「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・腐国抄 2
麒麟を巡る話、第450話。
タカ傾向。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
「交渉は大成功よ。この国は白猫党との貿易に同意したわ」
「おめでとうございます、総裁」
シエナをはじめとする白猫党幹部陣はプラティノアール市内のホテルにて、今回の作戦成功を祝っていた。
「コレで来年には、このプラティノアール王国は我々の手中に収まるわね」
「でしょうな」
党の財務対策本部長、オラースが深々とうなずく。
「確かに我々との貿易により、倉庫と言う倉庫に積み上げられた工業製品は順次消化され、この国は大量の外貨を獲得できるでしょう。
しかし一方で、2年続いた大不況の爪痕は、国民の予想以上に深い。入ってきた外貨はまず、国家体制の立て直しに使われることでしょう。どれほど多くの額が入ってきたとしても、です。
国民経済への波及、即ち国民の懐にカネが入り景気が回復すると言うような効果は、ほぼ見られないと考えて間違いないでしょうな」
「そうなれば、国民の不満はさらに増すことになるでしょう」
オラースの所見を、政務対策本部長であるトレッドが継ぐ。
「国民からすれば、ようやく獲得できた外貨を国王や王室政府が横取り、独占しているように映るのは明白。
早晩、国中で反王政の風潮が沸き立つでしょう」
「その世論を我が党が背負い、王国側を糾弾・非難。
それをさらに世論が認め、容認し、あおり立て――こうした双方の活動が循環したその結果、国民の信頼を失った王室政府は、倒れることになるでしょう。
後はヘブン王国などのように、王族を軟禁してその権力を封じ込め、政治には一切、関与させないように図る。政府閣僚・大臣らもその任を解き、更迭する。
プラティノアール王国の息の根は、確実に止まるはずです」
幹事長、イビーザの言葉を聞き、シエナは嬉しそうにうなずいた。
「ええ。いくら西方人が同族主義的だからって、『自分たちを虐げるような王様』を許すはずが無いわ。
そして『悪者』を退治した我々こそが、この国の新たな正義、権威となるのよ」
そこで一旦言葉を切り、そしてシエナはニヤッと笑って見せた。
「ソレが、『第三段階』の終了。そして……」
「この国を足がかりに、我々は東方向へ侵攻を開始すると言うわけですな」
「そうよ。
半世紀にわたって安全路線、独立路線で進んできたこの国が、まさか侵略を始めるなんて誰も思ってないわ。今は、ね。
ましてや西方三国で何百年も内輪もめしてたって言うのに、反対側へ攻め入るなんて、西方人の誰もが、夢にも思わないでしょうね。
コレ以上無いくらいに油断してる西方各国を、ガッツリ喰らう。ソレこそが我々の最終目標、西方攻略における『最終段階』なのよ」
「……素晴らしいことです」
央中を侵略した570年以降、白猫党内の空気は、他国・他地域侵略に傾いていた。
当初から侵略論に反対の姿勢を取っていたトレッドやイビーザなどの穏健派も、党全体の空気に呑まれる形となり、やがて公然と反対することは無くなった。
これに加え、「預言者」の言葉にも他地域侵略に言及したものが目立ち始め、「預言者の言葉と党首決定に従う」ことを党是とする党員らは、侵略を嬉々として容認するようになっていた。
反対意見が公の場から消え、預言者をはじめとして党全体の意見が侵略推進に傾いたことで、シエナを軸とする好戦派の勢いはさらに加熱。
今回のように、シエナが西方攻略に乗り出すことを発表した時も、万雷の拍手が党首と預言者に送られこそすれ、彼女らを咎めるような意見は一切、上がることはなかった。
とは言え、それでも懸命にブレーキをかけようとする者は、いなくなったわけではない。
「しかし総裁」
いつものように硬い表情を浮かべつつ、イビーザが挙手する。
「実際に侵攻するにあたっては、やはりロンダ司令による統率が不可欠でしょう。
党首命令で軍を動かすことは可能でしょうが、軍の最高権力者たる司令を無視した行動を執られては、党の体制維持にひびが入る恐れがあります」
「ええ。勿論、分かってるわ。ロンダには動いてもらう予定よ。
例え今は、反戦に固執してるとしてもね」
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タカ傾向。
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「交渉は大成功よ。この国は白猫党との貿易に同意したわ」
「おめでとうございます、総裁」
シエナをはじめとする白猫党幹部陣はプラティノアール市内のホテルにて、今回の作戦成功を祝っていた。
「コレで来年には、このプラティノアール王国は我々の手中に収まるわね」
「でしょうな」
党の財務対策本部長、オラースが深々とうなずく。
「確かに我々との貿易により、倉庫と言う倉庫に積み上げられた工業製品は順次消化され、この国は大量の外貨を獲得できるでしょう。
しかし一方で、2年続いた大不況の爪痕は、国民の予想以上に深い。入ってきた外貨はまず、国家体制の立て直しに使われることでしょう。どれほど多くの額が入ってきたとしても、です。
国民経済への波及、即ち国民の懐にカネが入り景気が回復すると言うような効果は、ほぼ見られないと考えて間違いないでしょうな」
「そうなれば、国民の不満はさらに増すことになるでしょう」
オラースの所見を、政務対策本部長であるトレッドが継ぐ。
「国民からすれば、ようやく獲得できた外貨を国王や王室政府が横取り、独占しているように映るのは明白。
早晩、国中で反王政の風潮が沸き立つでしょう」
「その世論を我が党が背負い、王国側を糾弾・非難。
