「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・探葵抄 2
麒麟を巡る話、第461話。
半世紀ぶりの……。
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2.
「うーむ……」
食卓を囲みながら、ジーナがうなっている。
「どしたの、ばーちゃん?」
尋ねた葛に対し、ジーナは首をかしげつつ、一聖に話しかける。
「いや……。カズセと言うたか、お主の声はどこかで聞いた覚えがある、と思うてのう」
「え? ……あ」
「うん?」
「いや、何でもねー、……何でもないです。人違いじゃないでしょうか?」
「ふーむ……?」
腑に落ち無さそうな顔をしつつ、鮭のスープを口に運ぶジーナを見て、葛は一聖に耳打ちする。
(ドコで会ったの?)
(50年くらい前にな。コイツの旦那さんと一緒に会ったコトがある)
(うっそぉ)
(いや、マジ。ミッドランドの天狐事変ってヤツ)
「テンコ?」
と、ジーナが顔を挙げる。その言葉に釣られ、秋也も目を向けてきた。
「天狐って?」
「へ? あ、いえ、……あー、と、わたしと葛さん、今、6世紀前半のミッドランドの政治経済について調べてまして」
「ああ、天狐事変の話か? ソレならオレ、割と詳しいぜ? オレの知り合いが何人も関わってたし、オレのお袋やお義母さんも、その場にいたから」
「おお、知っておるぞ。何でも聞いてくれ」
「(知ってるっつーの。オレが張本人だっつーの)じゃあ、えーと……」
一聖は当たり障りのない会話をしつつ、夕食の場をどうにか乗り切った。
「ふへー……、疲れたぜ」
夕食後、葛のベッドにぽふんと体を預けた一聖に呆れながら、葛が尋ねる。
「じゃあなんで、『ごちそうになります』とか言ったのよー」
「うまいメシがあるなら食べるだろ?」
「図々しいねー、ホント」
「うっせ。……んで、だ。
葵が秋也を襲った理由の二つ目だが、恐らく葛、お前を引き寄せるためだ」
「あたしを?」
きょとんとする葛に、一聖が枕に顔を埋めたまま、ピンと人差し指を立てて答える。
「お前も葵と同様、晴奈の姉さんとハーミット夫妻の血筋を引いている。どんな才能、潜在能力を秘めてるか、あるいは既に開花してるか、葵にとっちゃ不気味でならねーはずだ。何しろ葵自身が才能と異能の塊なんだから、な。
だから秋也を呼び水にして、お前を引き寄せたんだ。実際、お前は秋也の異状を察して、あの場に来ただろ?」
「うん、まあ、そうだけど」
「オレが来なきゃ、葵はあの場でお前を殺したはずだ。秋也みたくわざわざ復活させて力を引き出させたりせずに、一撃で仕留めて、な」
その言葉に、葛はぶるっと身震いする。
「お姉ちゃんは、本当にあたしを殺すんだ、……よね」
「葵は白猫の言いなりだ。『やれ』と言われたら、葵はやる。例えソレが、自分の家族を殺せって話でもだ」
一聖はベッドから起き上がり、その上にあぐらをかく。
「葵がオレのせいで仕留め損なったとして、ソレで白猫は諦めると思うか?」
「……まさか?」
「ああ。オレがいる限りは狙ってきたりしねーだろうが、少しでもオレと離れたら、即座に殺しにかかるだろう。
だから今後、オレと一緒に行動しろ。って言うかココからはオレのお願いに関わってくる話だが、ちっと一緒に来てもらいてートコがあるんだ」
「え?」
一聖は懐から金色と紫色に光る金属質の板を取り出し、そこに何かの地図を映す。
「今は別の国になっちまってるが、ココにはかつて、エカルラット王国ってのがあった。ソコのスカーレットヒルって街に、掘り出したい物がある。
ソレが、オレがお前を頼ってきた理由でもある。そしてもしかしたら、葵が秋也を襲った三つ目の理由かも知れない」
「掘り出したい物……? 何があるの?」
「刀だ。オレが打った神器でな、まだソコに眠ってるはずだ。
とは言え、オレに剣術の心得はあんまり無い。葵と剣術で戦おうとしても、確実に負ける。ま、魔術勝負ならまだ分はあるだろうが」
「その刀で、あたしが戦えってコト?」
「そうだ。……もう戦えるのが、お前しかいねーんだ」
「どゆコト?」
話の展開が見えず、葛はこめかみを手で押さえ始めた。
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半世紀ぶりの……。
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「うーむ……」
食卓を囲みながら、ジーナがうなっている。
「どしたの、ばーちゃん?」
尋ねた葛に対し、ジーナは首をかしげつつ、一聖に話しかける。
「いや……。カズセと言うたか、お主の声はどこかで聞いた覚えがある、と思うてのう」
「え? ……あ」
「うん?」
「いや、何でもねー、……何でもないです。人違いじゃないでしょうか?」
「ふーむ……?」
腑に落ち無さそうな顔をしつつ、鮭のスープを口に運ぶジーナを見て、葛は一聖に耳打ちする。
(ドコで会ったの?)
