「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・探葵抄 3
麒麟を巡る話、第462話。
マーク王子のスキャンダル。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
双月暦573年のはじめ、プラティノアールでは「エトワール病」が蔓延していた頃。
ルナたち「チーム・フェニックス」の実働部隊――ルナ、パラ、フィオ、そして一聖の4人は、央中と央南の境、屏風山脈のとある場所にいた。
「蒸し暑い……」
「そう? ちょうどいいくらいだと思うけど」
「気温28度前後、湿度65%前後。不快指数77.78を計測いたしました。大半の人間が不快と感じる数値です」
「詳しく言わなくても不快だよ」
「まーた始まったか、いつもの夫婦漫才が」
「まだ結婚してないよっ」
取り留めのない会話を交わしつつ、ルナが地図を確認する。
「パラ、この辺りで間違いないわね?」
「はい。わたくしと主様、カズセちゃんの三者で行った、三点交差法による空間振動測定調査の結果、この周辺に『テレポート』と思われる、空間の異常振動を数回感知しました。
当該魔術の使用がアオイ・ハーミットによるものであれば、何らかの施設が密かに建設されていることは確実と思われます。確率は……」「確率はいいわ。この周辺の、どこにありそう?」
問われたパラは、きょろきょろと辺りを見回す。
「……計測中……」
そしてやや右を向き、その方向を指し示した。
「ここより2時方向、約2.72キロメートル先に、微力な魔力源を検知しました。200~300MPP、周囲一帯の平均値よりもわずかながら大きな数値です」
「多分そこね。……一息ついてから行きましょ」
ルナの提案により、一行はそこで小休止をとることにした。
昼食に持ってきたサンドイッチを頬張りながら、フィオがこんなことを言い出した。
「もぐ……、そう言やさ、ルナさん。マークとシャランのことなんだけど」
「ん?」
「事実上、まだ結婚してないわけだけどさ」
「そうね。……あー」
そこで、ルナがケラケラと笑い出す。
「シャラン、3ヶ月なんだって?」
「らしいよ。……だから今、すごく揉めてるらしい。
特にトラス陛下から『王族ともあろう者が結婚前に子供を設けるとは、恥ずかしいと思わんのかっ』って、めっちゃくちゃ怒られてるらしい」
「じゃあさっさと結婚しちゃえばいいじゃない。しちゃえばどうとでもごまかせるでしょ?」
「プレタ陛下も同意見だってさ。でも肝心のマークが、うんって言わないんだよ」
「なんでよ?」
ルナはけげんな表情を浮かべかけ、そして「ああ」と納得した声を上げ、フィオとパラを指差す。
「あんたらね、その原因」
「みたいだね。『親友で同窓のフィオがパラとまだなのに、僕たちだけ先になんて』って言って聞かないんだよ。
まったく、変なところで意固地なんだから」
「違うわね」
ルナは紅茶をくい、と飲みつつ、フィオの意見を否定する。
「あの子のことだから何やかや理由付けて、先延ばしにしようとしてんのよ。ビビってんのよ、要するに」
「……あり得る」
うなずいたフィオに、パラがこうつぶやく。
「であればわたくしたちも、急がねばなりませんね」
「だなぁ。さっさと退路断って決断させなきゃ、シャランがかわいそうだ」
「『かわいそう』っつーか」
と、フルーツサンドを飲み込み終えて、一聖が口を開く。
「その話って、マークが自分から迫ったワケじゃねーよな? どう考えてもシャランからアプローチした気がすんだけど」
これを受けて、3人は同時にうなずく。
「だろうね」
「多分そーでしょ」
「可能性は限りなく濃厚です」
「だったら『かわいそう』ってのは……」「あーら、カズちゃん」「もごっ」
核心を突こうとした一聖の口に、ルナは新たなサンドイッチを押し付ける。
「そう言うことは、言わない方が楽しいじゃない」
「……ひっでーヤツらだなぁ、お前ら」
自分の口の型が付いたたまごサンドを手に取り、一聖は苦笑いを浮かべる。
それに対し、ルナはしれっとこう言ってのけた。
「ひどいのはマークよ。そうしとかないと、またマークがあーだこーだ言い訳して、結婚を先延ばしするに決まってるわ」
「あー……、ソレもそっか。じゃ、言わね」
一聖は、今度はいたずらっぽく笑いながら、たまごサンドを頬張った。
