「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
アナザー・トゥ・ワールド 6
双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第6話。
別世界へ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
「ロープ」
「よしっ」
「カメラ」
「よしっ」
「板チョコ」
「よしっ」
「いるかねぇ?」
「いる。オレのおやつだよ。次、魔力結晶『オリハルコンMS―212』」
「よしっ」
「番号も合ってるな? 212だぞ」
「うん、間違い無いよっ」
「そんなもんかね、持って行くモノは」
「だな。……よし、それじゃ行くぜ」
三人はもう一度「テレポート」であの倉庫街へと飛び、再び「切れ目」の前へ集まっていた。
「それじゃ鈴林」
「うんっ」
天狐は鈴林の体にぐるぐるとロープを巻き、外れないよう固定する。その間に、モールがロープのもう一端を倉庫の柱にがっちりと巻きつける。
「よし、準備完了。行くぜ」
「了解、ってね」「はーいっ」
天狐と鈴林は手をつなぎながら、「切れ目」の向こうへと歩き出す。モールも鈴林のロープをつかみつつ、二人の後に続く。
「こちら」では特に何の違和感も覚えることなく、三人は「向こう側」へと移った。
ところが移った瞬間、三人は何かに弾かれ、それぞれ違う方向へと飛んで行った。
「おわっ!?」
「いてっ!?」
「きゃあっ!?」
それでも鈴林だけはどうにか体勢を立て直し、ロープが外れないようしっかりと握る。
「二人とも大丈夫っ!?」
「おう、大丈夫、……だ。ちっと頭ぶつけちまったけど」
「おー、いてて……。尻尾が折れるかと思ったね」
天狐とモールが、それぞれ頭と腰を押さえながら鈴林のところに戻ってくる。
「今のは何だったんだ?」
「どーも『こっち側』は、『切れ目』が閉じかかってたみたいだね。んで、ソレを私らが拡げたから……」
「『こっち』の空間に大きな歪みが発生し、その結果衝撃波が起こって、ソレにオレたちが弾かれた、……ってワケか。
……! 鈴林! 『切れ目』はどうなってる!?」
「まだあるよっ」
鈴林が「切れ目」に手を入れ、つながっていることを知らせた。
「……ふう。ソイツが無くなっちゃ、オレたちが戻れなくなっちまうからな。……見た感じ、閉じてく気配は無いみてーだな」
「うんっ。今のところ、それっぽい様子は無いみたいだねっ」
観察している鈴林の肩を、天狐がポンと叩く。
「じゃ、そのまま監視しててくれ。何か変化があったらすぐ知らせろ」
「え?」
「お前が人の姿を維持出来てるってコトは、魔術がこっちでも使えるってコトだ。『トランスワード』も普通に使えるだろ。一応、通信できるか試しとくか?」
「え、や、そうじゃなくてっ。姉さん、あたしを置いてくのっ!?」
「他に誰が残る?」
「……もお、もおっ!」
鈴林は涙目になりながら、天狐の背中をべちべちと叩く。
「いてっ、いてってば、何だよ?」
「こんなとこに一人置いてくつもりなのっ!? 誰か来たらどうすんのよっ!?」
「私が見えにくくする術をかけてやるね。ソレならごまかせるさ。
大丈夫、ぐるっと回りを見る程度だからね。そんなに時間はかかんないってね」
「むーっ」
むくれる鈴林に背を向け、天狐は辺りを見回す。
「なるほど、確かにミッドランドやゴールドコーストとは違う景色だな。もっと未来的だ」
「確かにね。私らの住む世界より、大分文明は進んでそうだね。つっても高々1世紀か、2世紀かってところだろうけどもね」
「ふーん……。っと、そうだ」
天狐はモールの側に寄り、鈴林に聞こえないようこそこそと話す。
(で、コレからどうすんだ? 本当にこの辺りぐるっと回って終わりのつもりか?)
