「双月千年世界 3;白猫夢」
白猫夢 第10部
白猫夢・既朔抄 2
麒麟を巡る話、第512話。
未人間。
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2.
一聖の言った通り、パラに膝枕をしてもらってから20分もすると、葛の顔色は元通りになった。
「あ、もうそろそろ大丈夫だと思うんでー」
「いいえ」
が、葛が起き上がろうとしたところで、パラがそれを制止した。
「血糖値はまだ正常値に戻っておりません。もうしばらくお休み下さい」
「あ、……そう」
堅い言葉に面食らいつつも、葛はそれに応じる。
「えーと、パラさん、だっけ」
「はい。パラと申しております」
「フィオさんと恋人だって聞いてたけどー、その話ホント?」
「えっ、……あ、ええ、はい、その認識で、問題ありません」
フィオとの関係を尋ねた途端、パラの挙動がかくかくと乱れる。
「……うふふっ」
その慌てぶりを見て、葛が笑う。
「何かおかしい点がございましたか」
「パラさんが面白かった」
「わたくしは取り立てて、何もいたしておりませんが」
「今の反応が、よ。
ね、パラさん。もうタイカさん見つけたんだから、フィオさんと結婚できるんだよね?」
「いいえ。わたくしとフィオが人間にならなければ、それは不可能です」
「あ、そーそー、そーだったね。まあ、結果的にはできるよね?」
「カズセちゃんからの依頼を遂行しておりますので、契約は履行されると見て間違い無いものと思われます」
「人間になって、フィオさんと結婚してさー」
葛は唇を尖らせ、こう尋ねた。
「きっといつか、子供ができるよね? そしたらさ、その子供にも、今みたいなしゃべり方で接する気?」
「恐らく、現状のままであることが予測されます」
「僕も同意見」
二人のやり取りを見ていたフィオが、肩をすくめる。
「彼女のお母さんだって『長生きすればするほど、生き方を変えるのは難しいもんよ』って言ってたし」
「なーんかソレ、違う気がするんだよねー」
葛は横になったままで、フィオをにらむ。
「『長生きしてるから生き方変えられない』なんて、ただの言い訳だと思うよー。変わろうと思ったら、変われるはずだって。
そうじゃなきゃ、パラさんは『インパラ』のままのはずでしょ? でもルナさんのコトを素敵だーって思って、フィオさんのコトが好きだーって思って、ソレでパラさんは今のパラさんになったんでしょ?」
「……」
葛の言葉に、表情の乏しかったパラの顔が、きょとんとしたものになる。
「確かにわたくしの認識より、カズラの主張に正当性があると考えられます」
「違うって」
葛は再度口を尖らせる。
しばらく間を置いて、パラは葛に微笑みかけつつ、こう言い直した。
「……カズラの言うことが、素敵だと思います」
「よーし」
葛はにこっと笑い、起き上がる。
「そろそろ帰ろっか。もう大丈夫でしょ?」
「はい。正常値に戻っています」
「じゃ、帰ろ帰ろっ」
「準備いたします。少々お待ちください」
立ち上がり、呪文を唱え始めたパラを眺めながら、フィオはぼそっとつぶやいていた。
「今のパラの方がよっぽど可愛いと思うんだけどなぁ。正直、ルナさんみたいになったら怖いし」
「アンタも変な人だよねー」
と、背後から葛に小突かれる。
「おわっ」
「確かにあんな感じのパラさんも可愛いと思うけどさー、はっきり言って趣味が変だよー。ワンピースだけじゃなくてさ、他にも色々贈ったげればいいのに」
「……どこまで聞いてるんだよ、僕たちの話」
「全部聞いたと思うよー。カズセちゃんから3巡は聞いた」
「マジで?」
「修行しかしてなかったワケじゃないし」
そう聞くなり、フィオは顔をしかめた。
「やれやれ、大変なのがもう一人増えたってわけか」
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未人間。
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一聖の言った通り、パラに膝枕をしてもらってから20分もすると、葛の顔色は元通りになった。
「あ、もうそろそろ大丈夫だと思うんでー」
「いいえ」
が、葛が起き上がろうとしたところで、パラがそれを制止した。
「血糖値はまだ正常値に戻っておりません。もうしばらくお休み下さい」
「あ、……そう」
堅い言葉に面食らいつつも、葛はそれに応じる。
「えーと、パラさん、だっけ」
「はい。パラと申しております」
「フィオさんと恋人だって聞いてたけどー、その話ホント?」
「えっ、……あ、ええ、はい、その認識で、問題ありません」
フィオとの関係を尋ねた途端、パラの挙動がかくかくと乱れる。
「……うふふっ」
その慌てぶりを見て、葛が笑う。
「何かおかしい点がございましたか」
「パラさんが面白かった」
「わたくしは取り立てて、何もいたしておりませんが」
「今の反応が、よ。
ね、パラさん。もうタイカさん見つけたんだから、フィオさんと結婚できるんだよね?」
「いいえ。わたくしとフィオが人間にならなければ、それは不可能です」
「あ、そーそー、そーだったね。まあ、結果的にはできるよね?」
「カズセちゃんからの依頼を遂行しておりますので、契約は履行されると見て間違い無いものと思われます」
「人間になって、フィオさんと結婚してさー」
葛は唇を尖らせ、こう尋ねた。
「きっといつか、子供ができるよね? そしたらさ、その子供にも、今みたいなしゃべり方で接する気?」
「恐らく、現状のままであることが予測されます」
「僕も同意見」
二人のやり取りを見ていたフィオが、肩をすくめる。
「彼女のお母さんだって『長生きすればするほど、生き方を変えるのは難しいもんよ』って言ってたし」
「なーんかソレ、違う気がするんだよねー」
葛は横になったままで、フィオをにらむ。
「『長生きしてるから生き方変えられない』なんて、ただの言い訳だと思うよー。変わろうと思ったら、変われるはずだって。
そうじゃなきゃ、パラさんは『インパラ』のままのはずでしょ? でもルナさんのコトを素敵だーって思って、フィオさんのコトが好きだーって思って、ソレでパラさんは今のパラさんになったんでしょ?」
「……」
葛の言葉に、表情の乏しかったパラの顔が、きょとんとしたものになる。
「確かにわたくしの認識より、カズラの主張に正当性があると考えられます」
「違うって」
葛は再度口を尖らせる。
しばらく間を置いて、パラは葛に微笑みかけつつ、こう言い直した。
「……カズラの言うことが、素敵だと思います」
「よーし」
葛はにこっと笑い、起き上がる。
「そろそろ帰ろっか。もう大丈夫でしょ?」
「はい。正常値に戻っています」
「じゃ、帰ろ帰ろっ」
「準備いたします。少々お待ちください」
立ち上がり、呪文を唱え始めたパラを眺めながら、フィオはぼそっとつぶやいていた。
「今のパラの方がよっぽど可愛いと思うんだけどなぁ。正直、ルナさんみたいになったら怖いし」
「アンタも変な人だよねー」
と、背後から葛に小突かれる。
「おわっ」
「確かにあんな感じのパラさんも可愛いと思うけどさー、はっきり言って趣味が変だよー。ワンピースだけじゃなくてさ、他にも色々贈ったげればいいのに」
「……どこまで聞いてるんだよ、僕たちの話」
「全部聞いたと思うよー。カズセちゃんから3巡は聞いた」
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