黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    アナザー・トゥ・ワールド 8

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    双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第8話。
    異世界推理。

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    8.
     夜も更けており、一層空気が冷え込んできたため、我々は話し合う場所を近くのファミレスへと移していた。
     勿論モール氏と、彼と共にいたテンコ嬢――「ちゃん付けでいーぜ」と言われたものの、やはり初対面の人間に対し、そこまでフランクな呼び方をするのは抵抗がある――には、帽子とコートで耳と尻尾を隠してもらっている。
     ちなみに彼らに付き添っていたもう一名、レイリン嬢については、現場に残ってもらっている。モール氏が言うには、「帰り道を確保してもらっとかないとね」とのことだ。
    「食べ物はオレたちんトコと、全然変わんねーみたいだな」
    「そうだねぇ」
    「食っても大丈夫だよな?」
    「大丈夫、死にゃしないね。私の知る限り、今でもピンピンしてるし」
    「……? 誰が?」
    「ま、気にしないでいいね。……お、チョコパフェがあるね。食べたいだろ、君?」
    「おぉ~★」
     メニューを見ていたモール氏とテンコ嬢を眺めながら、わたしはこれが本当に現実に起こっていることなのか、未だ信じられないでいた。
    「あの」
     わたしは思わず、二人に声をかける。
    「ん?」
    「その……、耳と尻尾は」
    「本物か、って?」
    「え、ええ」
    「なるほどね。確かに周りは短耳だらけ――どうやら、『こっち』には私らみたいなタイプの人種はいなさそうだし、不思議に思うだろうね。
     ま、コレは間違い無く本物さ。ちゃんと血も通ってるし、動かせるね。触らせろってのはヤだけどね」
    「オレは構わねーぜ。触ってみるか? ふっかふかだぜ」
    「あ、いえ。遠慮します」
    「ケケケ……」
     テンコ氏はケタケタと、いたずらっぽく笑う。
     と、所長がここで口を開いた。
    「モールさん。確認するけれど、あの『切れ目』は、あなたたちが作ったものでは無いのね?」
    「ああ。偶然見付けて、調査のために入ってみた。さっき言った通りだね」
    「あなたやテンコちゃんが同様のものを作成することは可能?」
    「いや、私はできないね。この子にしても、閉じるコトこそできても、開けるのは無理だってさ」
    「ああ。詳しく調べりゃ、できると思うけどな」
    「じゃあ、あれを作った人物は? 心当たりはあるかしら?」
    「不明だね。あんな術を行使するのは私くらいの凄腕じゃなきゃ無理だろうし、かと言って私が知ってる他の凄腕は、意味も無くあんなコトするタイプじゃない。
     仮にやるとしても、自分の本拠地から遠く離れた、寂れた倉庫街なんかで実験するワケが無いね。やるなら設備が整った、自分の実験室やら工房やらでやるはずだね」
    「確かにな。……ソコが妙なんだよな」
     いつの間にか注文していたチョコレートパフェを頬張りながら、テンコ嬢が話を継ぐ。
    「オレたちにとって、魔術は学問の一分野だ。ソレも化学や電磁気学みてーに危険性のある実験を伴う、実践的な側面の強いモノだ。
     そんなコトを何の設備も揃って無いようなトコでやるなんてのが、まずおかしいんだよ。んなもん、ニトログリセリンやらアセチレンガスやらの実験を、家のキッチンでやるようなもんだから、な」
     そう言われれば、確かに違和感がある。わたし自身、日中にあんな衝撃波を食らっているのだ。それが危険を伴う行為であることは、十分に理解できた。
    「それについてだけど」
     と、所長が尋ねる。
    「その倉庫の壁や床には、異常は無かった? ひびとか、大きく割れているところとか」
    「ああ、あったね。老朽化してたってコトも考えられなくは無いけど、恐らく『切れ目』を開いた時の影響だろうね」
    「あなたたちが『こちら』に来た時と、同様の現象が発生していたと言うことね?」
    「多分ね」
    「そして、どちら側にも魔術を実行・維持できるような装置は無かった、……と言うことね?」
    「そうなるね。……ふむ」
     モール氏は再び腕を組み、考え込む様子を見せた。
    「つまり君、コレはどっちも『結果』だって言いたいってコトかね?」
    「ええ。その通りよ。どちら側にも、『原因』と言える要素が無いわ」
    「どう言うことです?」
     尋ねたわたしに、所長は窓を指差しながら、こんな質問を返してきた。
    「例えばこのガラス窓を内側から破った場合、破片は店の中と外、どっちに飛ぶかしら?」
    「店の外でしょうね」
    「そう。モノを押せば、押した方向へとモノが移動する。普通はそうなるわ。
     でもこの『切れ目』に関しては、両方で衝撃波が発生していた。言うなれば窓ガラスの破片が店の中と外、両方向に飛び散ったようなものよ。
     そんなことはガラスが内部から圧されでもしない限り、ありえないわ」
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