DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 3 ~19世紀の黄金銃~ 14
ウエスタン小説、第14話。
「コヨーテ」。
14.
「……!?」
イクトミとジェンソン刑事は目を丸くし、倒れた二人がいるはずの場所に目をやる。
「い、……いねえ!?」
「いつの間に!?」
「あんたたちがベラベラ裏事情をしゃべってバカ笑いしてる間に、よ」
そう答えながら、エミルとアデルが銃を構えて現れる。
「俺たちがこれっぽっちも気付いてないと思ってたのか?
凶悪犯を捕まえといて、本部に連絡もせず、いきなりアジトへ乗り込むような奴が怪しくないわけ無いだろうが」
「それ以前に、よ。どうして地元警察の捜査がとっくに終わった後で、あんたはポートマン邸に現れたのかしら?
別件での捜査なんて言ったけど、それは真っ赤な嘘。本当は次のヤマ、ワットウッド邸に忍び込むための下準備。相棒のイクトミをグレッグ・ポートマンJrに変装させるための、材料探しだったのよ」
「ぐっ……」
ジェンソン刑事の顔を、ぼたぼたと汗が流れ落ちる。
「恐らくこれまでの、イクトミの犯行の半分以上は、あんたが加担してるはずだ。そうでなきゃ、これだけ滅多やたらに盗みを働きまくって、未だに誰も捕まえられないってわけが無い。
インディアン神話でも、イクトミには『コヨーテ』ってパートナーがいるからな。あんたがそうなんだろ?」
「……ふ、ふふ」
ジェンソン刑事は袖で額の汗を拭き、開き直る。
「バレちゃあ、仕方ねえ。……今度こそ、死んでもらうぜッ!」
パン、パンとリボルバーの音が響く。
ところが、ジェンソン刑事の正面にいるエミルたちは、ピンピンしている。
「な……っ? なんで死なない!?」
「さっきも言った通り、あんたの正体にはクレイトンフォードにいた時点で粗方、気が付いてた。
だもんで、駅であんたの煙草に火を点けた隙に、銃をすり替えておいたのさ。空包しか入ってないやつとな。
あの時、俺の鼻先に突き付けてくれたおかげで、まったく同じやつを調達できた。いやぁ、助かったぜ」
アデルがニヤニヤしながら言い放った言葉に、ジェンソン刑事は顔面蒼白になる。
「……ばっ、バカなっ」
ジェンソン刑事はなおもリボルバーの引き金を引くが、出るのは音ばかりである。
やがて破裂音も聞こえなくなり、カチ、カチと弾倉が回るだけになった。
「う……うう……っ」
「あんたのライトニングは、これよ」
エミルはジェンソン刑事にそう告げ、彼が持っていたリボルバーを彼に向かって発砲した。
「うっ……、ぎゃあああっ!?」
両手足を撃たれ、ジェンソン刑事は絶叫する。
「殺さないでおいてあげるわ。あんたを連邦特務捜査局に引き渡せば、口止め料がたんまり出てきそうだもの」
「ひいっ……、ひいっ……」
「で、こっちのライトニングにはあと2発、弾が残ってる。あたしが元々持ってるスコフィールドにも、6発。
ついでに言うとアデルも銃を持ってる。逃げた瞬間、あたしたちはマジであんたを星条旗にするわよ」
「ついでって言うなよ。……ま、そう言うことだ」
エミルたちに銃を向けられ、イクトミの顔には明らかに、焦りの色が浮かんでいた。
「これは……、なるほど、なるほど。絶体絶命ですな、何の紛れも無く」
「そうよ。分かったら、そこに落ちてる手錠を自分でかけなさい」
「大人しく投降すりゃ、命までは取りゃしない。そこのクズ刑事と違って、俺たちは正義を大事にするからな」
「……」
イクトミは黙り込み――次の瞬間、天井まで跳び上がった。
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「コヨーテ」。
14.
「……!?」
イクトミとジェンソン刑事は目を丸くし、倒れた二人がいるはずの場所に目をやる。
「い、……いねえ!?」
「いつの間に!?」
「あんたたちがベラベラ裏事情をしゃべってバカ笑いしてる間に、よ」
そう答えながら、エミルとアデルが銃を構えて現れる。
「俺たちがこれっぽっちも気付いてないと思ってたのか?
凶悪犯を捕まえといて、本部に連絡もせず、いきなりアジトへ乗り込むような奴が怪しくないわけ無いだろうが」
「それ以前に、よ。どうして地元警察の捜査がとっくに終わった後で、あんたはポートマン邸に現れたのかしら?
別件での捜査なんて言ったけど、それは真っ赤な嘘。本当は次のヤマ、ワットウッド邸に忍び込むための下準備。相棒のイクトミをグレッグ・ポートマンJrに変装させるための、材料探しだったのよ」
「ぐっ……」
ジェンソン刑事の顔を、ぼたぼたと汗が流れ落ちる。
「恐らくこれまでの、イクトミの犯行の半分以上は、あんたが加担してるはずだ。そうでなきゃ、これだけ滅多やたらに盗みを働きまくって、未だに誰も捕まえられないってわけが無い。
インディアン神話でも、イクトミには『コヨーテ』ってパートナーがいるからな。あんたがそうなんだろ?」
「……ふ、ふふ」
ジェンソン刑事は袖で額の汗を拭き、開き直る。
「バレちゃあ、仕方ねえ。……今度こそ、死んでもらうぜッ!」
パン、パンとリボルバーの音が響く。
ところが、ジェンソン刑事の正面にいるエミルたちは、ピンピンしている。
「な……っ? なんで死なない!?」
「さっきも言った通り、あんたの正体にはクレイトンフォードにいた時点で粗方、気が付いてた。
だもんで、駅であんたの煙草に火を点けた隙に、銃をすり替えておいたのさ。空包しか入ってないやつとな。
あの時、俺の鼻先に突き付けてくれたおかげで、まったく同じやつを調達できた。いやぁ、助かったぜ」
アデルがニヤニヤしながら言い放った言葉に、ジェンソン刑事は顔面蒼白になる。
「……ばっ、バカなっ」
ジェンソン刑事はなおもリボルバーの引き金を引くが、出るのは音ばかりである。
やがて破裂音も聞こえなくなり、カチ、カチと弾倉が回るだけになった。
「う……うう……っ」
「あんたのライトニングは、これよ」
エミルはジェンソン刑事にそう告げ、彼が持っていたリボルバーを彼に向かって発砲した。
「うっ……、ぎゃあああっ!?」
両手足を撃たれ、ジェンソン刑事は絶叫する。
「殺さないでおいてあげるわ。あんたを連邦特務捜査局に引き渡せば、口止め料がたんまり出てきそうだもの」
「ひいっ……、ひいっ……」
「で、こっちのライトニングにはあと2発、弾が残ってる。あたしが元々持ってるスコフィールドにも、6発。
ついでに言うとアデルも銃を持ってる。逃げた瞬間、あたしたちはマジであんたを星条旗にするわよ」
「ついでって言うなよ。……ま、そう言うことだ」
エミルたちに銃を向けられ、イクトミの顔には明らかに、焦りの色が浮かんでいた。
「これは……、なるほど、なるほど。絶体絶命ですな、何の紛れも無く」
「そうよ。分かったら、そこに落ちてる手錠を自分でかけなさい」
「大人しく投降すりゃ、命までは取りゃしない。そこのクズ刑事と違って、俺たちは正義を大事にするからな」
「……」
イクトミは黙り込み――次の瞬間、天井まで跳び上がった。
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