「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
双月千年世界 短編・掌編
アナザー・トゥ・ワールド 12
双月千年世界と「クリスタルの断章」のコラボ小説、第12話。
謎明かし。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
12.
元の世界に戻った、その翌日。
「ねえねえ、モールさんっ」
天狐の屋敷を発つ直前、モールは鈴林から質問を受けていた。
「どうしたね?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどっ」
「うん?」
鈴林は辺りを一瞥し、小声で続ける。
「モールさんはもしかして、あそこが……」「ああ」
モールは肩をすくめ、肯定して見せた。
「だろうね。君の考えてる通りさ、多分ね」
「やっぱり……?」
戸惑った表情を浮かべた鈴林に、モールがニヤニヤと笑いかける。
「もしかして君、その説を天狐ちゃんに聞かれたら笑われるかも、とか思ってたね?」
「あぅ」
鈴林の顔が真っ赤になるのを見て、モールは笑い出した。
「アハハ……、本当に君は心配性だねぇ。君だって一流の魔術師なんだから、もうちょい自説に自信持ってもいいってね」
「でも……」
「少なくとも今回の件について、君の意見に間違った点は無いと思うね。即ち、『あの世界』についての考察は、私もうなずける点が多々あるからね」
「……」
と、鈴林が疑い深そうな顔になる。
「モールさんっ?」
「何だよ? 人をにらむもんじゃないね」
「本当に分かってるっ? カッコつけて、分かってる振りとかしてないよねっ?」
「勿論、分かってるね。何なら私の方から説明してやってもいいけどね」
「どうぞっ」
ぷく、と頬をふくらませた鈴林を見て、モールはクスクスと笑った。
「じゃ、結論から。あの世界は、私らの世界じゃないね」
「どの世界よっ?」
「私らが行った、あの世界さ。と言っても勿論、公園とかファミレスとかあった方じゃない。あの兎獣人がいた方だね」
「……うん」
鈴林がうなずいたのを確認し、モールは話を続ける。
「そもそも君ほどの、正確無比な計測ができる子がいて、ソレで星の位置から現在地および現在時刻が導き出せなかったってのがおかしいね。
よしんば本当に100年、200年単位のズレがあったからって、あそこを『央南』と思ったってのもおかしいね。温暖湿潤気候の央南で5月だっつってたのに、寒さが『もういっこの世界』と変わんなかったってのが、ね。アイツら、コート脱いでなかったろ?」
「あ……、言われてみれば、そだねっ」
「君は温度を『計測』できても、『体感』はできないもんね。他に考えないといけないコトがいっぱいあったし、君が気付かなかったのも無理は無いね」
「でも時間については、モールさんが言った通りに考えてたよっ。あんなに座標と時間がムチャクチャずれてるならいっそ、別の世界って考えた方が納得行くもんっ」
「ま、そう言うワケさ。でも丸っきり別世界って感じでも無いね。天狐ちゃんは魔術を解析できてたし、アイツの言葉も理解できた。
言ってみりゃ、割と近めの平行世界、って感じだね」
「そだねっ」
鈴林はうんうんとうなずき――また、不安げな顔をした。
「でもさ、モールさんっ」
「ん?」
「またあんなこと、あるんじゃないかなっ?」
「今回みたいな事件が、ってコトかね?」
「うんうんっ。似たような世界があって、似たような術があって、似たような人種がいたなら、似たような事件も起こるんじゃないかなって思うんだけどっ」
「ま、あるかもね」
モールは肩をすくめ、椅子の背にかけていた帽子を手に取る。
「そん時はそん時さ。次元移動術ってのも手に入ったし、また何か似たようなコトがあれば、私らから殴り込んでやりゃいいね」
「……どいつもこいつも、って感じっ。それでも本当に賢者さんっ?」
「コレでも、さ。むしろコレくらいじゃなきゃ、ね。
そんじゃまたねー」
モールはむくれる鈴林に背を向け、クスクスと笑いながら部屋を後にした。
Another two world 終
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謎明かし。
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12.
