黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第9部

    白猫夢・跳猫抄 4

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    麒麟を巡る話、第474話。
    僧兵ウォーレン、奮戦す。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
    「うわ……っ」
    「ひ……」
     聞こえてきた悲鳴に、ウォーレンが血相を変える。
    「なんだ!?」
    「……チッ」
     一聖はどこからか鉄扇を取り出し、葛たちの前に立つ。
    「恐らく葵だろう。オレたちを追ってきたらしい。ウォーレンって言ったっけか、腕に自信あるか?」
    「うん? あ、ああ。教団の秘義、武芸十般は全て修めている。21の時には黒炎擂台賽で優勝もした」
    「おや、そりゃ大したもんだな。じゃあそこいらの兵士や何かよりはマシってコトだ。ソレじゃ手伝え」
    「手伝う?」
    「今の悲鳴が聞こえたろ? 敵襲ってヤツだ。ソレとも僧兵長サマともあろう者が、敵が来てるってのに何もしねーって?」
    「馬鹿な! 戦うに決まって、……あ」
     と、ウォーレンは腰に手をやり、困った表情を浮かべる。
    「武器が無いのか?」
    「用も無いのに振り回すわけにも行かんからな。……自室で埃をかぶっている。いや、無論たゆまず鍛錬は……」「言い訳すんな。何使ってた?」
     ウォーレンは顔を真っ赤にしつつ、ぼそっとつぶやく。
    「三節棍だ」
    「しゃーねーな、サービスで造ってやんよ」
     一聖はもう一度、柱に術をかけて武器を造る。
    「ほれ」
    「か、かたじけない」
    「……あーあ。もう来やがった」
     と、ここで一聖がため息をつく。目の前に、葵が現れたからだ。

     刀を手にし、静かに現れた葵の他には、誰も現れない。
    「他の者は? さっきの悲鳴は貴様の仕業か?」
     即席の三節棍を構えつつ尋ねたウォーレンに、葵が淡々と答える。
    「人払いさせてもらったよ。誰にも邪魔、されたくないから」
    「ふざけたことを!」
     ウォーレンは憤って見せたが、葵はまったく意に介した様子を見せない。
    「あなたも邪魔しないでくれる? これはあたしと、カズラの問題だから」
    「そんな勝手を通すと思うのか!」
     ウォーレンは葵に向かって駆け出し、三節棍を振るう。
     だが――自分に向かって飛んできた棍の先端を、葵は事も無げにつかむ。
    「なっ!?」
    「邪魔しないでって、注意したよ」
     葵はぐい、と棍を引っ張り、ウォーレンを自分のすぐ側まで寄せる。
     予想外の葵の対応でウォーレンは体勢を崩し、その直後、棍を掴んでいた葵の左腕が、ウォーレンの顔に深々とめり込む。
    「ぐぉっ、……ん、があッ!」
     しかし、ウォーレンは鼻と口から血をほとばしらせながらも、倒れない。
    「おー、言うだけあるな。タフなヤツ」
     一聖の軽口を背にしつつ、ウォーレンは三節棍を捨て、葵の左腕を取る。
    「……っ」
     ほんのわずかだが、葵が息を呑む。
     そのわずかな間にウォーレンは葵の脚を払い、腕をつかんだまま体を勢い良くひねる。
    「うあっ……」
     葵は慣性に流されるまま、ばたん、と床を転がっていった。
    「やるぅ。流石だな、ウォーレン。……だが油断すんなよ。相手は並の人間じゃねー」
    「承知している」
     ウォーレンは三節棍を拾い上げ、葵との距離を取る。
    「数瞬立ち回っただけだが、あの身のこなしと動体視力。間違いなく私が出会った中で、最強の女だ」
    「分かってりゃいい」
     その間に葵は音もなく跳び、立ち上がる。
    「割りと、強いね」
    「なめてもらっては困る」
     ウォーレンは棍を構え、再度葵と対峙した。
    「それはこっちのセリフだよ」
     今度は葵が距離を詰める。
    「はあッ!」
     迫ってきた葵に、ウォーレンは棍を振るう。
     だが――葵は今度は避けず、刀で斬りかかる。
    「……何だと!?」
    「忘れてたぜ……。アイツはオレの神器を、斬ったコトがあったんだよな」
     三節の中の棍が真っ二つに切り裂かれ、葵のはるか右方向へと飛んで行く。
     攻めと守りの両方を失ったウォーレンを、葵は何の躊躇も見せることなく、一刀のもとに斬り捨てる。
    「ぐふっ……」
     ウォーレンは、今度は胸から血しぶきを上げて、その場に倒れた。

    「……ひ……どい」
     姉の凶行を目の当たりにし、葛の口から自然に言葉が漏れる。
    「何てコトするのよ!」
    「邪魔しないでって言ったのに、この人は襲いかかって来た。当然の報いだよ」
    「報い、って何よ……!?」
     葛は無意識に、「夜桜」を抜いていた。
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