「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第9部
白猫夢・跳猫抄 3
麒麟を巡る話、第473話。
克大火の弟子;神器を造りし者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「な、何と言うことを、……い、いや、それよりも、何と言う魔力だ。
完全に岩と化していたはずのミスリル化珪素を一瞬で活性状態に引き戻し、しかもこの数秒であれほどまでに変形させるとは」
「ケケケ、手間が省けたろ?」
尻餅を着き、まだ唖然としているウォーレンに背を向け、一聖は石柱に向かう。
「ふむ……。お、やっぱアレだな」
もう一度術を使い、一聖は柱の中からその塊を取り出した。
「葛、コイツがオレの打った刀、『黒花刀 夜桜』だ。
真っ二つにはなっちゃいるが、オレが言った通り、2世紀半以上経っても刃の輝きは、ちっとも失われちゃいねーだろ?」
「でも使いものになるの? 真っ二つじゃ……」
「おいおい、オレを誰だと思ってる? 神器造りにかけちゃ、克一門でオレの右に出るヤツはいねーんだぜ?」
その言葉に、ウォーレンは目を丸くして立ち上がる。
「か、カツミ? カツミ一門と言ったのか?」
ウォーレンには答えず、一聖はその塊を手に取り、破断部分を合わせて呪文を唱え始めた。
「***……****……**……**……****」
すると刀の表面がぼんやりと紫色に輝き出し、破断面に光が集まっていく。
光が消えた頃には、それは一振りの刀に姿を変えていた。
「ほれ、修理完了だ。ついでにあのミスリル化珪素で、鞘も作ってやったぜ」
一聖からその刀を受け取り、葛は恐る恐る、鞘から抜いてみた。
「……っ!」
鼻孔に、桜の匂いを感じる。
ふと気が付くと、葛は真っ暗な闇夜の中に立っていた。
「えっ、えっ? なに?」
何も見えず、葛はその場に立ちすくむ。
と、空を覆っていた雲が晴れ、白い月が覗く。
その光に照らされ、葛は正面に、大きな、そして身震いするほどに美しい、巨大な桜を見た。
「う、わ……ぁ」
葛は思わず、感嘆の声を漏らしていた。
(すごい……! こんなすごいもの、見たコト無いよ!
ぞっとしちゃうほど――きれい)
「どーよ?」
一聖に肩を叩かれ、葛は我に返った。
「えっ、あ……、あ、うん、……綺麗だね、すごく」
「だろ?」
と、まだ高揚冷めやらぬ葛のところに、ウォーレンが戻ってくる。
「き、君たちは何者なのだ? カツミと言うのは、まさか……」
「そのまさかって言ったら?」
一聖に尋ね返され、ウォーレンの狼耳と尻尾が目に見えて毛羽立つ。
「……そんな。……いや、……そんな、……ああ、もう、何も言葉が出ないっ!」
一転、ウォーレンはその場に平伏し、がばっと頭を下げる。
「畏れ多くも黒炎様の御門下に拝しまして、恐悦至極に存じます。甚だ不遜、不躾な振る舞いをいたしましたことを……」「やめれやめれ、やーめーれーっ!」
一聖は顔をしかめさせながら、ウォーレンの頭に手刀を下ろす。
「あいたっ!?」
「オレはそーゆー堅っ苦しい挨拶やら土下座やらは大嫌いなんだ! さっきみてーに普通に話してくれりゃいいんだよ!」
「あ、す、すみません。誠に失礼を……」「だーかーらぁ」
立ち上がりつつ謝るウォーレンに、一聖は再度手刀をぶつける。
「一言、『ごめん』でいいじゃねーか。まったく、ウィルソン家ってのはなんでこー、どいつもこいつも杓子定規で融通利かねーのばっかなんだよ?」
「……御免」
先程とは打って変わって恐る恐ると言った様子で、ウォーレンが尋ねる。
「すると、こうしてやって来たのは、その刀を回収するため、と?」
「ああ。葛にちっと、『化学反応』を与えたくって、な」
「と言うと……?」
葛は刀を腰に佩き、これまでの経緯――自分の姉、葵が白猫党の中枢奥深くで白猫から預言を受け、それに従って己の父を手にかけ殺そうとしたこと、さらには自分をも殺そうとすべく強襲してきたことを話した。
「なんと、そんな事情が……」
「葵はめちゃくちゃ強い。このまま葛になんもしなきゃ、瞬殺されるのは目に見えてる。オレが守るっつっても限度があるしな。
だからこの刀を与えたし、そしてある能力を開花させてーんだ」
「ある能力、とは?」
「ソレはな……」
一聖が説明しかけた、その時――遠くから、誰かの悲鳴が響いてきた。
@au_ringさんをフォロー