元の世界に戻った、その翌日。
「ねえねえ、モールさんっ」
天狐の屋敷を発つ直前、モールは鈴林から質問を受けていた。
「どうしたね?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどっ」
「うん?」
鈴林は辺りを一瞥し、小声で続ける。
「モールさんはもしかして、あそこが……」「ああ」
モールは肩をすくめ、肯定して見せた。
「だろうね。君の考えてる通りさ、多分ね」
「やっぱり……?」
戸惑った表情を浮かべた鈴林に、モールがニヤニヤと笑いかける。
「もしかして君、その説を天狐ちゃんに聞かれたら笑われるかも、とか思ってたね?」
「あぅ」
鈴林の顔が真っ赤になるのを見て、モールは笑い出した。
「アハハ……、本当に君は心配性だねぇ。君だって一流の魔術師なんだから、もうちょい自説に自信持ってもいいってね」
「でも……」
「少なくとも今回の件について、君の意見に間違った点は無いと思うね。即ち、『あの世界』についての考察は、私もうなずける点が多々あるからね」
「……」
と、鈴林が疑い深そうな顔になる。
「モールさんっ?」
「何だよ? 人をにらむもんじゃないね」
「本当に分かってるっ? カッコつけて、分かってる振りとかしてないよねっ?」
「勿論、分かってるね。何なら私の方から説明してやってもいいけどね」
「どうぞっ」
ぷく、と頬をふくらませた鈴林を見て、モールはクスクスと笑った。
「じゃ、結論から。あの世界は、私らの世界じゃないね」
「どの世界よっ?」
「私らが行った、あの世界さ。と言っても勿論、公園とかファミレスとかあった方じゃない。あの兎獣人がいた方だね」
「……うん」
鈴林がうなずいたのを確認し、モールは話を続ける。
「そもそも君ほどの、正確無比な計測ができる子がいて、ソレで星の位置から現在地および現在時刻が導き出せなかったってのがおかしいね。
よしんば本当に100年、200年単位のズレがあったからって、あそこを『央南』と思ったってのもおかしいね。温暖湿潤気候の央南で5月だっつってたのに、寒さが『もういっこの世界』と変わんなかったってのが、ね。アイツら、コート脱いでなかったろ?」
「あ……、言われてみれば、そだねっ」
「君は温度を『計測』できても、『体感』はできないもんね。他に考えないといけないコトがいっぱいあったし、君が気付かなかったのも無理は無いね」
「でも時間については、モールさんが言った通りに考えてたよっ。あんなに座標と時間がムチャクチャずれてるならいっそ、別の世界って考えた方が納得行くもんっ」
「ま、そう言うワケさ。でも丸っきり別世界って感じでも無いね。天狐ちゃんは魔術を解析できてたし、アイツの言葉も理解できた。
言ってみりゃ、割と近めの平行世界、って感じだね」
「そだねっ」
鈴林はうんうんとうなずき――また、不安げな顔をした。
「でもさ、モールさんっ」
「ん?」
「またあんなこと、あるんじゃないかなっ?」
「今回みたいな事件が、ってコトかね?」
「うんうんっ。似たような世界があって、似たような術があって、似たような人種がいたなら、似たような事件も起こるんじゃないかなって思うんだけどっ」
「ま、あるかもね」
モールは肩をすくめ、椅子の背にかけていた帽子を手に取る。
「そん時はそん時さ。次元移動術ってのも手に入ったし、また何か似たようなコトがあれば、私らから殴り込んでやりゃいいね」
「……どいつもこいつも、って感じっ。それでも本当に賢者さんっ?」
「コレでも、さ。むしろコレくらいじゃなきゃ、ね。
そんじゃまたねー」
モールはむくれる鈴林に背を向け、クスクスと笑いながら部屋を後にした。
Another two world 終
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
改めて、今作の基となったネタを提供してくれたポールさんにお礼申し上げます。
ありがとうございました!
スピンオフも終わったところで、本編「白猫夢」の進捗状況。
2月末現在、予定の3割くらい。
ネーム通りに書こうとしてはいるのですが、以前にも言った通り、
自分で組み立てたものを自分で壊す性格が災いしたようです。
微妙に軌道がズレてきており、完成にはもうちょっとかかるかも知れません。
3月末までには必ず、連載を始める予定です。
改めて、今作の基となったネタを提供してくれたポールさんにお礼申し上げます。
ありがとうございました!
スピンオフも終わったところで、本編「白猫夢」の進捗状況。
2月末現在、予定の3割くらい。
ネーム通りに書こうとしてはいるのですが、以前にも言った通り、
自分で組み立てたものを自分で壊す性格が災いしたようです。
微妙に軌道がズレてきており、完成にはもうちょっとかかるかも知れません。
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- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Comment ~
お疲れ様でした~!
自分のキャラクターをほかのかたに使っていただけると、なんかこうこそばゆいですな(^^ゞ
お蔵入りになっているものもあるけど、いつかブログに上げたいですね。
自分のキャラクターをほかのかたに使っていただけると、なんかこうこそばゆいですな(^^ゞ
お蔵入りになっているものもあるけど、いつかブログに上げたいですね。
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NoTitle
自分のキャラも、何かしら機会があればお気軽にご利用いただいて構いません。
自分もお蔵入りした作品が色々ありますが、現状の世界観と矛盾するものばかりなので、なかなか使うに使えないですね……。