それをさらに世論が認め、容認し、あおり立て――こうした双方の活動が循環したその結果、国民の信頼を失った王室政府は、倒れることになるでしょう。
後はヘブン王国などのように、王族を軟禁してその権力を封じ込め、政治には一切、関与させないように図る。政府閣僚・大臣らもその任を解き、更迭する。
プラティノアール王国の息の根は、確実に止まるはずです」
幹事長、イビーザの言葉を聞き、シエナは嬉しそうにうなずいた。
「ええ。いくら西方人が同族主義的だからって、『自分たちを虐げるような王様』を許すはずが無いわ。
そして『悪者』を退治した我々こそが、この国の新たな正義、権威となるのよ」
そこで一旦言葉を切り、そしてシエナはニヤッと笑って見せた。
「ソレが、『第三段階』の終了。そして……」
「この国を足がかりに、我々は東方向へ侵攻を開始すると言うわけですな」
「そうよ。
半世紀にわたって安全路線、独立路線で進んできたこの国が、まさか侵略を始めるなんて誰も思ってないわ。今は、ね。
ましてや西方三国で何百年も内輪もめしてたって言うのに、反対側へ攻め入るなんて、西方人の誰もが、夢にも思わないでしょうね。
コレ以上無いくらいに油断してる西方各国を、ガッツリ喰らう。ソレこそが我々の最終目標、西方攻略における『最終段階』なのよ」
「……素晴らしいことです」
央中を侵略した570年以降、白猫党内の空気は、他国・他地域侵略に傾いていた。
当初から侵略論に反対の姿勢を取っていたトレッドやイビーザなどの穏健派も、党全体の空気に呑まれる形となり、やがて公然と反対することは無くなった。
これに加え、「預言者」の言葉にも他地域侵略に言及したものが目立ち始め、「預言者の言葉と党首決定に従う」ことを党是とする党員らは、侵略を嬉々として容認するようになっていた。
反対意見が公の場から消え、預言者をはじめとして党全体の意見が侵略推進に傾いたことで、シエナを軸とする好戦派の勢いはさらに加熱。
今回のように、シエナが西方攻略に乗り出すことを発表した時も、万雷の拍手が党首と預言者に送られこそすれ、彼女らを咎めるような意見は一切、上がることはなかった。
とは言え、それでも懸命にブレーキをかけようとする者は、いなくなったわけではない。
「しかし総裁」
いつものように硬い表情を浮かべつつ、イビーザが挙手する。
「実際に侵攻するにあたっては、やはりロンダ司令による統率が不可欠でしょう。
党首命令で軍を動かすことは可能でしょうが、軍の最高権力者たる司令を無視した行動を執られては、党の体制維持にひびが入る恐れがあります」
「ええ。勿論、分かってるわ。ロンダには動いてもらう予定よ。
例え今は、反戦に固執してるとしてもね」
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450話到達、と言うことでいつもの所感やら近況報告やら。
第9部、現時点でどうにか脱稿しています。
今作でやりたかったことの一つを盛り込めたので、出来にはそこそこ満足。
もしかしたら多少の齟齬や矛盾があるかも知れないので、何度か修正するかも。
ただ、今後の展開については、かなり悩んでいるのが現状です。
今のところ、第10部までの構想はある程度まとまっていますが、
もうボチボチ終局に持って行こうとも考えています。
で、第10部で完結させるか、それとも第11部を設けて引っ張るか。
現時点では後者になる可能性が若干高いかも。
とは言え、第10部の執筆状況によっては、そこで終わりに持って行くかも、と考えていたりもします。
要するに今、迷いながら第10部の執筆にあたっているところです。
終わりは見えているけれど、そこまでどう手を寄せていくか。
まるで将棋か囲碁を打っている気分です……。
ともかく、来年中には「白猫夢」が完結する見込みとなっています。
やはり当初の予想通り、3年以上かかりました。非常に長丁場でしたね……。
ただ、第10部連載の前に、ポールさんとの約束を果たそうと思っています。
恐らく年明けに、成果を公表出来るのではないかな、と。
あと、折角「白猫夢」前半で色々と魅力あるキャラが出たのに、活かしきれなかったのが悔やまれるところ。
回収なり活用なりしたいので、その辺りで短編を制作するかも知れません。
450話到達、と言うことでいつもの所感やら近況報告やら。
第9部、現時点でどうにか脱稿しています。
今作でやりたかったことの一つを盛り込めたので、出来にはそこそこ満足。
もしかしたら多少の齟齬や矛盾があるかも知れないので、何度か修正するかも。
ただ、今後の展開については、かなり悩んでいるのが現状です。
今のところ、第10部までの構想はある程度まとまっていますが、
もうボチボチ終局に持って行こうとも考えています。
で、第10部で完結させるか、それとも第11部を設けて引っ張るか。
現時点では後者になる可能性が若干高いかも。
とは言え、第10部の執筆状況によっては、そこで終わりに持って行くかも、と考えていたりもします。
要するに今、迷いながら第10部の執筆にあたっているところです。
終わりは見えているけれど、そこまでどう手を寄せていくか。
まるで将棋か囲碁を打っている気分です……。
ともかく、来年中には「白猫夢」が完結する見込みとなっています。
やはり当初の予想通り、3年以上かかりました。非常に長丁場でしたね……。
ただ、第10部連載の前に、ポールさんとの約束を果たそうと思っています。
恐らく年明けに、成果を公表出来るのではないかな、と。
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回収なり活用なりしたいので、その辺りで短編を制作するかも知れません。



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