「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・探葵抄 4
麒麟を巡る話、第463話。
秘密施設、発見。
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4.
休憩を終えたルナたち一行は、パラが感知した「謎の魔力源」に向かって歩き始めた。
「で、さ」
と、フィオが口を開く。
「もしもここにカツミがいたら、こないだ言ってたあの『契約』、果たしてくれるんだよな?」
「ん?」
「ほら、僕とパラを人間にって言う、あれ」
「ちょっと違うぜ」
一聖は人差し指をピン、と立て、こう訂正する。
「親父を発見できて、そして『何らかの事情で動けない状況にあれば、それを助けてから』、……だ。
勿論、ただソコでのんびり渾沌とメシ食ってて団欒(だんらん)してるだけで、すぐ連れて帰れそうな状況だったら、ソレで契約履行としていいけど、な」
「ああ、勿論分かってるさ」
「無論ココが外れ、つまり親父も渾沌もいねーってコトであれば、話は振り出しに戻る。
お前さんらの応援はしてやりてーが、克一門の契約に『先物』は無い。お前さんたちがきちんとやるコトやってくれなきゃ、こっちもちゃんとしたコトはしてやれねー」
「いいよ、仕方無いさ。むしろそう言うところがきちんとしてるからこそ、信頼できるってもんだ」
「物分かりが良くて助かるぜ。
……お?」
やがて一行の前に、建ってから10年も経っていないと思われる、煉瓦造りの建物が姿を表した。
しかし不思議なことに、その外壁は蔦(つた)でびっしりと覆われており、それだけを見れば、この建物は数十年、あるいは数百年は経っているようにも思わせていた。
「カモフラージュしてあるな。遠くから望遠鏡で見たくらいじゃ分からねーようにしてある。ソレにこうして近付いても、距離感がつかめねー。魔術で視覚認識をごまかしてるらしいな。
ソレ以外にも、色々と発見されにくいように擬装対策を施してあるらしい。パラみてーに細かく正確に計測ができるヤツがいなきゃ、ココは中央大陸を100年うろつき回っても、きっと見付けられなかっただろう、な」
「お褒めに預かり光栄です」
ぺこりとお辞儀をして、パラが建物を指し示す。
「センサー類は検知できません。一方で、入り口の類も同じく、発見できません」
「ふーん?」
ルナたちが近付いて調べてみても、確かに扉が見付けられない。
「『テレポート』で中に入ってたのかな」
「ソレだとオレたちが空間振動を検知できねーだろ? コレだけ厳重に密閉されてるんだからな。
……そっか。密閉、ね」
一聖は呪文を唱え、煙を立ち上らせた。
「『ホワイトアウト:ピンク』」
「なんでピンク?」
「目立つからな。後はオレの好み」
ピンク色の煙が周囲にたなびいたところで、一聖が建物のある箇所を指差した。
「あそこから空気が漏れてる」
「壁しかないように見えるけど」
「さっきも言ったろ? この建物は、術で視覚認識を狂わせてる。つまりドアを『ドアだ』と認識できないってコトだ」
一聖は壁をぺたぺたと触り、一箇所をトントンと叩く。
「オレの目にも確かに煉瓦と見えるが――ココだけ材質が違う」
そう言ってもう一度、呪文を唱える。
「……**……**……****……よっしゃ、解錠キー見っけ」
ガコン、と音を立てて、一面煉瓦だった壁に穴が開いた。
「さっすがー」
「へっへー」
一聖は得意げな顔で、胸を反らす。
その間にルナが、パラに尋ねる。
「中の様子はどう? 罠はありそうかしら?」
「検知できません」
「そう。……『ライトボール』」
ルナが光球を作り、中へと飛ばす。
光球は廊下をぐんぐんと奥に進み、やがて見えなくなってしまった。
「見た目より広いわね。地中に続いてるみたい」
「……」
一聖は中にそっと首を突っ込み、目を凝らす。
「中にもセンサーみたいなのは無いらしいな。奥へ進んでみるか」
一聖の言葉に、三人は無言でうなずいた。
一聖の言った通り、進んでも特に罠や仕掛けなどは無く、一行は廊下の最奥にあるドアの前に到着した。
「このドアにも罠は無さそうね。……開けるわよ」
「おう」
ルナがドアノブをひねり、そっと開ける。
奥の様子を確かめるため、今度も一聖が覗き見る。
「うげっ」
「どうしたの? ガスか何か?」
「いや、……胸クソ悪いものを見ただけだ」
「何が……?」
一聖は答えず、中へ入っていく。三人も続いて中へ入り――そして一聖と同様、嫌悪感に満ちたため息を漏らした。
「うっ……!」
「何よ……これ」
「幼体、と言うべきでしょうか」