克大火の弟子;神器を造りし者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「な、何と言うことを、……い、いや、それよりも、何と言う魔力だ。
完全に岩と化していたはずのミスリル化珪素を一瞬で活性状態に引き戻し、しかもこの数秒であれほどまでに変形させるとは」
「ケケケ、手間が省けたろ?」
尻餅を着き、まだ唖然としているウォーレンに背を向け、一聖は石柱に向かう。
「ふむ……。お、やっぱアレだな」
もう一度術を使い、一聖は柱の中からその塊を取り出した。
「葛、コイツがオレの打った刀、『黒花刀 夜桜』だ。
真っ二つにはなっちゃいるが、オレが言った通り、2世紀半以上経っても刃の輝きは、ちっとも失われちゃいねーだろ?」
「でも使いものになるの? 真っ二つじゃ……」
「おいおい、オレを誰だと思ってる? 神器造りにかけちゃ、克一門でオレの右に出るヤツはいねーんだぜ?」
その言葉に、ウォーレンは目を丸くして立ち上がる。
「か、カツミ? カツミ一門と言ったのか?」
ウォーレンには答えず、一聖はその塊を手に取り、破断部分を合わせて呪文を唱え始めた。
「***……****……**……**……****」
すると刀の表面がぼんやりと紫色に輝き出し、破断面に光が集まっていく。
光が消えた頃には、それは一振りの刀に姿を変えていた。
「ほれ、修理完了だ。ついでにあのミスリル化珪素で、鞘も作ってやったぜ」
一聖からその刀を受け取り、葛は恐る恐る、鞘から抜いてみた。
「……っ!」
鼻孔に、桜の匂いを感じる。
ふと気が付くと、葛は真っ暗な闇夜の中に立っていた。
「えっ、えっ? なに?」
何も見えず、葛はその場に立ちすくむ。
と、空を覆っていた雲が晴れ、白い月が覗く。
その光に照らされ、葛は正面に、大きな、そして身震いするほどに美しい、巨大な桜を見た。
「う、わ……ぁ」
葛は思わず、感嘆の声を漏らしていた。
(すごい……! こんなすごいもの、見たコト無いよ!
ぞっとしちゃうほど――きれい)
「どーよ?」
一聖に肩を叩かれ、葛は我に返った。
「えっ、あ……、あ、うん、……綺麗だね、すごく」
「だろ?」
と、まだ高揚冷めやらぬ葛のところに、ウォーレンが戻ってくる。
「き、君たちは何者なのだ? カツミと言うのは、まさか……」
「そのまさかって言ったら?」
一聖に尋ね返され、ウォーレンの狼耳と尻尾が目に見えて毛羽立つ。
「……そんな。……いや、……そんな、……ああ、もう、何も言葉が出ないっ!」
一転、ウォーレンはその場に平伏し、がばっと頭を下げる。
「畏れ多くも黒炎様の御門下に拝しまして、恐悦至極に存じます。甚だ不遜、不躾な振る舞いをいたしましたことを……」「やめれやめれ、やーめーれーっ!」
一聖は顔をしかめさせながら、ウォーレンの頭に手刀を下ろす。
「あいたっ!?」
「オレはそーゆー堅っ苦しい挨拶やら土下座やらは大嫌いなんだ! さっきみてーに普通に話してくれりゃいいんだよ!」
「あ、す、すみません。誠に失礼を……」「だーかーらぁ」
立ち上がりつつ謝るウォーレンに、一聖は再度手刀をぶつける。
「一言、『ごめん』でいいじゃねーか。まったく、ウィルソン家ってのはなんでこー、どいつもこいつも杓子定規で融通利かねーのばっかなんだよ?」
「……御免」
先程とは打って変わって恐る恐ると言った様子で、ウォーレンが尋ねる。
「すると、こうしてやって来たのは、その刀を回収するため、と?」
「ああ。葛にちっと、『化学反応』を与えたくって、な」
「と言うと……?」
葛は刀を腰に佩き、これまでの経緯――自分の姉、葵が白猫党の中枢奥深くで白猫から預言を受け、それに従って己の父を手にかけ殺そうとしたこと、さらには自分をも殺そうとすべく強襲してきたことを話した。
「なんと、そんな事情が……」
「葵はめちゃくちゃ強い。このまま葛になんもしなきゃ、瞬殺されるのは目に見えてる。オレが守るっつっても限度があるしな。
だからこの刀を与えたし、そしてある能力を開花させてーんだ」
「ある能力、とは?」
「ソレはな……」
一聖が説明しかけた、その時――遠くから、誰かの悲鳴が響いてきた。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Comment ~
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
NoTitle
見方によっては似ているかもしれませんが。