DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 3 ~19世紀の黄金銃~ 8
ウエスタン小説、第8話。
商売敵と手を組む。
8.

エミルたちはそのまま、駅のホームでジェンソン刑事を詰問し始めた。
「あなたの狙いは?」
「誰が答えるかよ」
「言わないならこっちから言うぜ。イクトミだろ?」
「知らんね。誰だ、そりゃ?」
「あら。『イクトミ』が人名ってことは知ってるのね」
「う……」
目をそらし、煙草をふかすジェンソン刑事に、アデルが馴れ馴れしく言葉をかける。
「まあ、そんな邪険にしなさんな。協力してマイナスになることは無いんだぜ? 俺たちの目的は限りなく近いが、厳密には別なんだからさ」
「どう言う意味だ?」
チラ、といぶかしげな目を向けたジェンソン刑事に、アデルはこう続ける。
「あんたの目的はイクトミだ。だが俺たちの目的は、イクトミが盗んだ黄金銃だ。
協力してイクトミを捕まえたところで、俺たちはイクトミなんかどうでもいい。俺たちにとって大事なのは黄金銃の方なんだからさ。
だからさ、ここは一つ、協力し合わないか?」
「俺に何のメリットがある? お前らみたいな足手まといがいても迷惑だ」
「その足手まといに裏をかかれたのは誰かしら?」
「……チッ」
忌々しそうににらみつけてくるジェンソン刑事に、エミルはこう続けた。
「今こいつが言ったみたいに、あたしたちの目的はあくまで黄金銃よ。イクトミの逮捕には協力してあげるし、そいつの身柄もあんたの勝手にしていいわ。懸賞金がどうの、って話もしない。
少なくともあたしたちには、あんたを出し抜けるくらいの技量はあるし、悪い話じゃないはずよ?」
「……」
ジェンソン刑事は吸口ギリギリまで燃えた煙草を捨て、二本目を懐から取り出す。
「火、くれ」
「おう」
素直に火を点けたアデルに、ジェンソン刑事は渋々と言いたげな目を向けた。
「分かった。そうまで言うなら協力してやってもいい。
確認するが、お前らは黄金銃さえ手に入ればいいんだな?」
「ええ」「そうだ」
「いいだろう。それじゃ、俺の知ってることを話そう。
どうせ次の列車が来るまで、3時間はあるんだからな。コーヒーでも飲みながら話そうや」
そう返したジェンソン刑事に、エミルは「あら」と声を上げる。
「珍しいわね。てっきりバーボンかテキーラって言うかと思ったけど」
「あんたらも東部者だろ? 西部の雑な酒は嫌いなんだ」
「気が合うわね。あたしもコーヒー派よ。そっちのもね」
3人は一旦駅を後にし、近くのサルーンに移った。
「さて、と。じゃあまず、イクトミの出自辺りから話すとするか」
「出自?」
尋ねたアデルに、ジェンソン刑事は口にくわえた煙草を向ける。
「イクトミがヘンテコなお宝ばっかり盗んでるってことは知ってるな?」
「ああ、まあ」
「そこんとこに関係してくる。
あんたらはどうか知らんが、俺んとこじゃ『科学捜査』って奴を積極的に取り入れてるんだよ。マサチューセッツからお偉い先生を呼んだりしてな。
その一例として、犯人の犯行動機を、そいつがガキだった頃に何かしらの原因があるんじゃないかって推察ができるかって言う実験をしてるんだが、その関係でイクトミについても、ガキの頃の調査をしてた。
で、風のうわさ通り、確かに奴にはフランスの血が入ってるらしいって話の裏は取れた」
「へぇ……」
「で、今回奴が盗んだ黄金銃についてだが、妙な点が一つあるんだ」
「ん?」
話が飛び、エミルたちは揃って首を傾げる。
「まあ、聞け。
あんたらは不思議に思わないか? 黄金製と言っても銃は銃、本来はドンパチやるためのブツだ。美術品の題材にしちゃ不釣り合いなこと、この上無い。
だのに情報筋によれば、競売で4万、5万の高値が付くって話だ。こう聞けば変だろ?」
「確かにね。SAAと同じくらいの金なら、せいぜい1万ちょっと程度でしょ?」
「金の量だけ考えりゃ、確かにそうさ。
しかしモノには作った職人の『技術料』ってのが込みになってる。黄金銃に5万なんて高値が付く理由は、それだ」
「名のある職人が作ったってことか?」
「そう言うことだ。そいつの名はディミトリ・アルジャン。フランス系の名ガンスミスだ」
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8.