(50年くらい前にな。コイツの旦那さんと一緒に会ったコトがある)
(うっそぉ)
(いや、マジ。ミッドランドの天狐事変ってヤツ)
「テンコ?」
と、ジーナが顔を挙げる。その言葉に釣られ、秋也も目を向けてきた。
「天狐って?」
「へ? あ、いえ、……あー、と、わたしと葛さん、今、6世紀前半のミッドランドの政治経済について調べてまして」
「ああ、天狐事変の話か? ソレならオレ、割と詳しいぜ? オレの知り合いが何人も関わってたし、オレのお袋やお義母さんも、その場にいたから」
「おお、知っておるぞ。何でも聞いてくれ」
「(知ってるっつーの。オレが張本人だっつーの)じゃあ、えーと……」
一聖は当たり障りのない会話をしつつ、夕食の場をどうにか乗り切った。
「ふへー……、疲れたぜ」
夕食後、葛のベッドにぽふんと体を預けた一聖に呆れながら、葛が尋ねる。
「じゃあなんで、『ごちそうになります』とか言ったのよー」
「うまいメシがあるなら食べるだろ?」
「図々しいねー、ホント」
「うっせ。……んで、だ。
葵が秋也を襲った理由の二つ目だが、恐らく葛、お前を引き寄せるためだ」
「あたしを?」
きょとんとする葛に、一聖が枕に顔を埋めたまま、ピンと人差し指を立てて答える。
「お前も葵と同様、晴奈の姉さんとハーミット夫妻の血筋を引いている。どんな才能、潜在能力を秘めてるか、あるいは既に開花してるか、葵にとっちゃ不気味でならねーはずだ。何しろ葵自身が才能と異能の塊なんだから、な。
だから秋也を呼び水にして、お前を引き寄せたんだ。実際、お前は秋也の異状を察して、あの場に来ただろ?」
「うん、まあ、そうだけど」
「オレが来なきゃ、葵はあの場でお前を殺したはずだ。秋也みたくわざわざ復活させて力を引き出させたりせずに、一撃で仕留めて、な」
その言葉に、葛はぶるっと身震いする。
「お姉ちゃんは、本当にあたしを殺すんだ、……よね」
「葵は白猫の言いなりだ。『やれ』と言われたら、葵はやる。例えソレが、自分の家族を殺せって話でもだ」
一聖はベッドから起き上がり、その上にあぐらをかく。
「葵がオレのせいで仕留め損なったとして、ソレで白猫は諦めると思うか?」
「……まさか?」
「ああ。オレがいる限りは狙ってきたりしねーだろうが、少しでもオレと離れたら、即座に殺しにかかるだろう。
だから今後、オレと一緒に行動しろ。って言うかココからはオレのお願いに関わってくる話だが、ちっと一緒に来てもらいてートコがあるんだ」
「え?」
一聖は懐から金色と紫色に光る金属質の板を取り出し、そこに何かの地図を映す。
「今は別の国になっちまってるが、ココにはかつて、エカルラット王国ってのがあった。ソコのスカーレットヒルって街に、掘り出したい物がある。
ソレが、オレがお前を頼ってきた理由でもある。そしてもしかしたら、葵が秋也を襲った三つ目の理由かも知れない」
「掘り出したい物……? 何があるの?」
「刀だ。オレが打った神器でな、まだソコに眠ってるはずだ。
とは言え、オレに剣術の心得はあんまり無い。葵と剣術で戦おうとしても、確実に負ける。ま、魔術勝負ならまだ分はあるだろうが」
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- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
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もうこの世界の不確定要素は葛ちゃんしか残ってないんですか(^_^;)
ラプラスの魔と戦うのってたいへんですね(^_^;)
ラプラスの魔と戦うのってたいへんですね(^_^;)
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