@au_ringさんをフォロー
マーク王子のスキャンダル。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
双月暦573年のはじめ、プラティノアールでは「エトワール病」が蔓延していた頃。
ルナたち「チーム・フェニックス」の実働部隊――ルナ、パラ、フィオ、そして一聖の4人は、央中と央南の境、屏風山脈のとある場所にいた。
「蒸し暑い……」
「そう? ちょうどいいくらいだと思うけど」
「気温28度前後、湿度65%前後。不快指数77.78を計測いたしました。大半の人間が不快と感じる数値です」
「詳しく言わなくても不快だよ」
「まーた始まったか、いつもの夫婦漫才が」
「まだ結婚してないよっ」
取り留めのない会話を交わしつつ、ルナが地図を確認する。
「パラ、この辺りで間違いないわね?」
「はい。わたくしと主様、カズセちゃんの三者で行った、三点交差法による空間振動測定調査の結果、この周辺に『テレポート』と思われる、空間の異常振動を数回感知しました。
当該魔術の使用がアオイ・ハーミットによるものであれば、何らかの施設が密かに建設されていることは確実と思われます。確率は……」「確率はいいわ。この周辺の、どこにありそう?」
問われたパラは、きょろきょろと辺りを見回す。
「……計測中……」
そしてやや右を向き、その方向を指し示した。
「ここより2時方向、約2.72キロメートル先に、微力な魔力源を検知しました。200~300MPP、周囲一帯の平均値よりもわずかながら大きな数値です」
「多分そこね。……一息ついてから行きましょ」
ルナの提案により、一行はそこで小休止をとることにした。
昼食に持ってきたサンドイッチを頬張りながら、フィオがこんなことを言い出した。
「もぐ……、そう言やさ、ルナさん。マークとシャランのことなんだけど」
「ん?」
「事実上、まだ結婚してないわけだけどさ」
「そうね。……あー」
そこで、ルナがケラケラと笑い出す。
「シャラン、3ヶ月なんだって?」
「らしいよ。……だから今、すごく揉めてるらしい。
特にトラス陛下から『王族ともあろう者が結婚前に子供を設けるとは、恥ずかしいと思わんのかっ』って、めっちゃくちゃ怒られてるらしい」
「じゃあさっさと結婚しちゃえばいいじゃない。しちゃえばどうとでもごまかせるでしょ?」
「プレタ陛下も同意見だってさ。でも肝心のマークが、うんって言わないんだよ」
「なんでよ?」
ルナはけげんな表情を浮かべかけ、そして「ああ」と納得した声を上げ、フィオとパラを指差す。
「あんたらね、その原因」
「みたいだね。『親友で同窓のフィオがパラとまだなのに、僕たちだけ先になんて』って言って聞かないんだよ。
まったく、変なところで意固地なんだから」
「違うわね」
ルナは紅茶をくい、と飲みつつ、フィオの意見を否定する。
「あの子のことだから何やかや理由付けて、先延ばしにしようとしてんのよ。ビビってんのよ、要するに」
「……あり得る」
うなずいたフィオに、パラがこうつぶやく。
「であればわたくしたちも、急がねばなりませんね」
「だなぁ。さっさと退路断って決断させなきゃ、シャランがかわいそうだ」
「『かわいそう』っつーか」
と、フルーツサンドを飲み込み終えて、一聖が口を開く。
「その話って、マークが自分から迫ったワケじゃねーよな? どう考えてもシャランからアプローチした気がすんだけど」
これを受けて、3人は同時にうなずく。
「だろうね」
「多分そーでしょ」
「可能性は限りなく濃厚です」
「だったら『かわいそう』ってのは……」「あーら、カズちゃん」「もごっ」
核心を突こうとした一聖の口に、ルナは新たなサンドイッチを押し付ける。
「そう言うことは、言わない方が楽しいじゃない」
「……ひっでーヤツらだなぁ、お前ら」
自分の口の型が付いたたまごサンドを手に取り、一聖は苦笑いを浮かべる。
それに対し、ルナはしれっとこう言ってのけた。
「ひどいのはマークよ。そうしとかないと、またマークがあーだこーだ言い訳して、結婚を先延ばしするに決まってるわ」
「あー……、ソレもそっか。じゃ、言わね」
一聖は、今度はいたずらっぽく笑いながら、たまごサンドを頬張った。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~