「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・飛葛抄 3
麒麟を巡る話、第443話。
人質救出作戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
拘置所に着き、葛たち三人は物陰から周囲を警戒する。
「……SSのヤツらはいないみたいだな」
「他の兵士にも動きは無さそう。流石のアテナも、まだ全軍を掌握してはいないみたいね」
「とは言え、うだうだしてられねーな。……ちょっと待ってろ」
秋也がすい、と物陰から離れ――次の瞬間、拘置所前で立番していた兵士たちがぱた、と倒れた。
「はやっ」
「昔取ったナントカってヤツだ。金毛九尾の鬼コーチの背後取るより、百倍簡単だよ」
「すごいね、パパ」
夫婦二人で兵士を物陰に隠す間に、葛は入口をそっと開け、人の姿が無いことを確認する。
「大丈夫、入れるよー」
「おう」
素早く中へと侵入し、三人は廊下を進む。
途中で何度か兵士に出くわすが、ことごとく秋也が峰打ちや手刀で音もなく倒し、気絶させる。
「パパってサムライだって聞いてたけど……、ニンジャみたい」
「アホなコト言ってないで、こっち来いよ」
ほとんど問題もなく、三人は拘置所の檻へとたどり着いた。
「リヴィエル卿の奥さんと子供さん、ドコに閉じ込められてる?」
「えーと……」
葛は素早く管理簿を確認し、その名前を見付ける。
「あった! E―4!」
ベルに出入り口の見張りを任せ、秋也と葛はその房へ向かう。
「助けに来ました! ご無事ですか!?」
「……!」
檻の中に閉じ込められていた、土気色の顔をしていた3人が、顔を上げる。
「今出します!」
「ほ、本当に……?」
「助かるんですか? 主人は?」
「……!」
夫人の言葉に、葛は青ざめた。
「……あっちゃー、そうだった」
「葛?」
「大変、パパ! もしかしたらリヴィエルさん……」
それを聞いて、秋也の顔も真っ青になる。
「って、お前、まさか」
「うん。すぐにリヴィエルさんの家を飛び出しちゃったから、もしかしたら拘束されちゃってるかも」
「……グズグズしてらんねーな」
秋也は檻を開け、中の3人を連れ出す。
「ベル! 外は大丈夫そうか?」
「今のところは……」
脱出ルートの安全を確認・確保しつつ、一行は拘置所の外へと向かう。
そして出入口に着いたところで、ここでもベルが外をうかがい、手招きする。
「うん、今は大丈夫そう。……いい? まず、あたしが出る。向こうの壁際まで行って、あたしが2回手を振ったら、みんな来て。でも1回だけだったら、しばらく出ないで」
「分かった」
全員がうなずくのを確認し、ベルがそっと扉を開けた。
が、その直後――葛が彼女の襟をつかみ、乱暴に引き戻す。戻ってきたベルに全員が押される形となり、バタバタと倒れる。
「おわっ!? ……何するのよ、カズラ!?」
ベルが振り返ったその瞬間、扉に無数の穴が空く。つい一瞬前まで皆がいた場所に、大量の銃弾が突き刺さった。
「……!」
「待ち伏せ!?」
気配を悟られぬよう、今度は恐る恐る、銃弾で開けられた穴から外を確認する。
そこには多数の兵士がサーチライトを背に並んでいるのが、ぼんやりとだが確認できた。
「囲まれてる……!」
「おい葛、なんで待ち伏せてるコトが分かったんだ? まさかお前も……」「違う違う、勘とか予知とかじゃないよー」
葛はぱたぱたと手を振り、こう説明した。
「さっきSSの人を倒してから10分か15分は経ってるし、パパたちを見張ってる人がいたなら多分エトワールさんに報告してるだろうし、ソレなら体勢を整え直してココで待ち構えさせるくらいは指示してるだろうなー、って思ったから。
で、ママにフェイントさせてみた」
「先に言いなさいよ、もう。寿命縮んじゃうってば」
「ごめーん」
胸に手を当て、冷汗をかいているベルにぺこっと頭を下げつつ、葛も外を注意深く確認する。
「……眩しくて見えにくいけど、やっぱいるみたいだよー、エトワールさん。前に立ってるエルフの人がそうだよねー?」
「チッ……」
悪態をつきつつ、秋也も確認する。
「確かにいやがるな。……で、どうする?」
誰ともなしに尋ねた秋也に対し、ベルも葛も、何も答えられない。
「……だよな。戻っても檻があるだけだし、アレだけ煌々と照らされちゃ、隙を見つけて飛び出す、ってのも無理だ。
万策尽きたな……」
秋也の言葉に反論することは、諦めの悪い葛にもできなかった。
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3.
