黄輪雑貨本店 新館


    「白猫夢」
    白猫夢 第10部

    白猫夢・紅丹抄 2

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    麒麟を巡る話、第521話。
    強襲。

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    2.
    《きっ、緊急連絡! 緊急連絡!》
     焦りと恐怖の入り混じったその声に、幹部陣は一様にぎょっとした顔を並べる。
    「だ、誰だ?」
    「この声は一体……?」
    「あなたは?」
     マイクを取り、尋ねたシエナに、相手はガタガタと震えた声で応答する。
    《白猫軍海軍局第3師団付属第16大隊指揮官、ボリス・ガルベス中佐であります! 至急、応援を要請します!》
    「応援?」
     もう一度尋ねたところで、ロンダからの応答が入る。
    《何があった、ガルベス中佐? 貴官らはダイゲツの制圧に向かわせていたと記憶しているが……?》
    《その通りであります! しかし制圧したと思われた直後、突如として謎の集団が……》
     そのうちに、中佐の背後から爆発音が立て続けに響く。
    《うっ……》
    《どうした!? 大丈夫か!?》
    《も、問題ありません。破片が飛んできましたが、何とか直撃は免れました》
    《もう少し詳しく状況を説明して欲しい》
    《了解であります!
     30分ほど前、ダイゲツの制圧作戦を完了し、我が軍は港へと移動し、友軍支援の準備に取り掛かっておりました。
     ところが突如、市街地で多数の敵性勢力が出現、市街地に駐留していた我が軍を攻撃し、市街地にいた我が軍勢力は壊滅しました!》
    「壊滅!?」
     マイクを握りしめ、シエナが叫ぶ。
    「どう言うコトよ!?」
    《壊滅したのです! 我が軍の武装では、まるで太刀打ちできなかったとの報告を受けております。
     現在、残存する我が軍勢力を港方面に集結させ、抗戦を続けておりますが、次第に圧されつつあります!》
    「な……、何故だ!?」
     たまらずと言う顔で、イビーザが声を上げる。
    「我々の装備は最新鋭、かつ大規模に用意している! それが何故、そうも簡単に蹴散らされると言うのだ!?」
     この間にもマイクのスイッチは入りっぱなしになっていたため、中佐の応答が返って来る。
    《こんな……、こんな報告は『彼女』を目にした私自身ですら、到底信じられないのですが……。
     確かに敵兵力のほとんどは、我々の装備や人員と比較するに、まったく相手にならない程度のものでした。
     しかし、……たった1名、恐るべき突破力と速度を以って、我が軍の防衛線をことごとく破る者がいるのです!》
    「い、……1名?」
    《たった1人に、敗れたと言うのか!?》
    《まるで悪夢です……! こんなことがあっていいのか……、うぐっ!?》
     突然、びちゃびちゃと言う水音と共に、中佐の声が途切れる。
    《中佐! どうした、応答しろ!》
    《……ガ……ガガ……あら?》
     ノイズ混じりに聞こえてきたのは、中佐とは似ても似つかぬ女性の声だった。
    《ちょっと……ガッ……濡れたくら……ガピ……れるなんて……ガー……白猫党とやらの……ガ……も、大した……ガガー……ございませんのね》
    「誰!?」
     語気荒く尋ねたシエナに、声は嘲るような口調で答える。
    《……るほどの者では……ガッ……いませんけれど……ガ……たくし、辰沙(しんさ)と呼ばれておりますわ。
     大月はあたくしたちが奪還させ……ザー……だきました。あなた方のような……ザザー……に、これ以上、好き勝手……ザー……る……ザザー……には……ザー……》
     どうやら通信機が完全に壊れてしまったらしく、これ以降はザーザーと言うノイズしか聞こえなくなった。
    《……総裁》
     と、ロンダの声が返って来る。
    《早急に部隊を編成し、ダイゲツ再奪還を行いたいと思うのですが、よろしいでしょうか》
     ロンダの声には、少なからず怒りが混じっている。
     シエナも怒りに任せ、こう答えた。
    「勿論よ。このクソ女を叩きのめして来なさいッ!」
    《了解いたしました》
     ロンダが答えると共に、シエナはマイクを振り上げ、机に叩きつけようとした。
     だが、シエナが手を離したその瞬間に、葵がマイクをつかむ。
    「ミゲルさん」
    《は、はい? アオイ嬢でございますか?》
    「うん。部隊の編成だけど、もう少し待って。多分、白猫軍の人たちじゃ手に負えない。
     あたしが行く」
    《な、なんですと!?》
    「何言ってんのよ、アオイ!?」
     驚く幹部陣らに構わず、葵はその場から姿を消した。
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