黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    アナザー・トゥ・ワールド 9

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    双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第9話。
    再度、別世界へ。

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    9.
     ファミレスで暖と食事を取ったところで、わたしたちは再びあの公園へと戻ってきた。
    「おかえり。楽しかったっ?」
     レイリン嬢の目つきが冷たい。寒空の中、一人ここに残されたことを恨んでいるのだろう。
    「おう、悪かったな。ソレより鈴林、異常は無かったか?」
    「無いよっ」
     ほおをふくらませながら、レイリン嬢が答える。
    「よし、んじゃ検証してみるか」
     そう言って、テンコ嬢は「切れ目」に近付く。
    「検証っ?」
     尋ねたレイリン嬢に、モール氏が答える。
    「ココと『向こう』はダイレクトにつながってるのか、って言う検証だね」
    「どう言うことっ?」
    「いやね、そこの所長さんと話したんだけども、どうもココも、『向こう』の倉庫内に現れた『切れ目』も、もしかしたら『ドコか別のトコからの出口なんじゃないか』って仮説が浮かんだんだよね」
    「別なところからの……、出口っ?」
    「ああ。二人の仮説はこうだ」
     どこから取り出したのか、テンコ嬢は扇子のようなものを握っている。
    「この『切れ目』を作ったヤツは、ココでも倉庫でも無い、別のトコから来たんじゃないかって、な。確かにソレなら、魔力の供給源がドコにも見当たらなかったコトにも説明が付く。ソコから供給してるってコトになるからな。
     だがこの説にも、疑問はある。どうしてオレたちはその『別のトコ』じゃなく、ココに来たのか、ってコトだ。
     二人の仮説が正解なのか、ソレなら何故ココと倉庫がつながってるのか――ソコら辺を確かめに戻ってきたんだ。
     んじゃ、調べるぜ。……***……**……***……」
     テンコ嬢が扇子をタクトのように振りつつ、何かを唱え始める。モール氏の「魔術」の効果を以ってしても、この辺りは何を言っているのか分からなかった。
     10秒か、20秒か唱え続けたところで、テンコ氏が「よっしゃ」とつぶやいた。
    「解析できたぜ。やっぱアンタらの言う通りだったな」
    「へぇ?」
    「確かにドコかを経由してる。魔術の組み方からして、恐らく、この『切れ目』が万が一第三者に発見されても、自分のトコにたどり着けないよう細工したんだろう」
    「狡(こす)いコトするねぇ」
    「その経由地には行けるの?」
     尋ねた所長に、テンコ氏は自信ありげにうなずいて見せた。
    「おう。もうつないだぜ、ソコと」
    「仕事が早いねぇ。……さて、お二人さん」
     モール氏がわたしたちの方へ向き直り、ニヤニヤと笑いながら尋ねる。
    「一緒に来てみるね?」
    「え、……っと、その」「ええ。同行させてもらうわ」
     言い淀んだわたしに構わず、所長が即答する。
    「よっしゃ、じゃあ付いて来な」
     まだわたしの心の準備が整わないうちに、所長を含む全員が、「切れ目」の向こうへ消える。
     取り残されかけたわたしは、慌てて「切れ目」へと飛び込んだ。



     飛び込んだ先は、雑然とした倉庫の中だった。
     てっきり彼らが言っていた廃倉庫かと思っていたが、どうやら違うらしい。先行していたモール氏とレイリン嬢がきょろきょろと辺りを見回していることから、彼らも見たことの無い場所であることは明らかだ。
     わたしたちの住む世界とは全く異なる別の世界とは言え、重力が弱いとか、空気や気温が著しく異なると言うようなことは、特に無いらしい。床を踏みしめる感触に違和感は無いし、息も普通にできる。
     一つ、明らかに違うことがあるとすれば――。
    「離れるなよー」
     テンコ嬢の構える扇子の上に、光球が浮いている。
     そう、この世界には「魔術」が当たり前に存在する。そこがわたしたちの世界との違いなのだ。
    「にしても」
     モール氏が廊下の窓を眺め、首を傾げる。
    「ココはドコなんだろうね? いや、私らの世界であるのは間違い無いんだろうけども、……景色に見覚えが無いんだよね」
    「……ふむ」
     その言葉に、テンコ嬢も窓を眺める。
    「鈴林。星の位置から場所や時刻を割り出せるか?」
    「んっ? んー……」
     これまでの話の流れからすると、どうやらレイリン嬢は人間では無く、言うなれば高性能のロボットのようなものであるらしい。
     そのレイリン嬢は窓の外をしばらく眺めた後、首を傾げながら答えた。
    「場所は央中の東南部、屏風山脈の辺りだねっ。日付は5月終わりくらい。……でもっ」
    「でも?」
    「年が変だよっ。少なくとも、アタシたちがいた6世紀じゃないよっ。プラスマイナス100年か200年か、もっとズレがあるかもっ」
    「は?」
    「完全にスケールオーバー(測定対象が測定装置の規格・尺度よりはるかに大きい、あるいはあまりにも小さいため、測定できないこと)しちゃってて、正確な時間が全然分かんないよっ」
    「マジでか」
     テンコ嬢はモール氏と顔を見合わせ、ボソボソと話し合う。
    「……となると……」
    「……可能性はあるけどね……」
    「……いや、でも……」
    「……まあねぇ……」
     やがて、両者揃って腕を組み、神妙な顔でうなり出す。
    「うーん……」
    「……いや、考えても仕方無いね」
     モール氏が先に構えを解き、歩き出した。
    「ともかく先に進めば、何かしら分かるだろうしね。さ、行こ行こ」
     そのまま長い廊下を進み、階段を降り、やがてわたしたちは扉に突き当たった。
    「この先に何かしらありそうだね。……それじゃ、開けるね」
     モール氏がドアノブに手を伸ばす。
     が、そこで所長が彼の腕に手をかけ、制止する。
    「ん?」
    「待って。あたしに考えがあるの」
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