
「またそう言うことを言う……。ま、そこが可愛いけどさ」
「な、何言ってんのよ、もう! ……ありがと」
危険と隣り合わせのためか、いつしか勇者と魔法使いの間には、単なる親近感以外の感情が芽生え始めていた。
「……」
だが――。
「きゃあああっ!」
「魔法使い!」
これまでにない強敵が現れ、魔法使いはその爪に体を切り裂かれた。
「僧侶! 回復を……」
言いかけた勇者は、助け起こした魔法使いの体が、急に重たくなるのを感じる。
「……魔法使い?」
「……」
魔法使いは、既に事切れていた。
「うっ……ううっ……」
魔法使いの墓の前で、勇者が泣いている。
「なんでだ……なんでだよぉ……」
その背後に、いつものように僧侶が立っていた。
「勇者」
「ぐすっ……なんだよ……」
「やり直したい?」
「……え?」
「あたし、秘宝を持っているの」
彼女はポケットから、円盤状の小箱を取り出した。
「秘宝、……だって?」
「そう。過去に戻ることができるの」
僧侶は小箱を開け、凸型の、つるつるとした何かを勇者に向けた。
「これを押せば、あなたは過去に戻ることができるの」
「じゃあ、……じゃあ、魔法使いを救うこともできる、ってことか!?」
「でも、記憶は過去へは持って行けないの」
「……」
勇者はしばらく黙り込み――そして、自信満々の顔で、こう返した。
「それでもいい。俺ならきっと、救ってみせるさ」
「……分かったわ。……じゃあ」
僧侶の手に乗ったその秘宝を、勇者はためらわず押した。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
NEVER END QUEST
◆ゆうしゃ は ドラゴン に 289 の ダメージを あたえた!
◆ドラゴン を たおした!
「はぁ……はぁ……」
どうにかこのダンジョンのボスを仕留め、勇者の緊張が解ける。
「おつかれさま、勇者!」
仲間の僧侶が、回復呪文をかけてくれる。
「ありがとう、……?」
この時――勇者は、ほんのわずかながら、違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「いや、……?」
勇者は辺りをきょろきょろと見回し、首を傾げる。
「なあ、俺たちって2人パーティだったっけ?」
「何言ってるのよ、もう」
僧侶はクスクス笑い、こう返す。
「旅立ってからずっと、あたしたち2人で旅してきたじゃない!」
「……そう、だよ、な? はは、どうかしてるよな、俺」
照れ笑いを浮かべる勇者を見て――僧侶は心の中で、涙していた。
(もうこれが255回目のリセットよ、勇者?
いつになったらあなたは、このループから抜け出せるの……?)
◆しかし・・・
◆「ぜんかい」の しっぱいを しらない ゆうしゃ は
◆なんども おなじ せんたく を する!
◆なんども おなじ みち を ゆく!
◆そして なんども おなじ しっぱい を くりかえし
◆そして なんども
◆なんども
◆なんども
◆なんども
◆
◆ ・ ・ ・
◆しかし それ を しる のは せかい で ただ ひとり!
◆ひほう の もちぬし で ある そうりょ だけ で ある!
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◆ゆうしゃ は ドラゴン に 295 の ダメージを あたえた!
◆ドラゴン を たおした!
「はぁ……はぁ……」
どうにかこのダンジョンのボスを仕留め、勇者の緊張が解ける。
「おつかれさま、勇者!」
仲間の僧侶が、回復呪文をかけてくれる。
「ありがとう、……?」
この時――勇者は、ほんのわずかながら、違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「いや、……?」
勇者は辺りをきょろきょろと見回し、首を傾げる。
「なあ、俺たちって2人パーティだったっけ?」
「何言ってるのよ、もう」
僧侶はクスクス笑い、こう返す。
「旅立ってからずっと、あたしたち2人で旅してきたじゃない!」
「……そう、だよ、な? はは、どうかしてるよな、俺」
この日以降、勇者はこのわずかな違和感を、何度も感じるようになった。
冒険の要所要所で、勇者は誰かがいないような、そんな感覚に幾度と無く苛まれ――。
「なあ、僧侶」
ついにある日、勇者はこんな提案をした。
「これからの旅はどんどん大変なものになっていくと思うんだ。
だから、ここらへんで仲間を増やそうと思うんだ」
「……」
僧侶の表情が、一瞬だが曇る。
「だ、ダメかな?」
「いいわよ」
一転、僧侶はにっこりと笑った。
「そ、そっか。じゃあ……」
反対されるかと思っていたのだが、僧侶はすんなりと了承する。
勇者はその日のうちに、魔法使いをパーティに招き入れた。
勇者が危惧していた通り、旅は苛酷さを増していく。
2人で進んでいたらあわや、と言う局面を何度も迎え、その度に魔法使いに助けられた。
「いやぁ、助かったよ」
「か、勘違いしないでよね! アンタがトロいから、手を出したくなっただけだし!」
「またそう言うことを言う……。ま、そこが可愛いけどさ」
「な、何言ってんのよ、もう! ……ありがと」
危険と隣り合わせのためか、いつしか勇者と魔法使いの間には、単なる親近感以外の感情が芽生え始めていた。
「……」
だが――。
「きゃあああっ!」
「魔法使い!」
これまでにない強敵が現れ、魔法使いはその爪に体を切り裂かれた。
「僧侶! 回復を……」
言いかけた勇者は、助け起こした魔法使いの体が、急に重たくなるのを感じる。
「……魔法使い?」
「……」
魔法使いは、既に事切れていた。
「うっ……ううっ……」
魔法使いの墓の前で、勇者が泣いている。
「なんでだ……なんでだよぉ……」
その背後に、いつものように僧侶が立っていた。
「勇者」
「ぐすっ……なんだよ……」
「やり直したい?」
「……え?」
「あたし、秘宝を持っているの」
彼女はポケットから、円盤状の小箱を取り出した。
「秘宝、……だって?」
「そう。過去に戻ることができるの」
僧侶は小箱を開け、凸型の、つるつるとした何かを勇者に向けた。
「これを押せば、あなたは過去に戻ることができるの」
「じゃあ、……じゃあ、魔法使いを救うこともできる、ってことか!?」
「でも、記憶は過去へは持って行けないの」
「……」
勇者はしばらく黙り込み――そして、自信満々の顔で、こう返した。
「それでもいい。俺ならきっと、救ってみせるさ」
「……分かったわ。……じゃあ」
僧侶の手に乗ったその秘宝を、勇者はためらわず押した。
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NEVER END QUEST
◆ゆうしゃ は ドラゴン に 289 の ダメージを あたえた!
