短編・掌編
HYPER POSITION ADVENTURE
HYPER POSITION ADVENTURE
◆とうぞく は たからばこ を あけた!
◆とうぞく は 200 クラム を てにいれた!
「へっへ、やりぃ」
手に入れた宝を、盗賊はいそいそと懐にしまう。
「この洞窟はまだ、他のヤツの手が付いてねーみてーだな。となりゃ……」
洞窟の奥に目をやり、盗賊は舌なめずりする。
「もーちょい奥まで探りたいトコだ、……が」
盗賊はそうつぶやきつつ、先ほど魔物に噛み付かれた肩をさする。
「オレ一人じゃ、下手打つかも知れねーからなぁ。先に進むとなると、誰かに手ぇ貸してもらわんと難しいな。
……と言って、あとどれだけお宝があるかも分からんから、山分けするとアシが出るかも知れんし」
その場に座り込み、一人で進むか、仲間を呼ぶかを検討する。
そして強欲な盗賊は結局、一人で進むことを選んだ。
「……ま、人生当たって砕けろだ」
その選択は結果的に、正しかったらしい。
幸いにして、地下2階、3階、4階、そして最深部まで進んでも、盗賊は特に、凶悪な魔物に出くわすことは無かった。
「ひゃっひゃっ……、大正解だったな、一人で進んで」
既に彼の懐やかばん、背負った袋には、大量の金銀財宝が詰まっている。
そしてその中に――良く分からない、虹色に光る円盤も入っていた。
「……にしても、何なんだこりゃ?」
盗賊はその円盤を手にし、自分の顔を映す。
「賢者のじーさんにでも聞きゃ、分かるかな……?」
意気揚々と街に帰った盗賊は、早速知り合いの賢者にこの円盤を鑑定してもらった。
「こりゃ、秘宝ってヤツだね」
「ひほお?」
「古の文献にあり、『之を手にし者、百の人生を歩みて一とすること可なり』とか何とか。
ま、要するにこう言う使い方だね」
そう言って賢者は、盗賊に銀貨を一枚渡す。
「後ろ手に隠して、左手か右手かのどっちかに持ってみな。私がソレを当ててやるね」
「おう」
言われた通り、盗賊は片方の手に銀貨を握りこみ、賢者の前に両拳を突き出す。
「んじゃ……」
次の瞬間――盗賊は奇妙な感覚に襲われた。
「(左、右)だね」
賢者の姿が二重にぶれて見え、そして声も、彼一人自身でハモっているように聞こえる。
そして賢者は、盗賊の右手を握っていた。
「……な、なんだ今の?」
盗賊はうろたえつつ、手を開く。
その掌には、銀貨が乗っていた。
「両方とも選択したね」
「は?」
「今、私は君の左手を選ぶと同時に、右手も同時に選んだね。
この秘宝はそーゆー使い方をするヤツなのさ。複数の選択を、1つの結果にまとめられる。
分かりやすく言や、2択、3択の賭けで、一度に全張りできるってコトさ」
「マジかよ……」
「ま、私ゃそんなもんに興味無いから、君が使いな」
賢者は盗賊に、秘宝の使い方を丁寧に教えてくれた。
この恐るべき秘宝を手にした盗賊は、早速カジノに駆け込んだ。
「おい、この店で一番デカい賭けは!?」
「そりゃ、あのテーブルでやってるやつだろ」
客が指差した卓にどかっと座り込み、男は洞窟で稼いできた金をすべて積み上げる。
「張らせろ、一発勝負だ!」
盗賊の言葉に、周囲がどよめく。
「なんだアイツ……!?」
「どう見ても10万クラムはあるぞ、あれ」
「バカじゃねーの?」
盗賊の申し出を受け、ディーラーがカードを配る。
「では、お客様にお配りしたカードと、卓上の5枚のカードの内1枚とを組み合わせて……」「ルールは分かってる! さっさと張るぜ!」
盗賊は秘宝をこっそり握りしめ、その力を使った。
「(一番右、右から2番目、真ん中、左から2番目、一番左)のカードだッ!」
「んっ……?」
「何だ今の?」
「アイツ、何かごちゃごちゃっとなって……?」
騒然とする周囲に構わず、ディーラーが結果を示す。
「お客様の勝利です」
「……ひ、ひひ、ひゃはははっ!」
莫大な金が盗賊の眼前に置かれていく。
その光景に、盗賊は大笑いしていた。
ところが――。
「……あ、あれ、おい?」
ディーラーの動きもぶれて見える。
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
ぶれたディーラーは、四重に盗賊の敗北を宣言した。
◆とうぞく は 300000 クラム を かくとく した!
◆とうぞく は 100000 クラム を うしなった!
◆とうぞく は 100000 クラム を うしなった!
◆とうぞく は 100000 クラム を うしなった!
◆とうぞく は 100000 クラム を うしなった!
