黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第9部

    白猫夢・飛葛抄 2

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    麒麟を巡る話、第442話。
    ハーミット家の反逆。

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    2.
     両腕を背中に回す形で縛られ、秋也たちは拘置所へと連行されていた。
    「なあ」
    「……」
    「なあって」
    「……」
    「無視すんなよ、ジャン。何であんなヤツに従うんだ」
    「……」
     元同僚たちは一切口を開かず、黙々と縄を引いている。
    「脅迫されたの?」
    「……っ」
     が、ベルの一言に、わずかに呼吸を乱した。
    「そっか……」
    「……すみません、それ以上は聞かないで下さい」
    「ああ、分かったよ」
     こうして秋也たちを連行している彼らもまた、何者かに監視されていると悟り、秋也たちは黙り込んだ。

     その時だった。
     一行の目の前に突然、黒い影が現れる。
    「……!?」
     とっさに小銃を構えた隊員の前に、その影はぴったりと張り付く。
     そして瞬時に手刀と足払いを加え、隊員の体勢を崩す。
    「うあっ……!?」
     影は宙に浮いた小銃をつかみ、銃床で隊員の頭をひっぱたいた。
    「か……」
     その影を見た秋也とベルは、同時に叫ぶ。
    「葛!?」
    「大丈夫だった、二人とも?」
    「ま、待てっ!」
     と、秋也たちの背後にいた隊員が小銃を構える。
    「待たないっ!」
     葛は小銃を投げつけ、隊員の顔に叩きつけた。
    「ぐえっ……」
     隊員は鼻血を噴き、仰向けに倒れて気絶してしまった。
    「お、お前、どうしてココに?」
    「ソレより、まずは二人とも武器を装備して。助けてほしいの」
     そう頼んだ葛に、二人は唖然とする。
    「『助けて』ってどう言うこと? たった今、あたしたちが助けてもらったんだけど……?」
    「うん。他に助けたい人がいるんだ。リヴィエル卿から、家族が人質になってるって聞いたから」
    「……マジかよ」
     葛から事情を聞き、秋也たちの顔に怒りの色が差す。
    「ふざけやがって……! マジで独裁者になるつもりかよ!?」
    「正気じゃないよ!」
    「怒るのは後。今はサッと行って、パッと奪還して、ちゃちゃっと逃げなきゃ」
    「……だな」
     気絶した隊員たちから武器を奪い、三人は拘置所へと向かった。



     秋也たちが見抜いていた通り、この時の様子は別のSS隊員によって確認されていた。
    「緊急連絡! 元隊長および元副隊長が、隊員2名の装備を奪って逃走しました!」
    《何だと!? 縛っていたはずじゃ……》
    「それが、突然何者かが現れ、連行していた隊員を……」
     と、通信にアテナが割り込んでくる。
    《想定の範囲内です。高い確率で、それはカズラ・ハーミットでしょう》
    「カズラ? と言うと、元隊長の娘さんの?」
    《ええ。彼女は恐らく、拘置所に向かいます。前日に拘束したリヴィエル卿の家族を奪還しに向かうはずです》
    「りょ、了解です。では追走し、再度拘束を試み……」
    《無駄でしょう。一瞬のうちに隊員2名を倒したカズラ嬢、そしてハーミット夫妻を総合した戦闘力を鑑みれば、あなた1名では返り討ちに遭うことは明白です。
     それよりも一度本部に戻り、完全武装して迎撃すべきです》
    「それは、……つまり」
    《全SS隊員に告ぐ。これは首相命令です。
     シュウヤ・コウ、ベル・ハーミット、そしてカズラ・ハーミットの3名を、特別公務執行妨害ならびに機密侵害、および国家反逆の罪で逮捕しなさい。武器の使用を許可します。もしも抵抗した場合、射殺を許可します。
     いいえ、見つけ次第射殺しなさい。抵抗の有無は問いません》
    「……っ」
     あまりにも冷徹な、恐るべき命令に、隊員の誰もが凍りつく。
    《応答しなさい》
     しかし、淡々と命じるアテナに、隊員たちは全員、「……了解しました」とうなずくしかなかった。



     一方、その頃――。
    「それで……?」
     市街地の外れに、大柄の車が一台停まっていた。
    「卿の、悪い予感が当たったわ。カズラちゃんは今、拘置所に向かってるそうよ」
    「そうか……」
     技術者風の男性が、腕を組んでうなる。
    「あなたも、来てくれる?」
    「そりゃ、勿論さ。……カリナがマチェレの寄宿舎に行ってて、良かったな」
    「この国にいないなら、むしろ安全よ。流石のエトワールも、そうそう手出しなんかできないはずだし。
     もし不穏を感じたのなら、わたしたちが確保に行けばいいのよ。カズラちゃんみたいに、ね」
    「……はは、そうだな」
     二人は会話を止め、車に乗り込んだ。
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