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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 3 ~19世紀の黄金銃~ 15

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    ウエスタン小説、第15話。
    怪盗紳士の謎の言葉。

    15.
    「なっ……!」
     視界から一瞬相手が消え、アデルは慌ててライフルを構える。
    「伊達にイクトミ(蜘蛛男)と名乗っているわけではないのですよ」
     だが次の瞬間、アデルの頭上にイクトミが移動し、そのまま両肩に乗る。
    「ぐあっ……!?」
     アデルは体勢を崩し、床に押し倒される。
     イクトミはアデルの肩に両足を載せたまま、リボルバーを彼の頭に向ける。
     が――次の瞬間、イクトミは再び跳び上がる。そして一瞬前まで彼がいた空間を、2発の弾丸が通過していく。
    「みだりに発砲しないでいただきたい。貴重なコレクションに傷が付いてしまう」
    「だったらじっとしてなさいよッ!」
     エミルはジェンソン刑事から奪っていたリボルバーを捨て、自分のリボルバーを構える。
     イクトミは天井に貼り付きながら、慇懃な仕草でかぶりを振る。
    「それは了承いたしかねますな。星条旗はわたくしの肌に合わないものでね」
    「だったらフランス国旗でもいいけど? 真っ赤な血、白いスーツ、真っ蒼な死に顔。お似合いじゃないかしら?」
    「まったく、乱暴なお嬢さんだ」
     イクトミは両手を離し、足だけでぶらんと天井から垂れ下がり、その姿勢のまま、またも肩をすくめて見せた。
    「『大閣下』はお喜びになるでしょうが、ね」
    「……!」
     イクトミの言葉に、エミルの顔が真っ蒼になった。



    「ど、どうした、エミル……?」
     フラフラと起き上がったアデルに、エミルは顔を背け、応えない。
     だが――エミルは突如、絶叫しながら、イクトミに向かってリボルバーを乱射した。
    「……る、……どおおおああああああッ!」
     天井にいくつもの穴が開く。
     だが、イクトミはそれよりも早く床に降り立ち、全弾をかわしていた。
    「はあっ……、はあっ……」
     エミルは蒼い顔をしたまま、リボルバーに弾を込め始める。
     だが、イクトミが素早く動き、エミルの腕に手刀を振り下ろした。
    「あっ……!」
     リボルバーが落ちると共に、イクトミはまたも跳び上がり、出口付近にまで移動した。
    「Calmez-vous mademoiselle, s'il vous plait.(落ち着いて下さいませ、お嬢様)
     ……今宵はこの辺にいたしましょう。首尾よくあなたか彼のどちらかを殺せたとしても、残ったもう一方に殺されるでしょうからね。
     このまま戦えば、双方の被害はあまりにも大きい。であれば、戦わぬが吉と言うもの。このまま失礼させていただきます。
     次にお目見えする時まで、ごきげんよう」
     一方的に別れを告げ、イクトミはそのまま消えた。



     イクトミが姿を消してから1時間ほどの間、アデルは気を失ったジェンソン刑事の介抱と拘束を行い、そして茫然自失の状態にあったエミルを座らせ、毛布をかけ、部屋に置いてあったバーボンを飲ませた。
    「落ち着いたか?」
    「……ええ」
     ようやく顔に血の気が戻ってきたエミルに、アデルは恐る恐る質問する。
    「イクトミって、お前の知り合い、……じゃないよな?」
    「ええ。初対面よ」
    「でも、……なんか、あっちは知ってるっぽかったな」
    「みたいね」
    「あいつに何て言ったんだ? 『……るど』とか何とか言ってた気がしたけど」
    「……さあ? 我を忘れてたもの」
    「あいつが言ってた『大閣下』って誰だ?」
    「……」
     エミルはうつむき、小さな声でこう返した。
    「……知らないわ……」
    「そう、か」
     これ以上は何も聞けず、アデルも黙り込んだ。



     エミルたちが街に戻ったのは結局、翌日になってからだった。
     ちなみに――イクトミが言っていた通り、グレッグはこの日、貨物列車の中で発見、保護された。
     ジェンソン刑事についても、連絡を入れて数日のうちに、パディントン局長を含む探偵局の人間と連邦特務捜査局の人間が連れ立って現れ、即座に拘束・逮捕された。

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    ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
    ありがとうございます!
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