黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    アナザー・トゥ・ワールド 10

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    双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第10話。
    捕物。

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    10.
     きい……、と音を立て、扉が開く。
    「……!」
     扉の向こうにいた兎耳の小男が、びくりと身を震わせる。
    「……」
     しばらく硬直していたが、やがて男はそろそろと足を動かし、扉に近付く。
    「……誰だ」
     問いかけるが、返事は返ってこない。
    「……」
     男は顔をこわばらせたまま、呪文を詠唱する。
    「『フォースオフ』」
     魔術が発動した途端、男の左横に短耳の男がうずくまっている姿が現れる。
    「貴様ッ!」
     兎獣人は慌てて魔杖を振りかざし、もう一度呪文を唱え始めた。
     ところが――。
    「はいソコまで、……ってね」
     兎獣人の背中と右のこめかみに、固いものが押し当てられる。
    「う……っ」
    「言葉は分かるね? 分かるんならまず、杖を足元に落とせ。んで、壁際に蹴っ飛ばせ。ソレから両手を挙げな。口は開けてろ。そうだ、あんぐりとね。呪文唱えようなんて思うなよ?
     ……よし、ソレでいいね」



     時間は、わたしたちが扉を開ける直前に戻る。
    「このまま進むのは、得策とは言えないわ」
     所長の言葉に、モール氏がうなずく。
    「確かにね。でもこのままじっとしてても仕方無いだろ?」
    「としても、もしも相手が悪意を持って接してきたとしたら、あなたたちには対抗手段があるのかしら? それも、相手がどんな手段を使ってきたとしても、圧倒しうる程度のものが」
    「……」
     間を置いて、モール氏が苦々しげに答えた。
    「ソレを言われると参るね、確かに。あの次元移動術自体、全然私らが知らない術だしね。あの技術水準の攻撃魔術を相手が持ってたら、確かに返り討ちの危険はある。私らはともかく、君たちの身がヤバいかも知れないね」
    「そう言うことよ。あたしたちはむざむざ危険に身を投じるつもりで付いてきたわけじゃないもの。
     あくまであたしたちの目的は、この現象があたしたちの手がける事件に関連性があるのかを確かめるためよ」
     そう返し、所長は話を続ける。
    「だから、行動を起こすのであれば、十分な安全を確保してからにしたいの。故に、いきなり飛び込むと言う案は賛成できないわ」
    「じゃ、どうするね?」
    「相手をある程度測ってから行動することを提案するわ。
     まず第一に、相手に敵意があるかどうか。あたしは、少なからずあると思ってる」
    「根拠は?」
     そう尋ねつつも、どうやらモール氏もその可能性を考えているらしい。
    「この場所に到達できないよう細工している点ね。そんな仕掛けを施すような人間が、友好的であるとは考えにくいわ。かなり警戒心が強いタイプよ。
     そんな人間が、いきなり自分の陣地に踏み込まれて、ニコニコしてくれると思う?」
    「無いね。私なら脅しをかけて追っ払うね」
    「そして――これはまだ実証していないことだけど――今回の窃盗事件に関与している可能性が高い点。
     一般的に言って、犯罪を犯すタイプの人間が、常識的かつ友好的な対応をしてくれるとは考え辛い。まして、あたしたちは相手が好まないであろう手段でここに来てる。
     その点を鑑みれば、攻撃される恐れは十分にあるわ」
    「ま、攻撃されるコトについては一応、防御術をあらかじめかけておこうとは思ってたね。ソレについては心配しなくていいね。私らの術なら、そう簡単に破られるコトは無いしね」
    「あたしたちについては、それでいいかも知れない。でも相手に逃げられる可能性は?」
    「……うーん」
     所長の詰問に、モール氏はふたたび苦い顔をした。
    「ソレは十分ありうるね。警戒心が強いってんなら、その可能性は高いね」
    「だからこそ、不用意に飛び込むことは賛成できないわ。ここで逃げられたら、あたしにも、あなたたちにも追跡が困難であることは、容易に想像できることだし」
    「じゃ、どうすんだ?」
     尋ねたテンコ嬢に、所長がこう尋ね返した。
    「あの姿を消す術、あたしたちにも効果はあるかしら?」
    「あるね。私らから離れても、声出したり大きな物音を立てない限り、効果が切れるコトは無いね」
     モール氏が答える。
    「じゃあ、二段構えで行きましょう。
     まずは扉を開け、一人が先行する。勝手に扉が開けば、用心深い相手であればきっと何かあると警戒し、動く。そこで先行した一人が囮になって姿を現せば、注意はそこに向くわ。
     そこで残った4人が……」
    「一斉に取り押さえる、と。悪くないね。で、その囮は?」
     尋ねた途端、沈黙が訪れる。そしてモール氏らと所長の、4人分の目線が、わたしに集中した。
     ……まあ、予想はしていたが。
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