黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第9部

    白猫夢・奇縁抄 1

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    麒麟を巡る話、第481話。
    工場跡の後処理。

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    1.
    「じゃ、やってみるよ」
    「ああ。成功を祈るぜ」
     葛は扉の前で立ち止まり、精神を集中させる。
    (もう一回……もう一回、あの時みたいに飛び超える! それッ!)
     とん、と前に一歩踏み出し――ごつん、と頭をぶつける。
    「あいたぁっ!?」
    「……あーあ」
    「うぅー……痛いよー」
     葛は額を押さえ、その場にうずくまる。
     と、ドタドタと足音が響いてくる。
    「大丈夫ですか!?」
    「今の音は!?」
     ぶつけた音を聞きつけ、教団員たちがやって来る。葵の襲撃からさほど時間が経っていないため、過敏になっているらしい。
    「あ、大丈夫ですー」
    「どうしたんですか?」
    「ちょっと……、目測誤っちゃって。振り向いたらすぐドアでした」
    「……ぷっ」
    「あはは……、もう、びっくりさせないで下さいよ」
    「すいませーん」
     葛は恥ずかしさをはにかんでごまかしつつ、ぺこりと頭を下げた。



     葵襲撃の後、ウォーレンは面倒な仕事を行わなければならなかった。
     教団の命を受けて保全していた遺跡を一聖によって荒らされた上、誰にも発掘させるまいとしていたものをあっさり掘り出されたため、彼はその報告を教団本拠に知らさなければならなくなったからだ。
     しかしこれについては、少なからず責任を感じていた一聖が、鶴声を放った。なんとウォーレンを伴って「テレポート」で直接、教団の本拠である黒鳥宮に赴き、教主に「克大火門下のオレが手に入れたんだから問題ねーだろ? 元々オレが打ったんだし」と主張し、ウォーレンに何の咎めも与えられぬよう、直談判したのである。
     当然、相手は面食らっていたが、結果的に一聖の強引な説得が功を奏することとなった。

     まず、この工場跡は教団にとって全く無価値なものとなったため、売却することで話がまとまった。
     また、ウォーレンについて「コイツ気に入ったから、しばらくオレに預けてくんね?」と一聖がねだったところ、以前にウォーレンが「教主と関係が良くない」と言っていたことも関係してか、あっさり認められた。
    ウォーレン自身も葛たちの数奇な運命に少なからず惹かれていたらしく、その要請を快諾してくれた。

     ちなみに今回の事件の経緯は、教主とウォーレン以外には知らされていない。例によって、一聖のうわさが広まるのを防ぐためである。
     そのため、工場跡の売却理由については、表向きには「近年の調査によって遺物が現存する可能性が皆無と分かり、保全する必要が無くなったため」「客が全く集まらず、一方で維持費・管理費が増大しており、観光資源としての収益が見込めないため」とされた。



    「でも、急な話ですよね」
    「だよな……? いきなり黒鳥宮から久々に連絡が来たと思ったら、全員引き上げろって」
    「本当にごめんなさいね、カズラさん、カズセちゃん。あんまりおもてなしできなくて」
    「いえいえ、そんなー」
     襲撃事件の直後、一聖たちに助けられたこともあり、葛たちはすっかり、工場跡を管理していた教団員たちと仲良くなっていた。
     そのため、彼らが中央大陸へと戻るまでの数日、葛たちは彼らの詰所で過ごしていた。
    「それで……、この後は二人とも、どうする予定なの?」
     教団員の一人に問われ、葛は今後の行動を話す。
    「とりあえず、一旦帝国に戻って、大学に休学届出しに行きます。なんか思ったより、時間かかりそうだなーって」
    「時間?」
    「あ、えーと……」「3世研究さ。3世が戦中に行った商売をたどりつつ、経済効果みたいなのを調べるんだ」
     言葉に詰まった葛に、一聖が助け舟を出す。
    「あ、そうそう。で、中央にも行きたいなーって」
    「そうなんですか。結構な長旅になりそうですね」
    「ですねー」
    「3世って、ニコル3世のことかしら?」
    「はいー」
    「じゃあ央中に?」
    「まずは央北に行こうと思ってます」
    「あれ? ニコル3世って央中の人じゃなかったっけ」
    「あ、ソレはですね……」「アレだ、『大交渉』があったトコも見とくかなって」
    「ふーん……?」
     取り留めの無い話をしているうちに、ウォーレンが憂鬱な顔をしつつ、葛たちのところへやって来た。
    「カズラ君、カズセちゃん。ちょっと、よろしいか?」
    「あ、はーい」
    「どした?」
    「内々で少し、話ができないかと」
    「いいですよー」
     ウォーレンに誘われるまま、二人は彼の後を付いて行った。
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