拘置所に着き、葛たち三人は物陰から周囲を警戒する。
「……SSのヤツらはいないみたいだな」
「他の兵士にも動きは無さそう。流石のアテナも、まだ全軍を掌握してはいないみたいね」
「とは言え、うだうだしてられねーな。……ちょっと待ってろ」
秋也がすい、と物陰から離れ――次の瞬間、拘置所前で立番していた兵士たちがぱた、と倒れた。
「はやっ」
「昔取ったナントカってヤツだ。金毛九尾の鬼コーチの背後取るより、百倍簡単だよ」
「すごいね、パパ」
夫婦二人で兵士を物陰に隠す間に、葛は入口をそっと開け、人の姿が無いことを確認する。
「大丈夫、入れるよー」
「おう」
素早く中へと侵入し、三人は廊下を進む。
途中で何度か兵士に出くわすが、ことごとく秋也が峰打ちや手刀で音もなく倒し、気絶させる。
「パパってサムライだって聞いてたけど……、ニンジャみたい」
「アホなコト言ってないで、こっち来いよ」
ほとんど問題もなく、三人は拘置所の檻へとたどり着いた。
「リヴィエル卿の奥さんと子供さん、ドコに閉じ込められてる?」
「えーと……」
葛は素早く管理簿を確認し、その名前を見付ける。
「あった! E―4!」
ベルに出入り口の見張りを任せ、秋也と葛はその房へ向かう。
「助けに来ました! ご無事ですか!?」
「……!」
檻の中に閉じ込められていた、土気色の顔をしていた3人が、顔を上げる。
「今出します!」
「ほ、本当に……?」
「助かるんですか? 主人は?」
「……!」
夫人の言葉に、葛は青ざめた。
「……あっちゃー、そうだった」
「葛?」
「大変、パパ! もしかしたらリヴィエルさん……」
それを聞いて、秋也の顔も真っ青になる。
「って、お前、まさか」
「うん。すぐにリヴィエルさんの家を飛び出しちゃったから、もしかしたら拘束されちゃってるかも」
「……グズグズしてらんねーな」
秋也は檻を開け、中の3人を連れ出す。
「ベル! 外は大丈夫そうか?」
「今のところは……」
脱出ルートの安全を確認・確保しつつ、一行は拘置所の外へと向かう。
そして出入口に着いたところで、ここでもベルが外をうかがい、手招きする。
「うん、今は大丈夫そう。……いい? まず、あたしが出る。向こうの壁際まで行って、あたしが2回手を振ったら、みんな来て。でも1回だけだったら、しばらく出ないで」
「分かった」
全員がうなずくのを確認し、ベルがそっと扉を開けた。
が、その直後――葛が彼女の襟をつかみ、乱暴に引き戻す。戻ってきたベルに全員が押される形となり、バタバタと倒れる。
「おわっ!? ……何するのよ、カズラ!?」
ベルが振り返ったその瞬間、扉に無数の穴が空く。つい一瞬前まで皆がいた場所に、大量の銃弾が突き刺さった。
「……!」
「待ち伏せ!?」
気配を悟られぬよう、今度は恐る恐る、銃弾で開けられた穴から外を確認する。
そこには多数の兵士がサーチライトを背に並んでいるのが、ぼんやりとだが確認できた。
「囲まれてる……!」
「おい葛、なんで待ち伏せてるコトが分かったんだ? まさかお前も……」「違う違う、勘とか予知とかじゃないよー」
葛はぱたぱたと手を振り、こう説明した。
「さっきSSの人を倒してから10分か15分は経ってるし、パパたちを見張ってる人がいたなら多分エトワールさんに報告してるだろうし、ソレなら体勢を整え直してココで待ち構えさせるくらいは指示してるだろうなー、って思ったから。
で、ママにフェイントさせてみた」
「先に言いなさいよ、もう。寿命縮んじゃうってば」
「ごめーん」
胸に手を当て、冷汗をかいているベルにぺこっと頭を下げつつ、葛も外を注意深く確認する。
「……眩しくて見えにくいけど、やっぱいるみたいだよー、エトワールさん。前に立ってるエルフの人がそうだよねー?」
「チッ……」
悪態をつきつつ、秋也も確認する。
「確かにいやがるな。……で、どうする?」
誰ともなしに尋ねた秋也に対し、ベルも葛も、何も答えられない。
「……だよな。戻っても檻があるだけだし、アレだけ煌々と照らされちゃ、隙を見つけて飛び出す、ってのも無理だ。
万策尽きたな……」
秋也の言葉に反論することは、諦めの悪い葛にもできなかった。
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