「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第1部
蒼天剣・紀行録 1
晴奈の話、15話目。
ふわふわ毛玉。
1.
目の前をふわりと通りかかった「毛玉」を見て、晴奈は驚いた声を上げた。
「えっ」
「はい?」
と、「毛玉」がくるん、と隠れる。
「あの、何か?」
「あ、いえ。何でも」
「はぁ……?
その「毛玉」の持ち主は首を傾げたが、晴奈が何も言わないので、けげんな顔をしたまま通り過ぎる。
その場に残った晴奈は口を抑え、顔を赤くして――ここ最近の彼女らしからぬ口調で――ぽつりとつぶやいた。
「か、可愛い……」
その数分後、晴奈は恐る恐るといった仕草で、柊の部屋を訪ねていた。
「師匠、変なことと思われるかも知れませんが、一つ、伺いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
尋ねた晴奈に、自室で読書をしていた柊は苦笑して返す。
「どうしたの、晴奈? そんなカチコチになって」
尋ね返され、晴奈はためらい気味に打ち明ける。
「あの、恥ずかしながら、私はあまり世俗に詳しくないので、こんな質問をしては笑われるかも知れず、恐縮なのですが」
「ん?」
「何と言いますか、世の中には、その……」
「世の中には?」
「兎獣人と言えば良いのでしょうか、兎耳に尻尾、の方もいるのでしょうか?」
「ええ、いるわよ。央南ではあまり、見かけない人たちだけれど」
それを聞いて晴奈は小さく、コク、とうなずいた。
「やはり、いるのですか。……見間違えではなかったのだな」
「いきなりどうしたの?」
一人で納得している晴奈に、柊は不思議そうに首を傾げている。
「あ、そのですね。実は先ほど、その『兎』らしき方を見かけまして」
「へぇ、珍しいわね」
柊は本を閉じ、興味深そうな目を向ける。
「外国の人ね、きっと。西方かしら」
「西方ですか。師匠は行ったことが?」
柊は小さくうなずき、懐かしそうな口ぶりで話した。
「前に行ったのは、5、6年ほど前かしらね。旅の間はここでは見られない人種も、数多く見かけたわ」
「世界には、そんなに色んな人種がいるのですね。はぁー……」
柊の話を聞きながら、晴奈は先ほど見かけた「兎」の姿を思い返していた。
(可愛かったな、あの人……)
まるでぬいぐるみのような毛並みの「兎」――晴奈は央南の外の世界に、強い興味を抱いた。
「し、師匠」
「ん?」
晴奈はまた、恐る恐る尋ねる。
「もし良ければ、その……、外国のお話など、その、もう少し、お聞かせいただけますか?」
それを聞いて、柊はクスっと笑いながら晴奈の頭を撫でた。
「ええ、いいわよ。外国の、可愛い人たちの話もね」
「はは……」
柊に内心を見透かされ、晴奈は顔を赤らめた。
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ふわふわ毛玉。
1.
目の前をふわりと通りかかった「毛玉」を見て、晴奈は驚いた声を上げた。
「えっ」
「はい?」
と、「毛玉」がくるん、と隠れる。
「あの、何か?」
「あ、いえ。何でも」
「はぁ……?
その「毛玉」の持ち主は首を傾げたが、晴奈が何も言わないので、けげんな顔をしたまま通り過ぎる。
その場に残った晴奈は口を抑え、顔を赤くして――ここ最近の彼女らしからぬ口調で――ぽつりとつぶやいた。
「か、可愛い……」
その数分後、晴奈は恐る恐るといった仕草で、柊の部屋を訪ねていた。
「師匠、変なことと思われるかも知れませんが、一つ、伺いたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
尋ねた晴奈に、自室で読書をしていた柊は苦笑して返す。
「どうしたの、晴奈? そんなカチコチになって」
尋ね返され、晴奈はためらい気味に打ち明ける。
「あの、恥ずかしながら、私はあまり世俗に詳しくないので、こんな質問をしては笑われるかも知れず、恐縮なのですが」
「ん?」
「何と言いますか、世の中には、その……」
「世の中には?」
「兎獣人と言えば良いのでしょうか、兎耳に尻尾、の方もいるのでしょうか?」
「ええ、いるわよ。央南ではあまり、見かけない人たちだけれど」
それを聞いて晴奈は小さく、コク、とうなずいた。
「やはり、いるのですか。……見間違えではなかったのだな」
「いきなりどうしたの?」
一人で納得している晴奈に、柊は不思議そうに首を傾げている。
「あ、そのですね。実は先ほど、その『兎』らしき方を見かけまして」
「へぇ、珍しいわね」
柊は本を閉じ、興味深そうな目を向ける。
「外国の人ね、きっと。西方かしら」
「西方ですか。師匠は行ったことが?」
柊は小さくうなずき、懐かしそうな口ぶりで話した。
「前に行ったのは、5、6年ほど前かしらね。旅の間はここでは見られない人種も、数多く見かけたわ」
「世界には、そんなに色んな人種がいるのですね。はぁー……」
柊の話を聞きながら、晴奈は先ほど見かけた「兎」の姿を思い返していた。
(可愛かったな、あの人……)
まるでぬいぐるみのような毛並みの「兎」――晴奈は央南の外の世界に、強い興味を抱いた。
「し、師匠」
「ん?」
晴奈はまた、恐る恐る尋ねる。
「もし良ければ、その……、外国のお話など、その、もう少し、お聞かせいただけますか?」
それを聞いて、柊はクスっと笑いながら晴奈の頭を撫でた。
「ええ、いいわよ。外国の、可愛い人たちの話もね」
「はは……」
柊に内心を見透かされ、晴奈は顔を赤らめた。



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今日の旅岡さん

うさみみ♪
ベースは人間で動物の特徴があるって感じの
兎って耳が人間より良いって聞いたがこの小説でもそうなんですか?
相互リンクの件よろしくお願いします
こちらのリンク設置完了しましたのでご確認の程よろしくお願いします