黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第10部

    白猫夢・乱南抄 3

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    麒麟を巡る話、第507話。
    プロパガンダ。

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    3.
     車が順調に走り出したところで、春は恐る恐る、葵に話しかけた。
    「葵さん、……えっと、お久しぶりです」
    「うん」
    「最後に会ったのが天狐ゼミですから、12年ぶりですよね」
    「そうだね」
    「今まで、どこで何を?」
    「いろいろ」
    「今、お仕事は?」
    「一応あるよ」
    「何をされてるんでしょう?
     諜報員の方たちをあっさりと倒して、あれほど政治や経済に詳しくて、しかも車の運転までされるなんて。とても一人の人間がやっていることとは、わたしにはすぐには信じられないです。
     葵さんが一体どんなお仕事に就かれているのか、わたしにはまったく想像できません」
    「一言では説明できないよ。しなきゃ駄目?」
    「時間はたっぷり有りますよ。ずっと黙ったままと言うのも、あまりいい気分では無いでしょうし」
    「……ハルは相変わらずだね。優しくておっとりしてるように見えて、でも実は芯が強くて折れない性格。12年前と変わらないみたいだね」
    「ええ。三つ子の魂なんとやら、と言いますから」
    「……」
     しばらく沈黙が続いた後、葵が観念したように話し出した。
    「白猫党ってところにいるよ。シエナと一緒に仕事してる」
    「シエナ……、と言うと、ゼミにいたシエナさん?」
    「うん」
    「ずっと一緒に?」
    「うん。結党からずっと一緒だよ」
    「そうですか。
     ……葵さんがいなくなった時は、本当に驚きました。いなくなった直後、誰が天狐ゼミを訪れたと思います?」
    「さあ?」
    「神話やお伽話に出てくるような方です」
    「誰?」
    「克大火さん。天狐ちゃんのお父様です」
    「そう」
    「その大火さんが、あなたのことを『実力を偽り、ゼミの皆を騙すために編入した』と仰っていました。
     それは、本当のことなんですか?」
    「……」
     答えない葵に、春は畳み掛ける。
    「それに白猫党と言う組織も、わたしはあまり良い評判を聞いていません。
     過去に存在したと言う『中央政府』のように、世界中で侵略行為を繰り返し、『世界平定』を企んでいる悪の組織、……と言うような話を何度も聞いています。それも、本当のことなんですか?」
     この質問については、葵はすぐに応じた。
    「どこから聞いたの?」
    「新聞です。それに央南連合の広報でも何度か。『白猫党を名乗る輩に応じないよう』と注意されています」
    「あんなことされて、連合が吹聴してる話をまだ信じてるの?」
    「……!」
     そう返され、春は言葉に詰まる。
    「それに新聞って言ってたけど、もしかして橘喜新聞?」
    「え、ええ」
    「橘喜の社長はアスカ・タチバナって人だけど、央南連合の主席でもあるって知ってた?」
    「え?」
    「央南連合は自分たちの利益を死守するために、色んなうわさを流してるんだよ。王国を悪者に仕立て上げてることとかも、その一部。
     橘喜新聞社は、その道具なんだよ。こんなこと言ったらショックを受けると思うけど、ハルも央南連合領に住んでる皆も、騙されてるんだよ」
    「……」
     葵の言うことが簡単に信じられず、春の頭に言葉が浮かんでこない。
    「それが、本当のことだとして」
     それでもどうにか頭を動かし、春は尋ねる。
    「何故、連合はそんなことを? 葵さんは『自分たちの利益を守るため』と言っていましたが、それが本当であれば、どこかから攻撃を受けていると言うことになります。
     それが即ち、白猫党なのでは?」
    「半分は正解。でも半分違うよ」
    「半分?」
     葵は運転席にかけられた時計をチラ、と見て、話を続ける。
    「まだ時間ありそうだし、きっちり話せるかな。
     そもそもは、央南連合が加盟してた西大海洋同盟って言うところで、仲違いがあったことが原因なんだ。
     元々は日上戦争って言う大きな戦争があった時に、北方と央中、央南の3地域が連携して同盟を結成したんだけど、その戦争が終わって10年、20年経って、その存在意義があやふやになり始めたんだ。だってとっくの昔に戦争が終わって、結成する理由になってた相手国が今はもう、散り散りに分裂しちゃってるんだもの。
     で、存続させるか否かって話が央中の加盟諸国から出たんだけど、無くなったら無くなったで、困る人たちも結構いたみたい。そのほとんどが北方の人たち。北方は元々、他の国や大陸から地理的にも政治的にも離れてたし、北方の中だけで話をしてたんだけど、同盟ができてからは、その力を後ろ盾にした政治派閥ができてたんだ。
     そう言う人たちは同盟の解消を望まず、無理無理存続させようとしてた。そしてその20年、あんまり関わってこなかった央南も、ある事件以降から同盟と密に連携し始めた。その事件が何か、分かる?」
    「焔紅王国独立、ですか?」
    「そう。その独立の裏で、連合は王国にある取引を持ちかけてた。
     央南で持て余してた犯罪者を引き渡したり、産業の近代化に伴って出てきた、燃やしたり埋めたりして処理できないゴミ、いわゆる産業廃棄物を王国の地中深くに投棄させる見返りに、多額のお金を出すって言うような、そんな裏の取引」
    「そんなことを、連合が……」
    「連合だけじゃ無くなった。これが金儲けになるって分かって、連合は同盟を通じて、北方からもその『負の資源』を引き受け始めた。
     さっき言ってた北方の、同盟をバックに付けてた政治家たちも、連携がより密になる、パイプが太くなるって思って、取引を喜んで継続させてきた。
     それが王国の革命まで続いてた、裏の話」
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