◆ドラゴン を たおした!
「はぁ……はぁ……」
どうにかこのダンジョンのボスを仕留め、勇者の緊張が解ける。
「おつかれさま、勇者!」
仲間の僧侶が、回復呪文をかけてくれる。
「ありがとう、……?」
この時――勇者は、ほんのわずかながら、違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「いや、……?」
勇者は辺りをきょろきょろと見回し、首を傾げる。
「なあ、俺たちって2人パーティだったっけ?」
「何言ってるのよ、もう」
僧侶はクスクス笑い、こう返す。
「旅立ってからずっと、あたしたち2人で旅してきたじゃない!」
「……そう、だよ、な? はは、どうかしてるよな、俺」
照れ笑いを浮かべる勇者を見て――僧侶は心の中で、涙していた。
(もうこれが255回目のリセットよ、勇者?
いつになったらあなたは、このループから抜け出せるの……?)
◆しかし・・・
◆「ぜんかい」の しっぱいを しらない ゆうしゃ は
◆なんども おなじ せんたく を する!
◆なんども おなじ みち を ゆく!
◆そして なんども おなじ しっぱい を くりかえし
◆そして なんども
◆なんども
◆なんども
◆なんども
◆
◆ ・ ・ ・
◆しかし それ を しる のは せかい で ただ ひとり!
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カウンタ、ウェブ素材

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今日の旅岡さん

~ Comment ~
初めてまして
初めてまして
足跡から参りました。
無限ループは怖いのと同時に
それだけ魔法使いを助けたいんだなと思いました
足跡から参りました。
無限ループは怖いのと同時に
それだけ魔法使いを助けたいんだなと思いました
NoTitle
>ポールさん
ということは、この無限ループが誰かの望んだ状態であると、……あ、まさか。
>カテンベさん
もしかしたら僧侶は、この状況を愉しむ、
歪んだ愛情を無意識に抱いているかも知れませんね。
彼女が望むべくしてなった状態がこれ、と。
だからこそ、彼女が秘宝を手にしているのかも。
恐らく倒すか逃げるはしてると思います。
この時の勇者には状況を把握する余裕が無く、
僧侶も勇者がどこで何をどうするか知ってるので、
細かい展開は端折ってるんでしょう。
ということは、この無限ループが誰かの望んだ状態であると、……あ、まさか。
>カテンベさん
もしかしたら僧侶は、この状況を愉しむ、
歪んだ愛情を無意識に抱いているかも知れませんね。
彼女が望むべくしてなった状態がこれ、と。
だからこそ、彼女が秘宝を手にしているのかも。
恐らく倒すか逃げるはしてると思います。
この時の勇者には状況を把握する余裕が無く、
僧侶も勇者がどこで何をどうするか知ってるので、
細かい展開は端折ってるんでしょう。
ちょっと気になりました
唯一記憶のある僧侶は同じことの繰り返しを残念に思てるっぽいのに、どうしてルート変更するよなことはしないの?
傷つき、心いためる勇者の姿を何度でもみたい、ていう誘惑に駆られてるんやろか?
それ以前に、魔法使いがやられてしまった、の時点では、まだ敵と交戦中っぽいけど、倒すでもなく逃走したわけでもないなら、リセット前にパーティ全滅してしまいそな気もするわ
傷つき、心いためる勇者の姿を何度でもみたい、ていう誘惑に駆られてるんやろか?
それ以前に、魔法使いがやられてしまった、の時点では、まだ敵と交戦中っぽいけど、倒すでもなく逃走したわけでもないなら、リセット前にパーティ全滅してしまいそな気もするわ
- #1974 カテンベ
- URL
- 2014.08/31 09:35
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NoTitle
勇者にとっては、永遠に1回めの試み。
その熱い想いも、最初の状態のまま、
永遠に変わることはありません。
……こう書くとロマンチックですが。