黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第9部

    白猫夢・奇縁抄 3

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    麒麟を巡る話、第483話。
    黄家とウィルソン家。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     一聖の力を借り、葛はその日のうちに、グリスロージュへと戻った。
     まず彼女は大学へ赴き、そのまま休学届を提出。そのまま、実家に向かった。

    「は……?」
    「え、ちょっと?」
    「まさかこの子が、……いや、うーむ、確かに聞き覚えがあると思うておったが」
     葛は旅立つに当たり、まず、これまでずっと同行していた一聖の素性を、葵と秋也が戦った件には触れないように明かした。
    「まあ、そう言うワケだ。黙ってて悪かったな、秋也」
    「いや、まあ、事情が事情だしな。……にしても」
     秋也は葛と一聖の背後に立っていたウォーレンを、チラ、と眺める。
    「その……、ウォーレン・ウィルソンって言ったか?」
    「はい」
    「名前と得物からして、黒炎教団の教主一族だよな」
    「ええ」
    「……親子三代、なんでこう、ウィルソン家と変な縁があるんだろうな」
    「と仰ると?」
     きょとんとしたウォーレンに、秋也は肩をすくめる。
    「オレのお袋は黒炎戦争でウィルバーってヤツと散々戦ってたし、オレもひょんなコトからウォン……、ウォーナードってヤツと一緒に修行したコトがある。
     な、天狐ちゃん? ……じゃねーや、えーと、一聖ちゃん、だっけ?」
    「おう」
    「ふむ……。そう聞けば、いや、聞く前より、確かに奇縁を感じております」
     ウォーレンはそう返し、葛の方に目をやる。
    「初めてカズラ君とお会いした時、確かに何か、感じるところはありました。何と言うか、そう、並々ならぬ因縁を、と言えばいいか」
    「……あ?」
     ウォーレンの言葉に、秋也は目を細めた。それを見たウォーレンは一転、顔を真っ赤にする。
    「あ、ああいや、そう言う意味ではなく! えーと、そう、例えるならば武士(もののふ)としての共感と言うか、ええ、そう言う方面での因縁です!」
    「どう言う方面のコトを考えた?」
     秋也はなお、ウォーレンをにらんでいる。
    「え、ど、どうって、……い、いえいえ、他意はまったく! まったくございません!」
    「ならいい」
     秋也はウォーレンからぷい、と顔を背け、葛に尋ねる。
    「……で、もう大学も休学するって言ってきたんだっけ?」
    「うん」
    「じゃあ、すぐ央北に行くのか?」
    「そのつもり」
    「待ってよ」
     と、ベルが引き止めた。
    「急に何日も留守にしたかと思ったら、今度はしばらく央北? 勝手過ぎない?」
    「いや、悪いとは思ってる。だけどコレは、他のヤツにゃできねーコトなんだ」
    「なんで?」
    「『星剣舞』を使えるヤツが、葛だけだからだ。他に手が空いてて、自由自在に使えるってヤツがいるならソッチに頼むが、現実には葛しかいねーんだよ」
    「だからって……」
    「勿論、葛の将来を狂わすようなコトはしねーつもりだよ。オレは央北の王族にもツテがあるから、ソコで政治学を学ばせるコトもできるし」
     一聖の説明に、葛もうなずく。
    「あたし的にはむしろ、ソッチが魅力だけどねー。このまま西方の中だけで勉強するより、いい経験になりそうだし」
    「……もー」
     ベルはほおをふくらませ、秋也の膝裏をポコポコと蹴る。
    「なんであなたの周りの人って、こんな自分勝手さんばっかりなのよっ」
    「いてっ、痛いって、ちょっ」
    「コントンさんもカズセちゃんも、アオイもカズラも! みーんな勝手ばっかり言っちゃってさー!」
    「マジ痛いって、痛っ、やめろって、お前筋肉あるんだから」
    「うっさい! カズラ蹴るわけに行かないでしょ!?」
    「……ごめん」
     秋也を蹴り回すベルに、葛は頭を下げた。
    「本当、メチャクチャ言ってるのは自分でも分かってる。心配ばっかりかけてるし。
     でも、他にできる人が誰もいないの。あたしだけにしかできないって言うコトがあるなら、あたしが行かなきゃ。ううん、あたしは行きたい」
    「……」
     秋也を蹴るのをやめ、ベルはため息をつく。
    「はーぁ……。本当、勝手な子ね」
     ベルは葛の前に寄り、彼女にデコピンをぶつけた。
    「あいたっ」
    「約束しなさいよ。ちゃんと帰ってくるって」
    「……うん。帰って来るよ、絶対」
     葛は額を押さえながら、ぼそっとそう返した。
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