◆とうぞく の しょじきん : -100000
◆けんじゃ「だから いったのにね。
◆けんじゃ「けっかが ぜんぶ ひとつに まとまる ってね。
◆けんじゃ「つまりは
◆けんじゃ「かった けっかも まけた けっかも
◆けんじゃ「ぜんぶ まとまる って こと。
◆けんじゃ「うまい はなし なんて そうそう ありゃしないって のに ねぇ。
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◆とうぞく は たからばこ を あけた!
◆とうぞく は 200 クラム を てにいれた!
「へっへ、やりぃ」
手に入れた宝を、盗賊はいそいそと懐にしまう。
「この洞窟はまだ、他のヤツの手が付いてねーみてーだな。となりゃ……」
洞窟の奥に目をやり、盗賊は舌なめずりする。
「もーちょい奥まで探りたいトコだ、……が」
盗賊はそうつぶやきつつ、先ほど魔物に噛み付かれた肩をさする。
「オレ一人じゃ、下手打つかも知れねーからなぁ。先に進むとなると、誰かに手ぇ貸してもらわんと難しいな。
……と言って、あとどれだけお宝があるかも分からんから、山分けするとアシが出るかも知れんし」
その場に座り込み、一人で進むか、仲間を呼ぶかを検討する。
そして強欲な盗賊は結局、一人で進むことを選んだ。
「……ま、人生当たって砕けろだ」
その選択は結果的に、正しかったらしい。
幸いにして、地下2階、3階、4階、そして最深部まで進んでも、盗賊は特に、凶悪な魔物に出くわすことは無かった。
「ひゃっひゃっ……、大正解だったな、一人で進んで」
既に彼の懐やかばん、背負った袋には、大量の金銀財宝が詰まっている。
そしてその中に――良く分からない、虹色に光る円盤も入っていた。
「……にしても、何なんだこりゃ?」
盗賊はその円盤を手にし、自分の顔を映す。
「賢者のじーさんにでも聞きゃ、分かるかな……?」
意気揚々と街に帰った盗賊は、早速知り合いの賢者にこの円盤を鑑定してもらった。
「こりゃ、秘宝ってヤツだね」
「ひほお?」
「古の文献にあり、『之を手にし者、百の人生を歩みて一とすること可なり』とか何とか。
ま、要するにこう言う使い方だね」
そう言って賢者は、盗賊に銀貨を一枚渡す。
「後ろ手に隠して、左手か右手かのどっちかに持ってみな。私がソレを当ててやるね」
「おう」
言われた通り、盗賊は片方の手に銀貨を握りこみ、賢者の前に両拳を突き出す。
「んじゃ……」
次の瞬間――盗賊は奇妙な感覚に襲われた。
「(左、右)だね」
賢者の姿が二重にぶれて見え、そして声も、彼一人自身でハモっているように聞こえる。
そして賢者は、盗賊の右手を握っていた。
「……な、なんだ今の?」
盗賊はうろたえつつ、手を開く。
その掌には、銀貨が乗っていた。
「両方とも選択したね」
「は?」
「今、私は君の左手を選ぶと同時に、右手も同時に選んだね。
この秘宝はそーゆー使い方をするヤツなのさ。複数の選択を、1つの結果にまとめられる。
分かりやすく言や、2択、3択の賭けで、一度に全張りできるってコトさ」
「マジかよ……」
「ま、私ゃそんなもんに興味無いから、君が使いな」
賢者は盗賊に、秘宝の使い方を丁寧に教えてくれた。
この恐るべき秘宝を手にした盗賊は、早速カジノに駆け込んだ。
「おい、この店で一番デカい賭けは!?」
「そりゃ、あのテーブルでやってるやつだろ」
客が指差した卓にどかっと座り込み、男は洞窟で稼いできた金をすべて積み上げる。
「張らせろ、一発勝負だ!」
盗賊の言葉に、周囲がどよめく。
「なんだアイツ……!?」
「どう見ても10万クラムはあるぞ、あれ」
「バカじゃねーの?」
盗賊の申し出を受け、ディーラーがカードを配る。
「では、お客様にお配りしたカードと、卓上の5枚のカードの内1枚とを組み合わせて……」「ルールは分かってる! さっさと張るぜ!」
盗賊は秘宝をこっそり握りしめ、その力を使った。
「(一番右、右から2番目、真ん中、左から2番目、一番左)のカードだッ!」
「んっ……?」
「何だ今の?」
「アイツ、何かごちゃごちゃっとなって……?」
騒然とする周囲に構わず、ディーラーが結果を示す。
「お客様の勝利です」
「……ひ、ひひ、ひゃはははっ!」
莫大な金が盗賊の眼前に置かれていく。
その光景に、盗賊は大笑いしていた。
ところが――。
「……あ、あれ、おい?」
ディーラーの動きもぶれて見える。
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
「私どもの勝利です」
ぶれたディーラーは、四重に盗賊の敗北を宣言した。
◆とうぞく は 300000 クラム を かくとく した!
◆とうぞく は 100000 クラム を うしなった!
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◆けんじゃ「つまりは
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◆けんじゃ「うまい はなし なんて そうそう ありゃしないって のに ねぇ。
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