エミルたちはそのまま、駅のホームでジェンソン刑事を詰問し始めた。
「あなたの狙いは?」
「誰が答えるかよ」
「言わないならこっちから言うぜ。イクトミだろ?」
「知らんね。誰だ、そりゃ?」
「あら。『イクトミ』が人名ってことは知ってるのね」
「う……」
目をそらし、煙草をふかすジェンソン刑事に、アデルが馴れ馴れしく言葉をかける。
「まあ、そんな邪険にしなさんな。協力してマイナスになることは無いんだぜ? 俺たちの目的は限りなく近いが、厳密には別なんだからさ」
「どう言う意味だ?」
チラ、といぶかしげな目を向けたジェンソン刑事に、アデルはこう続ける。
「あんたの目的はイクトミだ。だが俺たちの目的は、イクトミが盗んだ黄金銃だ。
協力してイクトミを捕まえたところで、俺たちはイクトミなんかどうでもいい。俺たちにとって大事なのは黄金銃の方なんだからさ。
だからさ、ここは一つ、協力し合わないか?」
「俺に何のメリットがある? お前らみたいな足手まといがいても迷惑だ」
「その足手まといに裏をかかれたのは誰かしら?」
「……チッ」
忌々しそうににらみつけてくるジェンソン刑事に、エミルはこう続けた。
「今こいつが言ったみたいに、あたしたちの目的はあくまで黄金銃よ。イクトミの逮捕には協力してあげるし、そいつの身柄もあんたの勝手にしていいわ。懸賞金がどうの、って話もしない。
少なくともあたしたちには、あんたを出し抜けるくらいの技量はあるし、悪い話じゃないはずよ?」
「……」
ジェンソン刑事は吸口ギリギリまで燃えた煙草を捨て、二本目を懐から取り出す。
「火、くれ」
「おう」
素直に火を点けたアデルに、ジェンソン刑事は渋々と言いたげな目を向けた。
「分かった。そうまで言うなら協力してやってもいい。
確認するが、お前らは黄金銃さえ手に入ればいいんだな?」
「ええ」「そうだ」
「いいだろう。それじゃ、俺の知ってることを話そう。
どうせ次の列車が来るまで、3時間はあるんだからな。コーヒーでも飲みながら話そうや」
そう返したジェンソン刑事に、エミルは「あら」と声を上げる。
「珍しいわね。てっきりバーボンかテキーラって言うかと思ったけど」
「あんたらも東部者だろ? 西部の雑な酒は嫌いなんだ」
「気が合うわね。あたしもコーヒー派よ。そっちのもね」
3人は一旦駅を後にし、近くのサルーンに移った。
「さて、と。じゃあまず、イクトミの出自辺りから話すとするか」
「出自?」
尋ねたアデルに、ジェンソン刑事は口にくわえた煙草を向ける。
「イクトミがヘンテコなお宝ばっかり盗んでるってことは知ってるな?」
「ああ、まあ」
「そこんとこに関係してくる。
あんたらはどうか知らんが、俺んとこじゃ『科学捜査』って奴を積極的に取り入れてるんだよ。マサチューセッツからお偉い先生を呼んだりしてな。
その一例として、犯人の犯行動機を、そいつがガキだった頃に何かしらの原因があるんじゃないかって推察ができるかって言う実験をしてるんだが、その関係でイクトミについても、ガキの頃の調査をしてた。
で、風のうわさ通り、確かに奴にはフランスの血が入ってるらしいって話の裏は取れた」
「へぇ……」
「で、今回奴が盗んだ黄金銃についてだが、妙な点が一つあるんだ」
「ん?」
話が飛び、エミルたちは揃って首を傾げる。
「まあ、聞け。
あんたらは不思議に思わないか? 黄金製と言っても銃は銃、本来はドンパチやるためのブツだ。美術品の題材にしちゃ不釣り合いなこと、この上無い。
だのに情報筋によれば、競売で4万、5万の高値が付くって話だ。こう聞けば変だろ?」
「確かにね。SAAと同じくらいの金なら、せいぜい1万ちょっと程度でしょ?」
「金の量だけ考えりゃ、確かにそうさ。
しかしモノには作った職人の『技術料』ってのが込みになってる。黄金銃に5万なんて高値が付く理由は、それだ」
「名のある職人が作ったってことか?」
「そう言うことだ。そいつの名はディミトリ・アルジャン。フランス系の名ガンスミスだ」
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ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
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