黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    アナザー・トゥ・ワールド 4

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    双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第4話。
    現場検証。

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    4.
     モールと天狐、そして鈴林の三人は、空間移動魔術「テレポート」を使ってあの港町に到着していた。
    「さーて、と。さっさと行ってさっさと閉じちまおうぜ。あんまり時間かかると、明日の講義に差し障るし、な」
    「了解、ってね」
     モールが先導する形で、3人は現場に向かう。
    「人がいねーな。港町なんだから、もうちょい活気があってもいいと思うんだが」
    「開発に乗り遅れたらしいね」
     モールは肩をすくめながら、街の状況を語る。
    「ココ数年、技術革新やら世界経済の激変やら、色々あったろ? ソコら辺の波を、この街はことごとく受け損ねたっぽいね。
     結果、港も幹線道路も近代化できなくて、そのまま近隣の港町にシェアを全部奪われちゃった、って感じだね」
    「なーるほど。……っと、この辺りか?」
    「ああ、ソコだね」
     モールは持っていた魔杖で、倉庫街の一角を指し示す。しかし天狐の目には、ただの壁にしか見えない。
    「流石は大賢者。ドコだか分かんねーな」
    「どーも。……***」
     だが、モールが呪文を唱えた途端、壁にすうっと、木製の扉が現れる。
    「さ、入って入って」
    「おまえん家かっつーの」
     軽く突っ込みつつ、天狐は扉を引き、中の様子を確かめた。
    「……ふむ」
     倉庫の奥にはモールの写真にあった通りの、異質なひびが走っていた。
    「発見してから何日くらい経ってる?」
    「2日だね」
    「変わり無いように見えるな」
    「ああ。2日前のまんまだね」
     三人は倉庫内に入り、改めて周囲を伺う。
    「石とか杖とか、魔法陣とか、……どこにも見当たらないねっ?」
    「そうだな。……となると妙だな」
    「ああ」
     倉庫内をうろつきながら、モールが意見を述べる。
    「魔力の供給源は、ココにゃ見当たらないね。しかし一方で、放っとけば自然消滅するであろうはずの――少なくとも『テレポート』じゃそうなるはずの――この『切れ目』は、今現在も残ってるね。
     じゃあこいつはドコから魔力を供給されてると思うね、天狐ちゃん?」
    「確証はねーが」
     天狐はどこからか鉄扇を取り出し、「切れ目」を指し示す。
    「多分、『向こう側』だろうな」
    「私も同意見だね」
     モールはそう返し、鈴林を手招きする。
    「鈴林ちゃん、ちょいと」
    「なーにっ?」
    「君、体重どんくらいかね? 実体は金属製だから、結構重いよね?」
    「……」
     鈴林はむくれた表情を見せつつ、ぶっきらぼうに答える。
    「重いったって元は魔杖だもんっ。人が持てない重さじゃないよっ」
    「そっか。じゃあどっか、適当なトコに体を固定させといてね」
    「は?」
     モールはかばんからロープを取り出し、自分の胴に巻き付け始めた。
    「私が『向こう』の様子を見てくるね。鈴林ちゃんはこっち、ロープの端を持って、私が引きずり込まれないように引っ張っててほしいね」
    「え、ちょっと!?」
    「頼んだね。そいじゃ」
     鈴林にロープの端を渡すなり、モールは「切れ目」の向こうに飛び込んでしまった。
    「あっ、ちょ、ちょっとっ!? ……わ、わ、あわわゎ」
     鈴林は慌ててロープを握りしめ、自分の左足をスパイク状に変化させて床に突き刺し、その場に踏み留まる。
    「……んもおっ! 勝手なんだからっ!」
    「怒るな、鈴林。アイツはあーゆーヤツなんだ」
    「なにが『あーゆーヤツなんだ』よっ! あたし、あの人の『あーゆーとこ』が嫌なんだけどっ!?」
    「まあ、まあ」
     天狐が鈴林をなだめている間にも、ロープはどんどんと床を離れ、「切れ目」の向こうに吸い込まれていく。
    「どんくらい経った?」
    「2分くらい……、かなっ」
    「オレも行きたいけど、……ま、2人もいなくなったらまずいよな」
    「置いてかないでよっ」
    「分かってるって。……お?」
    「切れ目」の向こうから、手が伸びる。
    「……よっこらしょー、ってね」
    「おう、おかえり」
    「ただいま。……んー」
     戻ってくるなり、モールは腕を組んでうなる。
    「どうだった?」
    「結論から言うとね」
     モールは「切れ目」を親指で差し、こう述べた。
    「この世界じゃ無さそうだね、『向こう』は。
     見たコトない建築物がわんさかあったね。もうちょい調べてみたいなとは思ったんだけども、ちょっとマズそうな感じだったから、すぐ戻ってきたね」
    「マズそう?」
    「人がいたからねぇ。とは言えソイツ、地面に這いつくばってオタオタしてたし、私の姿は見られてないとは思うけどね」
    「なるほど、そりゃマズそうだ」
     モールは鈴林からロープを受け取りつつ、再度肩をすくめて見せた。
    「一旦戻ろうかねぇ。戻って来られるみたいだけども、うかつに『向こう』でウロウロするワケにも行かないし、準備を整えたいね」
    「ああ、賛成だ」
     うなずきつつ、天狐はニヤッと笑う。
    「次はオレも一緒に行くぜ。面白そうだし、な」
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