部屋の中には、猫獣人の形をした「何か」が納められたガラス瓶が、ずらりと並んでいた。
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秘密施設、発見。
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休憩を終えたルナたち一行は、パラが感知した「謎の魔力源」に向かって歩き始めた。
「で、さ」
と、フィオが口を開く。
「もしもここにカツミがいたら、こないだ言ってたあの『契約』、果たしてくれるんだよな?」
「ん?」
「ほら、僕とパラを人間にって言う、あれ」
「ちょっと違うぜ」
一聖は人差し指をピン、と立て、こう訂正する。
「親父を発見できて、そして『何らかの事情で動けない状況にあれば、それを助けてから』、……だ。
勿論、ただソコでのんびり渾沌とメシ食ってて団欒(だんらん)してるだけで、すぐ連れて帰れそうな状況だったら、ソレで契約履行としていいけど、な」
「ああ、勿論分かってるさ」
「無論ココが外れ、つまり親父も渾沌もいねーってコトであれば、話は振り出しに戻る。
お前さんらの応援はしてやりてーが、克一門の契約に『先物』は無い。お前さんたちがきちんとやるコトやってくれなきゃ、こっちもちゃんとしたコトはしてやれねー」
「いいよ、仕方無いさ。むしろそう言うところがきちんとしてるからこそ、信頼できるってもんだ」
「物分かりが良くて助かるぜ。
……お?」
やがて一行の前に、建ってから10年も経っていないと思われる、煉瓦造りの建物が姿を表した。
しかし不思議なことに、その外壁は蔦(つた)でびっしりと覆われており、それだけを見れば、この建物は数十年、あるいは数百年は経っているようにも思わせていた。
「カモフラージュしてあるな。遠くから望遠鏡で見たくらいじゃ分からねーようにしてある。ソレにこうして近付いても、距離感がつかめねー。魔術で視覚認識をごまかしてるらしいな。
ソレ以外にも、色々と発見されにくいように擬装対策を施してあるらしい。パラみてーに細かく正確に計測ができるヤツがいなきゃ、ココは中央大陸を100年うろつき回っても、きっと見付けられなかっただろう、な」
「お褒めに預かり光栄です」
ぺこりとお辞儀をして、パラが建物を指し示す。
「センサー類は検知できません。一方で、入り口の類も同じく、発見できません」
「ふーん?」
ルナたちが近付いて調べてみても、確かに扉が見付けられない。
「『テレポート』で中に入ってたのかな」
「ソレだとオレたちが空間振動を検知できねーだろ? コレだけ厳重に密閉されてるんだからな。
……そっか。密閉、ね」
一聖は呪文を唱え、煙を立ち上らせた。
「『ホワイトアウト:ピンク』」
「なんでピンク?」
「目立つからな。後はオレの好み」
ピンク色の煙が周囲にたなびいたところで、一聖が建物のある箇所を指差した。
「あそこから空気が漏れてる」
「壁しかないように見えるけど」
「さっきも言ったろ? この建物は、術で視覚認識を狂わせてる。つまりドアを『ドアだ』と認識できないってコトだ」
一聖は壁をぺたぺたと触り、一箇所をトントンと叩く。
「オレの目にも確かに煉瓦と見えるが――ココだけ材質が違う」
そう言ってもう一度、呪文を唱える。
「……**……**……****……よっしゃ、解錠キー見っけ」
ガコン、と音を立てて、一面煉瓦だった壁に穴が開いた。
「さっすがー」
「へっへー」
一聖は得意げな顔で、胸を反らす。
その間にルナが、パラに尋ねる。
「中の様子はどう? 罠はありそうかしら?」
「検知できません」
「そう。……『ライトボール』」
ルナが光球を作り、中へと飛ばす。
光球は廊下をぐんぐんと奥に進み、やがて見えなくなってしまった。
「見た目より広いわね。地中に続いてるみたい」
「……」
一聖は中にそっと首を突っ込み、目を凝らす。
「中にもセンサーみたいなのは無いらしいな。奥へ進んでみるか」
一聖の言葉に、三人は無言でうなずいた。
一聖の言った通り、進んでも特に罠や仕掛けなどは無く、一行は廊下の最奥にあるドアの前に到着した。
「このドアにも罠は無さそうね。……開けるわよ」
「おう」
ルナがドアノブをひねり、そっと開ける。
奥の様子を確かめるため、今度も一聖が覗き見る。
「うげっ」
「どうしたの? ガスか何か?」
「いや、……胸クソ悪いものを見ただけだ」
「何が……?」
一聖は答えず、中へ入っていく。三人も続いて中へ入り――そして一聖と同様、嫌悪感に満ちたため息を漏らした。
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