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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第9部

    白猫夢・探葵抄 5

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    麒麟を巡る話、第464話。
    白猫製造工場。

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    5.
    「……気持ち悪い」
     その光景に対し率直な感想を述べたフィオに、全員が無言でうなずき、同意した。
    「これ、何?」
     尋ねたフィオに、一聖が答える。
    「人工の、人間だな。ホムンクルスってヤツだ」
    「どう言うこと?」
    「どう、って?」
    「色々。『人工の人間』って、どう言う意味さ?」
    「そのまんまだよ。男と女の間から生まれた子供じゃない、土や水やらから練り上げて造った、人工の生物ってコトだ」
    「これを造ったのがアオイとして……、なんでこんなの造ったんだ?」
    「麒麟の姉さん――白猫の魂を、コイツらのドレかに移すつもりなんだろう」
    「なんでそんなことを?」
     今度はルナが尋ねる。
    「フィオが持ってたあの写真が答えだ。白猫はいつまでも、夢の世界なんかに引き籠もってるつもりは無いらしい。
     現世に蘇るべく、自分の体を造ってるんだ。ソレも、ただ蘇るだけじゃない」
     一聖はコンコンと、ガラス瓶を叩く。
    「人工的に、より強い肉体を造って乗り移るつもりらしい。
     パラ、コイツらの魔力は?」
    「平均6000MPPを計測しています」
    「6000!?」
     とんでもない値を返され、フィオが仰天する。
    「6000って、ルナさんの2倍近いじゃないか!」
    「そう言うコトだ。だが恐らく、ココら辺にあるのはどちらかと言えば、失敗作だろうな」
    「え?」
     一聖は通路の奥へ進み、辺りを見回す。
    「麒麟の姉さんは、コイツらの3~4倍は魔力を持ってた。新しい体を造ろうってのに、本物より弱くしてどうすんだ?」
    「マジか……」
    「奥にも扉がある。あの向こうにも、ものすげー強い魔力を感じる。あっちにあるのが恐らく、その本命だろうな」
    「じゃあ、もしかしたら」
    「ああ。その奥に何か、手がかりがあるかも知れねー。もしくは、目的のモノが、な」
     一聖の言葉に、一行は顔を見合わせ、装備を再確認する。
    「……行ってみましょう」
    「ああ」
     4人は警戒しつつ、奥の部屋に移った。

     扉の向こうにも同様に、ガラス瓶がずらりと並んでいる。だが、その半分以上が空であり、残り半分にも一聖がホムンクルスと呼んでいたものはほとんど入っておらず、水しか無い。
    「取り出して実験したらしいな」
    「実験?」
    「ただ魔力を詰めりゃ、魔力のある人間ができるってワケじゃねー。うまいコト調整しなきゃ、その魔力で自家中毒を起こすんだ。
     その調整がうまく行ってるか、取り出して検査なり何なりしてたんだろう。……ま、オレたちにとっては運の良いコトに、まだ成功しちゃいねーらしいが」
    「なんで分かるんだ?」
    「ココにあるのは前の部屋以上の失敗作だ。魔力もさっきの半分か3分の1か、もっと低いか。
     もっといいのがまだゴロゴロ残ってるってのにそんなので実験してるってのは、成功した後でやるコトじゃねーからな」
    「なるほど」
    「……しかし、となると」
     一聖は首をかしげ、空になった瓶をぺたぺたと触る。
    「さっき感じた強い魔力ってのが何だったのか……?」
    「カツミさんとか?」
    「かも知れねーが、今はほとんど、……いや」
     と、一聖が黙り込む。
    「カズセちゃん?」
    「しっ」
     一聖はフィオを黙らせ、さらに奥をじっと見つめる。
    「……フィオ。どうやら当たりだぜ」
    「え?」
    「わずかだが今、気配を感じた。奥だ」
     一聖はどこからか鉄扇を取り出し、そろりと歩き出す。
    「気配を感じたり、かと思えばふっと消えたり……。どうやら封印か何かされて、まともに魔術を発するコトもできねーらしい」
    「気を付けて進みましょう」
    「ああ」
     4人は最大限に警戒しつつ、一歩一歩、足元を確かめるように進んでいった。
    「……開けるぞ」
     一聖の言葉に、ルナたちは無言でうなずく。
     それを確認し、一聖はゆっくりとドアを開けた。

     奥の部屋が露わになった途端、一聖は息を呑む。
    「……親父!」
     部屋の中央に、この3年探し回ったあの克大火とその九番弟子、克渾沌の姿があった。
     だが、何か様子がおかしい。二人は微塵も動く様子を見せないのだ。いや、それどころか、まるで絵に描いてあるかのように、平面的に見える。
    「……! やべ」
     一聖は慌てて、鉄扇を真横の壁に突き刺した。
     そして次の瞬間――とてつもなく強い引力が、一聖たちの体にまとわりついてきた。
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