(他にやるコト無いしね。あんまり遠くへ行って戻って来られなくなっちゃ、ソレこそ一巻の終わりだしね)
(だな)
「あ・ね・さーん……?」
怒りをにじませた鈴林の声が、二人の背中に突き刺さる。
「なにをはなしてるのかなーっ?」
「大したコトじゃねーよ。安心しな、別に遠出しようって話じゃ……」
と、弁解しかけたその時――。
「……! 誰か来るね」
モールが天狐の手を引き、魔術を唱えた。
「しゃべらないでね。……『インビジブル』」
瞬間、鈴林を含めた三人の姿が透明になる。
それと同時に、強い光が2つ、三人の右前方から現れる。
「**。***、****?」
「**」
「*、****?」
「****」
その光と共に、二人の男女が近付いてきた。
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別世界へ。
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「ロープ」
「よしっ」
「カメラ」
「よしっ」
「板チョコ」
「よしっ」
「いるかねぇ?」
「いる。オレのおやつだよ。次、魔力結晶『オリハルコンMS―212』」
「よしっ」
「番号も合ってるな? 212だぞ」
「うん、間違い無いよっ」
「そんなもんかね、持って行くモノは」
「だな。……よし、それじゃ行くぜ」
三人はもう一度「テレポート」であの倉庫街へと飛び、再び「切れ目」の前へ集まっていた。
「それじゃ鈴林」
「うんっ」
天狐は鈴林の体にぐるぐるとロープを巻き、外れないよう固定する。その間に、モールがロープのもう一端を倉庫の柱にがっちりと巻きつける。
「よし、準備完了。行くぜ」
「了解、ってね」「はーいっ」
天狐と鈴林は手をつなぎながら、「切れ目」の向こうへと歩き出す。モールも鈴林のロープをつかみつつ、二人の後に続く。
「こちら」では特に何の違和感も覚えることなく、三人は「向こう側」へと移った。
ところが移った瞬間、三人は何かに弾かれ、それぞれ違う方向へと飛んで行った。
「おわっ!?」
「いてっ!?」
「きゃあっ!?」
それでも鈴林だけはどうにか体勢を立て直し、ロープが外れないようしっかりと握る。
「二人とも大丈夫っ!?」
「おう、大丈夫、……だ。ちっと頭ぶつけちまったけど」
「おー、いてて……。尻尾が折れるかと思ったね」
天狐とモールが、それぞれ頭と腰を押さえながら鈴林のところに戻ってくる。
「今のは何だったんだ?」
「どーも『こっち側』は、『切れ目』が閉じかかってたみたいだね。んで、ソレを私らが拡げたから……」
「『こっち』の空間に大きな歪みが発生し、その結果衝撃波が起こって、ソレにオレたちが弾かれた、……ってワケか。
……! 鈴林! 『切れ目』はどうなってる!?」
「まだあるよっ」
鈴林が「切れ目」に手を入れ、つながっていることを知らせた。
「……ふう。ソイツが無くなっちゃ、オレたちが戻れなくなっちまうからな。……見た感じ、閉じてく気配は無いみてーだな」
「うんっ。今のところ、それっぽい様子は無いみたいだねっ」
観察している鈴林の肩を、天狐がポンと叩く。
「じゃ、そのまま監視しててくれ。何か変化があったらすぐ知らせろ」
「え?」
「お前が人の姿を維持出来てるってコトは、魔術がこっちでも使えるってコトだ。『トランスワード』も普通に使えるだろ。一応、通信できるか試しとくか?」
「え、や、そうじゃなくてっ。姉さん、あたしを置いてくのっ!?」
「他に誰が残る?」
「……もお、もおっ!」
鈴林は涙目になりながら、天狐の背中をべちべちと叩く。
「いてっ、いてってば、何だよ?」
「こんなとこに一人置いてくつもりなのっ!? 誰か来たらどうすんのよっ!?」
「私が見えにくくする術をかけてやるね。ソレならごまかせるさ。
大丈夫、ぐるっと回りを見る程度だからね。そんなに時間はかかんないってね」
「むーっ」
むくれる鈴林に背を向け、天狐は辺りを見回す。
「なるほど、確かにミッドランドやゴールドコーストとは違う景色だな。もっと未来的だ」
「確かにね。私らの住む世界より、大分文明は進んでそうだね。つっても高々1世紀か、2世紀かってところだろうけどもね」
「ふーん……。っと、そうだ」
天狐はモールの側に寄り、鈴林に聞こえないようこそこそと話す。
(で、コレからどうすんだ? 本当にこの辺りぐるっと回って終わりのつもりか?)
(他にやるコト無いしね。あんまり遠くへ行って戻って来られなくなっちゃ、ソレこそ一巻の終わりだしね)
(だな)
「あ・ね・さーん……?」
怒りをにじませた鈴林の声が、二人の背中に突き刺さる。
「なにをはなしてるのかなーっ?」
「大したコトじゃねーよ。安心しな、別に遠出しようって話じゃ……」
と、弁解しかけたその時――。
「……! 誰か来るね」
モールが天狐の手を引き、魔術を唱えた。
「しゃべらないでね。……『インビジブル』」
瞬間、鈴林を含めた三人の姿が透明になる。
それと同時に、強い光が2つ、三人の右前方から現れる。
「**。***、****?」
「**」
「*、****?」
「****」
その光と共に、二人の男女が近付いてきた。
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2015.09.28 修正
2015.09.28 修正
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